ドラモンドからの依頼
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翌朝
見慣れない城の一室で目を覚ましたゲルダは髪を手櫛で少し整えるとネグリジェ姿のまま、いつも通りに窓を開ける。
これはゲルダの長年の習慣のようなものだ。
朝起きて彼女1番にやることは窓を開けて、自然を感じることだった。
窓から入ってくる風、大気を漂う香り、眩しい太陽の光や激しい雨、その日の外の気温。
それらを朝1番に感じる。
その行動は自然が大好きな彼女らしい行動だ。
城の窓からは活発な中央の市場や<大いなる厄災>の影響を受け、瓦礫が積もっている場所など様々なものが目に入る。
ふと、その時、城の近くにいた1人の少女がゲルダに気づき、手を振ってくる。
ゲルダは優しく微笑んで手を振りかえすと指を一振りする。
すると少女の頭には色とりどりの花で編まれた花冠が現れた。
少女は急な頭の重みに驚いたように頭を触ると、そこにあったものに途端に笑顔になる。
そして、短く口をパクパクさせた。
気のせいかもしれないが、ありがとう。とゲルダには可愛らしい声が微かに聞こえた気がした。
そして、先程よりも大きく手を振って、少女はゲルダに背を向けて走っていった。
きっと、自慢しに行くのだろう。
「ふふっ」
朝からいいものが見れたと、ゲルダはすぅ…と深呼吸をしてから窓を閉め、身支度を整え始めた。
「あ、ゲルダだ!」
「おはよう。ゲルダ」
「おはよう!ゲルダ」
「おはようございます。ゲルダ」
ゲルダが身支度を整え、廊下に出るとそこには西の魔法使いが勢揃いしていた。
「おはよう。シャイロック、ムル。ラスティカさんにクロエも。みんなで集まってどうかしたのかしら?」
「偶然ですよ。これからみんなで朝食をもらいに行くところなんです」
「ゲルダも一緒に食べよう」
「ええ。もちろん。ご一緒させてもらいます」
クロエからの誘いにゲルダは特に断る理由もないため、応じることにしたのだった。
他愛もない話をしながら揃って朝食を取り終えた帰り道、西の魔法使いたちは廊下で晶とドラモンドが話しているのを発見した。
「賢者様だ。おーい、賢者様!」
「ムル……。西の魔法使いたち……」
ムルが話しかければ晶はドラモンドから魔法使いたちの方に視線を移した。
「おはようございます、賢者様。昨晩は素敵な夜でしたね」
「すっごい楽しかった!俺、友達できたんだー。今度スカーフを作ってあげる予定なんだよ!」
「賢者様と大臣さんは、何をお話になられていたのですか?」
「ドラモンドさんが賢者様に何か頼まれていたように見えましたが……」
シャイロックとゲルダの言葉に晶は少し強張った顔で口を開いた。
「あ、はい……。それが……。月食の館というところで異変があって、クックロビンさんが行方不明になってしまったんです」
「館の中で行方不明とは。随分と広いお屋敷なのでしょうね」
「異変があるって言ってるし、変な魔法がかけられているんじゃない」
晶の言葉にラスティカとクロエは各々考えを口にする。
「あの館は奇妙なものがたくさん置いてありますからね」
「知っているんですか?」
シャイロックの口ぶりに晶は問いかける。
「ムルが気に入っていましたから。勝手に忍び込んで、勝手に見たり、勝手に持ち出したり、勝手に足したりしていました」
「わ、我が国の歴史的財産を!?」
ドラモンドはシャイロックの言葉に驚愕し、目を見開いていたが、シャイロックはそのことに気にした様子も無く微笑んだ。
「文句があるならムルに。ですが、行方不明のクックロビンを探して欲しいというお話じゃないんですか?」
「……そうだ。引き受けてくれるか」
シャイロックの言葉にドラモンドの顔は少し強張った顔になる。
それもそのはずだろう。
ドラモンドは今まで魔法使いに対して高圧的な態度をとってきていた。
困った時だけ、魔法使いに縋ろうとするなんて、自分勝手もいいところである。
それをドラモンド自身、理解しているからこそ、自身の願いを聞いてくれるか不安なのだ。
「いい加減で嘘つきな魔法使いでも、よろしければ」
魔法使いはいい加減で嘘つき。
それはドラモンドが過去に魔法使いたちに言った言葉だ。
そんな魔法使いたちをドラモンドは恐怖し、信用していなかったはずだった。
「…………。構わん。どうか頼む」
しかし、この数日間で魔法使いに対する認識を改めたのか、自分の部下の容態の確認の方が重要なのか、ドラモンドはその言葉に真剣な顔で頷いたのだった。
「わかりました」
シャイロックからの了承の返事を受け、ドラモンドは安心したように息を吐いた。
「お知り合いが行方知らずとは、さぞや心配でしょう。その気持ちはよくわかります。僕も消えた花嫁を探していますから」
「……そうか。あんたの知り合いも、その……。見つかるといいな」
少し辿々しくはあったが、ラスティカからの言葉にドラモンドは励ましの言葉を返す。
これも大きな進歩だろう。
「ありがとう」
「おじさん、優しい人だなあ。俺も手伝うよ!みんなで頑張ろう!」
「うん!じゃあ出発!」
ムルの出発の掛け声に晶は慌てて声をかける。
「あっ……。ま、待ってください!私も一緒に行ってもいいですか?クックロビンさんのことが気になって……」
「いいよ。俺の箒に乗る?」
「え、えっと……」
晶は初めてこの世界に来たあの夜のムルの波瀾万丈な飛行を思い出す。
できれば遠慮したいところだ。
「ふふっ。初めてこの世界にいらっしゃった時、目を回していらっしゃいましたものね」
「あはは……」
「でしたら、私がお連れいたしますよ、賢者様」
「すみません!ありがとうございます!」
こうして、晶はゲルダの箒になることになり、ムルの箒に乗ることの回避に成功したのだった。