あなたと友人になれたら
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「ねえねえ、死んじゃうと思ってる?それってドキドキする?ワクワクする?」
「ムル!いい加減にしろ!賢者様に何かあったらどうする!?」
ムルの様子にカインは彼を叱りつける。
しかし、ムルはなんてことないように頭の調子で聞き返した。
「どうする?」
「俺に聞くな!」
「わかったってば!賢者様、俺に捕まって」
ムルの言葉に晶は彼の腕に捕まる。
するとムルは空中で器用に箒を跨ぎ、ぐんっと急上昇した。
そして晶は恐る恐る目を開けてみて、混乱した。
そこには見たこともない森や城が広がっていたからだ。
「……どこ……!?」
晶の驚いた声が響き渡る。
「何か失くした?ポケットの中は見た?」
「に、日本、東京はどこでしょうか!?」
「さあ。どこかで新しいの探せば?行くよー!」
日本も東京も新しいものは用意できないものないのだが、そんなことを知らないムルは晶の言葉を軽く流して箒を勢いよく飛ばした。
「ムル!無茶するな!賢者様をお連れしてるんだぞ!」
そんな騒がしい中、ゲルダは1人、考え込んでいた。
「日本…」
「ゲルダ、どうかしましたか?」
1人動かないゲルダに気がついたシャイロックが彼女に声をかける。
日本という言葉をゲルダはどこかで聞いたことがあった気がしたがしばらく考えてみても思い出せなかった。
「…うんん。なんでもない」
思い出せないなら大したことではないのだろうとゲルダはムルたちの後を追った。
「……!気をつけろ!《花かけらの波》だ!」
少しすると彼らの進行方向にはキラキラと綺麗な花びらの群れがあった。
「夜空一面に、高波みたいな花びらの群れが……。これが世界を修復する時にあらわれる、《花かけらの波》!?これ、避けた方がいいの……!?」
《花かけらの波》をはじめて見るヒースクリフは戸惑ったように聞いてくる。
「突っ込もう!だって、触ってみたいよね、賢者様!」
「触れるんですか!?」
先程カインに気をつけろと言われ、ヒースクリフはこの《花かけらの波》というものは世界を修復する時に現れるものだと言っていた。
そんなものに触れられると聞いて晶は驚いた。
「たぶん大丈夫だと思うけれど…」
「待て待て待て!」
「こら、ムル」
「ゲルダも大丈夫って言っているし大丈夫!ほら!手を伸ばして!」
「……あ……」
ムルの言葉に晶が手を伸ばせばふわりと指に触れた瞬間きらきら砕けて、魔法の粉のように花びらは散っていった。
その光景はとても幻想的でここにいる皆が目を奪われた。
特に身体に害はないようだ。
「…………!」
「……きれい……」
「みなさん、無事ですか?」
「ああ。すごい光景だな……」
「《…ルクス・ディールクルム》」
ゲルダは少し下がり呪文を唱える。
すると彼女の手には少し大きめの水晶が現れる。
キラキラと輝く花かけらの波。
晶にカイン、そしてヒースクリフ、シャイロックにムルの姿。
その水晶にはゲルダの視線に写ったままの光景がまるでその場面を切り取ったかのように綺麗に収められていた。
若干苦しそうに顔を歪めたが、ゲルダは満足そうに顔を綻ばせた後その水晶を大事に抱えた。
「ゲルダ、魔法を使って大丈夫なのですか?」
「っ…、まあ、なんとかね。今日はもう魔法は使えないだろうけれど」
ゲルダの額には少し汗が滲んでいた。
もう魔力の限界が近いのだろう。
「魔力が切れるようでしたら私の後ろに乗せてもいって差し上げましょうか?」
「…じゃあ、お言葉に甘えてもいい?」
「ええ。もちろんです」
シャイロックは微笑んで快く承諾した後、ゲルダの分のスペースを空ける。
そしてゲルダは自身の箒をそこに寄せて器用にシャイロックの箒に移った。
「お礼に今度美味しい紅茶を淹れるわね」
「おや、それは楽しみにしておきますね」
そんな話をシャイロックとゲルダがしているとムルの笑い声が聞こえてくる。
「あはは!ほら、触れて良かっただろ?人生は旅さ!二度と出会えない素敵なものにあふれてる」
そして彼らは笑い声を響かせながら箒に乗って、空を飛びながら魔法舎へと向かっていった。