月食の館
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「ここが奥の間……。こちらに入ろうとして、クックロビンさんは止められたんですよね?」
「はっ、はい……」
魂の欠片のムルの空間から戻ってきた晶たちは魂の欠片を飲み込んだムルの魔法によって現れたクックロビン案内され、ひとつの扉の前にたどり着いた。
その扉は少し開いており、そこからふわりの爽やかさと甘さを含んだ香りが漂ってくる。
「この香り……。ゲルダの香水の香りですね」
「そうなんですか?」
シャイロックの言葉に晶は首を傾げる。
晶はまだゲルダの香水を嗅いだことがなかった。
だが、ゲルダと長い付き合いのシャイロックは香りの主が分かったようだ。
「そういえば、前に来た時より嫌な気配がだいぶ薄れた気がします……」
「彼女がこの部屋に魔法をかけたのでしょうね」
「あらゆるものが狂乱しているね。きっと強力な術が破綻したんだ。場の秩序が汚染されているけど、ゲルダの魔法が一時的に理を敷いているんだと思う!」
「じゃあ、ゲルダは中にいるってこと?」
ムルの言葉にクロエ扉の先の闇を見つめながら心配そうに言った。
「恐らく自力でここに辿り着いて、既に中を調べていると思いますよ。私たちも中に入りましょうか」
そして、シャイロックは懐から小さな水晶を出した。
「それは?」
「ゲルダとの連絡手段ですよ」
シャイロックはにっこり笑うと水晶が唐突に光り始めた。
「ゲルダ、聞こえますか?この魔法はあとどれくらい持ちそうです?」
シャイロックが水晶に話しかけて少しすると水晶からゲルダの声が返ってきた。
「シャイロック、おかえりなさい。そうね、あと100秒くらいかしら」
「わかりました。では、クックロビンとクロエはここにいて、10秒前になったら秒読みしてください」
「わかった!」
「お気をつけて!」
クロエとクックロビンに見送られながら4人は部屋に足を踏み入れた。
ゲルダが入り口の方を振り返り、4人を待っていれば程なくして4人は暗闇の中から現れた。
「おかえりなさい。一通り調べておいたわ」
「……なんてことを……」
ラスティカは並べられた人骨を見て悲しそうに眉尻を下げた。
「術者は術に精通していないものが行った可能性が高いわ。術を成功させるには完璧な手順、ものでなければならない。それを知らない者がこの術式を構築したようね。茨で贄を繋いでいるのに人骨を使っていたり…。この術式はチグハグすぎるわ」
「かわいそうに……。ここにあるものは、野に晒されていたものじゃない。弔われて、眠っていた人たちのものだ」
「弔われて眠っていた……。もしかして、この骨は、墓地で集められた骨なんじゃ……。だとしたら、墓荒らしの犯人が、ここで……」
ラスティカの言葉に晶は人骨を見つめた後、静かに呟いた。
「墓荒らしなんてものが起きていたんですね…。恐らく賢者様の推測は正しいでしょう…」
「媒介がない」
不意にざっとここを調べ終わったであろうムルが声を上げた。
「私も思っていたのよ。この部屋よく探してみたんだけど見つからなくて……」
「媒介?」
晶は聞きなれない言葉に首を傾げた。
「これだけ強力な魔法陣を作るなら、媒介が必要なんです。星の原石や、神木や、英雄の遺品……」
「媒介になるものは色々ありますが術が大きければ大きい程それなりの媒介が必要です」
「月食の館にあったもので、一番相応しい媒介は……」
「「月の石」」
シャイロックが考え込む間に、ムルとゲルダが揃えて即答した。
「月の石!?月の石なんて使ったら、どのようなことになるか……。なにより、破綻した負のエネルギーを月の石は持ち続けている。早く見つけないと大変なことになる」
ラスティカは険しい顔で言い切った。