ドラモンドからの依頼
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「やっぱり君には干渉できなかったか」
晶たちがムルの魔法に吸い込まれた後、月蝕の館には先ほど現れたもうひとりのムルとゲルダだけがいた。
「賢者様たちを自分の空間に招待して、どうするつもり?」
「別にどうもしないさ。ただ話をするだけ」
「……そう」
ムルの答えを聞くと、ゲルダはムルから視線を外し、館を調べていく。
「久しぶりなのに挨拶もないなんて、冷たいな、ゲルダ」
「そんなこと気にする人だったかしら?あなた」
「いや、ないね」
「でしょうね。それに、私があなたを嫌いなこと、知ってるでしょう?」
「でも、それなりに好意を持ってくれていることも知っているつもりだよ」
「殺されかけたことが何度もあるっていうのに呑気なものね」
「それは君の趣味だろ?死ぬギリギリの苦痛を与えるが殺しはしない。またはその人にとって大切なものを壊す。酷い人だよ。全く…」
「殺される時なんて、一瞬の痛みを感じておしまいよ。なら、死より辛い苦しみを与える方が、より苦しませることができるでしょ?それに、私たちは長い時を生きる魔法使い。憎らしい相手でもいつかは笑って共に話せる日がくるかもしれない。一時の感情に身を任せて、思い出を共有できる相手を殺すのはなんだか惜しい気がするのよ」
ムルはゲルダの昔の言葉を思い出していた。
ゲルダは決して人や魔法使いを決して殺しはしない。
死よりも辛い苦しみや痛みを与えるのがゲルダ流の憂さ晴らし……というか復讐だった。
「それだけのことをしているんだから態度を改めることね。…まあ、でも、あなたと話すのは悪くない時間だったわ。それを惜しむくらいの気持ちは今でもあるわよ。それに、あなたほどの天才を失うのは世界の損失だとも思っているわね。…そういえば、私とお話ししている暇なんてあるの?賢者様がお待ちになっているんじゃなくて?」
「そうだね。じゃあ、俺は賢者様に会ってくるよ。またね、ゲルダ」
「ええ、さようなら。ムル」
別れの挨拶を最後にムルは忽然と姿を消した。
「…あ、クックロビンさんについて聞くの忘れちゃったわ…。…まあ、いいか」
ゲルダはムルが消えた空間を少し眺めてから再び館を調べ始めた。
「……ここは……」
ゲルダは奥へ奥へと進んでいくがクックロビンの姿は見つけられず、代わりに大きな扉の前で立ち止まった。
「……何か強力な術を施した跡…?場の秩序が汚染されている……。流石にここにクックロビンはいないと思うけど……」
(ここ以外の場所はもう調べ終わったし、見ないふりをするのもね……。まあ、ここにクックロビンがいたら発狂しているでしょうけど……)
「《ルクス・ディールクルム!》」
香水をシュッと吹き付けると共にパリンと空気が凄まじい音を立てる。
そして、途端に香りが広がり空間に充満した。
「まあ、これで10分くらいはもつでしょう…。さっさと中を調べて改めてきちんと浄化の魔法をかけるとしましょう」
ゲルダは扉を開き、奥の間に進んでいった。
「……!これは……」
暗闇から浮かび上がったのは円状に並べられた大量の人骨。
そしてその骨と骨とが緑の茨の蔦で結ばれている。
人骨で作られた、巨大な輪の中には、祭壇のようなものがあり、炎が怪しく揺らめいていた。
「なんてことを……。安らかな眠りを妨げられて生贄の代わりにされたのね…」
(茨の蔦で贄を結ぶ方法は生きた供物を融合する際に使う手順…。生きた人間を用意できなかったのは術者の情けか、それとも間違えた術を教わりそのまま実行したのか……。どちらにせよ、あまり術に精通していない者が行ったことは確かね……)
「それにしても……媒介がないわね……」
辺りを見回してもそれらしいものは見当たらなかった。