崩れた塔と鳥の影
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「ジャムのことじゃないでしょうか?」
「あ、ああ。なるほど。わかりました」
ルチルの言葉にミチルは納得したように頷いた。
「クリームも好き。ぬるぬるしたふわふわのべたべたのやつ。他のもので例えると……」
「た、例えなくていいです。大丈夫です」
オーエンの言葉にミチルは慌てて首を振った。
(相変わらずオーエンは独特の表現するわね…。もっと他の表現はできないのかしら…。まあ、傷に喩えるのは北の魔法使いらしいかも?)
そんなことを思いながらもゲルダは口に出すことはなかった。
それから間も無く、ルチルとミチルはケーキを取りにホールに戻っていった。
「ケーキだって」
オーエンはケーキが来るのを今か今かと待ち侘びている子供のようにそわそわしている。
そんな、オーエンにつられて、ミスラも戦意を喪失していた。
「夜になってもあたたかいですねえ。上着を持ってこなくて良かった」
(この2人……。怖いけど、なんか適当だな……)
晶は感慨深げに、ミスラとオーエンを見やった。
「甘いラム酒をかけて、びしゃびしゃになってるやつも好きだな。あれはなんていうんだろう」
「それはサバランじゃないかしら?ブリオッシュ生地にラム酒を染み込ませたデザート。フルーツや生クリームまたはカスタードクリームを添えるのよ」
「多分それ」
オーエンとゲルダがそんな話をしていると、いつの間にかケーキを片手に戻ってきていたルチルが驚きの声を上げた。
「賢者様、オズ様、あれを……!」
ルチルが指差す方向には翼を生やした人間が空を飛んでいる。
「あれは我が国の魔法科学兵団……」
「…………」
ゲルダはその様子を不機嫌さを隠そうともせず眉を顰めて見ていた。
「賢者の魔法使いに頼もうと思ったが、奇跡ではなく、喜劇しか見せてもらえなかったのでな」
「…………」
ヴィンセントはオズの方をチラリと見てから言葉をつづけた。
「我が魔法科学兵団の力をお見せしよう」
バルコニーのいる人たちの目は魔法科学兵団が飛んでいった中央の塔に向けられていた。
塔までは修復には至らなかったが周辺の門はみるみるうちに綺麗に修復されていく。
「あれが……。……魔法科学兵団の力……。……なんです?科学って……」
「さあ……。私にはさっぱり……」
「…………。なんという不気味さでしょう……」
南の双子が話しているといつの間にこの場に来ていたシャイロックの静かな声に晶は彼を振り返った。
シャイロックは冷めた眼差しで、遥か遠い空の下を眺めている。
彼の隣にいるゲルダも同じだった。