賢者の書
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「先生……!嫌だ、死なないで!」
ヒースクリフはファウストの様子に必死に呼びかけた。
「いかん!息をしとらんぞ!」
「賢者よ、急ぐのじゃ!」
「賢者よ。手を」
するとオズは手を晶に向けて差し出す。
「…私の名前はオズ。中央の魔法使いだ。おまえの力を借りる」
「…………」
晶は少し戸惑いを見せたもののオズの手に自身の手をゆっくりと重ねた。
その瞬間小さな風が吹き抜けた。
「わっ……!」
驚きに自然と晶の声が漏れる。
神秘的な風はどんどん激しくなって彼らたちの髪を、服をたなびかせ渦を巻く。
ゲルダは風の勢いに目を細めながらもその様子を静かに見守っていた。
重なる手のひらを中心に、オズの体に、白い光が浮かび上がった。
「《ヴォクスノク》」
「…………!」
オズが呪文を唱えた瞬間、淡い光が強く輝き、ファウストの体に吸い込まれていく。
すると散っていた火花も、煙も消え、彼を苦しめていた傷はみるみるうちに癒えていった。
「成功じゃ!」
「成功じゃの!」
怪我が癒えていく様子にスノウとホワイトは嬉しそうに声をあげる。
「先生の体から、煙が消えていく!」
「名前を呼びかけろ!ファウスト、ファウスト……!」
カインの言葉を皮切りに次々にファウストに呼びかける。
「ファウスト、しっかり」
「ファウスト、起きて。皆待ってるよ」
「起きて、ファウスト!まだ寝る時間じゃないよ!」
「目を覚ませ!東の呪い屋!」
「…………」
「…………。……っ、うぅ……」
皆の声に応えたように見開いたまま、動かなかったファウストの瞼が、ぎゅっと閉じられる。
時間が巻き戻ったかのように、彼は苦痛に身じろいだ。
「……っ、ひどい……。せっかく、死ねたところを……」
ファウストの様子を見て晶はほっと息をついた。
それと同時に部屋から歓声が上がった。
「意識が戻った!良かったな……!」
「おめでとう!」
「やれやれ、一安心ですね」
「良かった…」
「はは。しぶとい野郎だ」
「先生……っ、良かった……。……っ、うぅ……」
「ああ、危ないところじゃった」
「良かったのう。ひやひやしたのう」
「…………」
慣れない感覚に疲れたのか脱力している晶の前にスノウとホワイトがやってくる。
「ご苦労じゃった。賢者よ」
「ファウストが助かったのもそなたのおかげじゃ」
双子の言葉に晶は力なく首を振った。
「私は何も……。立っていただけです。だけど、助かったようで良かった」
「そんなことはありません」
晶の言葉にヒースクリフが晶の方を振り返る。
その目はまだ微かに涙を滲みながらも真っ直ぐに晶を見つめていた。
「賢者様は……。中央の国の大臣ではなく、俺たちの言葉をちゃんと聞いてくれました。……ここに来てくれた。だから、ファウスト先生は助かったんです。ありがとう……。心から感謝します」
そうしてヒースクリフは控えめに微笑んだ。
ぎこちない、けれど暖かい微笑み。
そんな彼を見て晶はほっと、息をついて笑った。