賢者の書
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「到着!」
数分の飛行後、ゲルダたちは無事に魔法舎に到着した。
ムルはサッと箒を降りるが晶は額を抑えてフラフラと箒から降りた。
「……うぅっ……」
「あれ?賢者様?」
「おや。賢者様。大丈夫ですか?」
そんな様子を見たシャイロックは心配そうに晶を見つめる。
「ムルが無茶苦茶に飛ぶから目を回しておられるんじゃなくて?」
「ゲルダ、お手をどうぞ?」
先に降りていたシャイロックはゲルダに恭しく手を差し出す。
「ありがとう」
こんな時でも紳士的な振る舞いは彼らしいとゲルダは思いながら差し出された手に水晶を抱えている手とは反対の手を重ね、シャイロックの手を支えにスッと彼の箒を降りた。
「だ……、大丈夫です……」
晶はそう言ってはいるがゲルダにはそうは見えなかった。
「ゲルダの言う通りだ。ムルが乱暴な飛び方をするから。賢者様、お手をどうぞ。あちらへ!」
「ファウスト先生……!」
「その状態で走るのは辛いと思いますが頑張ってください。賢者様」
カインが晶の手を引きながらゲルダたちは目的の場所であるファウストの部屋を急いで目指す。
晶もカインに手を引かれてなんとかついてこれていた。
「………!」
扉を開けると、ゲルダには晶が息を呑んだ音が聞こえた。
無理もない。
それほどまでに彼の状態は酷い有様だった。
ベッドには蝋のように真っ白な血の気のない顔色の男…ファウストが横たわっている。
巻かれた包帯の下からはしゅうしゅうと、毒々しい煙が上がって、時折、火花が飛び散っている。
<大いなる厄災>から受けた傷だ。
部屋はゲルダが出て行った時とさほど変わっていなかった。
変わっているところといえば彼の周りを他の魔法使いが取り囲んでいることくらいだろう。
可愛らしい子供の姿をした黒髪の双子の魔法使いスノウとホワイト。
黒髪に銀のメッシュの入った盗賊団のボス、ブラッドリー。
そして長い青髪を結った、この世界最強と謳われている大魔法使いオズ。
4人の魔法使いがファウストの周りにいた。
賢者である晶が入ってきたことにより彼らの視線は晶に注がれていた。
「賢者か!」
「賢者がやってきた!」
「こいつが賢者?本当に?」
晶がやってきたことに喜ぶ双子。
それとは対照的にブラッドリーは信じられないと言いたげな視線を晶に向けた。
「…………。……間に合ったか……」
そう言ったオズの言葉にゲルダは安堵の色が少し見えた気がした。
「ファウストの容態は?まだ生きていますか?」
「……生憎な……」
ゲルダの問いにファウストは不本意だとでも言いたげな様子で答える。
「良かった。<大いなる厄災>との戦いで、犠牲になった魔法使いはちょうど10人。11人ではキリが悪いと思っていたところですよ。ファウスト」
「先生!ファウスト先生……!」
ヒースクリフが寝台に駆け寄り、しがみついて、ファウストを覗き込んだ。
するとファウストは薄っすらと瞳を開く。
「……ヒースクリフ……」
「もう大丈夫です!賢者様が来てくださいました!賢者様が助けてくださいます!」
「……おまえに、怪我は……?」
ファウストから出た言葉にヒースクリフは息を呑んだ。
「……っ、……ありません……」
「……そう……」
ヒースクリフのその言葉にファウストがかすかに微笑んだ気がした。
「……良かっ……」
しかし、笑みの形になる前に、ファウストの動きが緩やかにとまる。
ヒースクリフの手を握ろうとした、ファウストの指先が、寝台にぱたりと落ちた。
瞼を開けたまま、ファウストは動かなくなってしまった。