ひとりぼっちでも歩いていける
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「ミチル……」
ルチルはミチルの心からの叫びに悲しそうに呟いた。
「優しくしたっていいじゃないですか。みんなと協力し合えばいいじゃないですか。死ぬわけでもないのに」
「必要ありません。何人来ても蹴散らせばいいでしょう」
ミスラの言葉は力なある北の魔法使いらしい言葉だった。
孤独で強く、気高い、支配されることを嫌い、自分が自分であるために力を振るう北の魔法使いらしい言葉だ。
「だから……!」
「俺は傷つく覚悟をしてます。俺の周りの誰かが、傷つく覚悟も。俺が自由に生きるために、満身創痍になる覚悟をして生きています。」
「…………」
その言葉にミチルは言葉を失った。
南の魔法使いは調和を重んじ、協調性がある。
そんなこと考えもしなかっただろう。
「きみたちが傷つくのが嫌だから、生き方を変えろと言われても、はい、なんて言えませんよ。」
「……大事な人が傷つけられてもですか?」
「いませんし、出来る予定もありません。出来る予定もありません。」
「なら、あなたはかわいそうな人です。」
「…………」
ミチルの言葉にミスラは何か思うところがあるのか黙ってしまった。
「……とにかく、リケ。やめるなんて言わないでください。一緒に頑張りましょうよ!」
「……ミチルの言う通り、みんなと仲良くすることが出来るなら……。賢者の魔法使いの務めが、聖者ファウスト様の行いのような、魔法使いが人に尽くせる、素晴らしい役目なら……」
「素晴らしい役目か。僕はそちらの方がお断りだよ」
「…………」
リケの言葉にファウストは吐き捨てるように言った後、1人ほうきの進路を変えた。
「どこに行くんだ、ファウスト」
「東の国に戻る。<大いなる厄災>が襲撃した時には、魔法舎に戻ってくる。それでいいだろう。僕はもう疲れた。期待されて、歓迎されることにも。失望されて、追い出されることにも」
「ファウスト様……」
彼のことをよく知るレノックスはポツリとファウストの名を呟いた。
「オズよ。なんとか言わんか」
「賢者の魔法使いたちを率いるのは、そなたしか適任はおらん」
スノウとホワイトの言葉にオズは少し沈黙した後、口を開いた。
「おまえたちを力で従えることは出来る。だが、おまえたちの意思をひとつに総括することは出来ない。する必要もないだろう」
「だけど、このままじゃ、俺たちはバラバラになっちまう。バラバラになったっていい。俺だって自由にやる方が性に合う。だが、こんな解散の仕方は胸糞悪いだろ」
カインはオズに訴えかけるように、説得するように共感を求めた。
しかし、そこに割って入ったのはネロだった。
「無理だよ、騎士さん。結局、俺たちは、誰かと一緒にはいられないんだ」
「ネロ……」
「魔法使いはつまはじきものだ。長い間、そうだった。ひとりで生きる方法はいくらでも身につけてる。逆は、学んだことも、学ぶ機会もなかった。だから、誰かと一緒にいても、すぐに限界がきて、だめになっちまう。誰もが身に覚えがあるだろ。かわいそうって言われたって、自分を哀れに思う夜があったって、無理なもんは、無理なんだよ。向いてねえんだ……。この世界と、繋がって生きることに」
皆、思うところがあるのか、ネロの言葉に誰1人として口を開こうとしなかった。
寂しげな沈黙が、魔法使いたちを包み込む。
その言葉を聞いてゲルダが思い出すのは1人の少年の姿だった。
金の髪と翡翠の瞳が綺麗でこちらを見て無邪気に微笑むその少年。
だが、次の瞬間思い出すのは地に伏した彼。
血だらけの彼は微笑んで石になり、温もりは消え失せた。
そして次に思い出すのは様々な人々。
彼女が作った花束を喜ぶ人、花に恐怖して、踏み潰した人。
彼女の言葉に泣いた人、怒った人、一緒に楽しく踊った子供達。
そして、伏せた顔を上げて見上げた先にいたのはシャイロックだった。
後ろからゲルダはじっと彼を見つめる。
その瞳は愛しさと切なさと恐怖が入り混じる複雑な瞳をしていた。
そこのことにはここにいる誰も気が付かなかった。
「……ルチル、大丈夫か?」
下を向いて飛び続けるルチルにレノックスが声をかけた。