賢者の書
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ファウストが再び意識を失って、今度は静かに眠りについた。
一段落したところで、一つの影が動いた。
「オズよ」
「どこへ行くのじゃ」
無言で、部屋を出て行こうとするオズを双子が呼び止めた。
「私の務めは果たした」
「待ってくれ。来年の<大いなる厄災>との戦いに向けて俺たちで話し合わないか?こんな被害は誰も予想してなかったはずだ。同じ悲劇を繰り返さないために、来年の<大いなる厄災>の襲来に備えたい。あなたの力が必要だ、オズ」
「断る」
カインの提案をオズはすぐに切り捨てた。
「つれないことを言わないでくれ……。俺たちは同じ、中央の魔法使いじゃないか。あなたが馴れ合わないことは知っている。だが、同じ敵に二度と負けないように、互いの力を知って、作戦を立てるべきだろ」
「確かに一理あるかもしれないわね」
カインの言葉にゲルダが賛同する。
それを見てオズは眉を顰めた。
「ゲルダ、お前まで…。群れに意味はない。生き残るものが生き残るだけだ。淘汰されたくなければ、ひとりで生き残る力を身につけろ。お前もよく知ってるだろ」
オズの言葉にゲルダは淡々と答える。
「知っているけれど、大きな力が合わされば更に大きな力になるのと同じようにカインの言っていることも一理あるかもって思っただけよ」
「…………そうだ。力を合わせれば、失わずに済んだ仲間が、何人もいたはずだ」
「幻想だ」
しかし、オズは2人の言葉に耳を貸さない。
「………………」
「宿命は変えられない」
それ以上、カインは何も言わなかった。
そしてオズはコツコツと靴音を響かせて出ていった。
「はぁ…」
オズの相変わらずさにゲルダはため息をついた。
オズが消えた後で、ぽつりと双子が呟いた。
「やれやれ。よう言うわ……。己は力技で宿命を変えておいての」
「え?」
スノウが呟いた言葉をカインがどういうことだと言いたげに聞き返す。
しかし、それ以上、双子はその話をしようとしなかった。
「いいや、こちらの話じゃ。我もゲルダと同じでカインの言うことは一理あると思うぞ」
「我もじゃ。さすが中央の国で、騎士団をまとめていただけのことはあるの」
「どうも。しかし、オズを説得できないことにはな。俺たちを束ねるのは彼が最もふさわしいだろう」
「…………俺は反対だ」
カインの言葉にブラッドリーは苦い顔をして反論した。
「どうして」
「どうして?誰がオズの命令に逆らえる?あいつに歯向かえば、一瞬で、潰れたトマトみたいにされちまうんだぜ?」
「だから、向いてるんだ。おまえみたいな囚人や、ミスラやオーエンも、オズには従うだろう」
「ミスラ……。オーエン……。……あの二人、怖いからな……」
ヒースクリフは2人のことを思い出したのか顔が少し引き攣っていた。
「彼らを従えることが出来るのは、魔力の強さから言っても、オズくらいでしょう」
「そうね」
シャイロックの言葉にゲルダは静かに同意した。
「おまえらはどうなんだよ。じじいども」
ブラッドリーに話を振られたスノウとホワイトは穏やかな顔で笑う。
「ほっほっほ。我ら隠居の身じゃからのう」
「年寄りは荒事からは引退じゃて」
「都合のいい時だけじじいぶりやがって……」
そんな話をしていると部屋にパチン!と音が響く。
驚いてゲルダが音をした方を見れば晶が自分の頬を叩いていた。
その頬はほんのり赤く腫れている。
「いて……っ」
「賢者様!?」
「なんで、てめえでてめえの面をはたいた!?」
「……やっぱり、夢じゃない……」
晶はしっかりと感じる痛みに手を見つめた。
「前の賢者は頬をつねっておったのう」
「前の賢者……?」
自分以外の賢者の話を聞いたのははじめてで晶の頭の中には疑問が浮かんだ。
「そうじゃ。そなたが来る前におった賢者じゃ」
「いいものを見せてやろう」
「我らについてくるといい」
そして双子は晶に手を差し出す。
しかし、晶はその手を取らず、不安そうに見つめた。
「……でも……」
「怯えずとも良い。そら、そなたの手を握ってやろう」
「心細いじゃろうからのう」
「あ……。ありがとうございます……」
そして、晶は双子に手を引かれてファウストの部屋から連れ出された。