北の魔法使い
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オズに正面から見据えられて、ヴィンセントが、逃げるように目を逸らす。
「……心から歓迎する」
苦々しげなヴィンセントの声に、広間の人々が、ほっと安堵の息をついた。
グラスを掲げて、ムルが笑う。
「それじゃあ、パーティを続けよう!」
わあっと歓声が続いて、広間は再び、明るい活気が戻っていく。
突然消えた明かりも再び煌びやかな輝きが戻っていた。
アーサーが笑顔を広げて、オズのもとまで駆け寄っていく。
「オズ様!ありがとうございました!」
「…………」
オズは黙ってアーサーを見つめると、素っ気なく目をそらした。
「おまえに礼を言われる所似もない」
「……あ……。はい、わかっております。ですが、みな、喜んでくださいました」
「…………。賢者よ」
オズは晶を見やって告げた。
「役目は果たした」
こうして、初めて、魔法舎の魔法使いが全員揃った。
多少の緊張感は残しつつ、パーティは表面的には楽しく続いていた。
「あれー?ゲルダから猫の匂いがする〜!」
「もしかして、カイが来ていたのですか?」
「ええ。少しだけね。もう帰ったけど」
「…《インヴィーベル》」
シャイロックが呪文を唱えればそこに出てきたのはゲルダが持っているものと同じ香水瓶だった。
中には透明な液体がゆらゆらと揺れている。
ゲルダにはその香水に見覚えがあった。
以前、ゲルダ自身が調香し、シャイロックにプレゼントをした彼にぴったりなフローラルノートだ。
シャイロックがそれをゲルダに向かって吹き付けると彼女から微かに漂っていた獣の匂いは甘い香りにかき消される。
「ん、いきなり何するのよ」
「いえ、少し上書きさせてもらいました」
いきなり吹き付けられた香水の冷たさにゲルダは少し目を細めるとシャイロックに問いかける。
それに対して彼は少し香りを嗅いで満足そうに微笑んだ。
「あははっ、シャイロックは独占欲が強いな〜」
「こら、ムル。お黙りになって」
「叱られちゃった。にゃーおん〜」
ムルは反省した様子もなく鳴くと、別のことに興味が向いたのかゲルダたちから離れていった。
ゲルダはというと珍しく、少し戸惑った表情を浮かべていた。
これはゲルダ自身がシャイロックに送ったオリジナルの香水。
彼が纏っているのはいつもは日に日によって違うパイプの香りだが、この香水を彼が纏ってくれた日もあることも知っているゲルダがシャイロックの香りとこの香水を結びつけるのは容易いことだ。
自分から彼の香りがする。
その事実がどうしようもなく、ゲルダの胸の鼓動を速くさせた。
「……カイの匂いが気にいらなかったならこんなことしなくても、自分で消したのに…」
「ふふっ、私のものになった気がしてドキドキしますか?」
「っ…!」
シャイロックの妖艶な笑みと言い当てられた自分の感情に、ゲルダはいつものように彼の言葉を流すことができなかった。
「っ…い、言わせないでちょうだい…」
「ふふっ。久しぶりにそんな顔を見ましたね。頬を赤く染めて、大変可愛らしいですよ」
「っ!もう…、シャイロック!」
「ふふっ、すみません」
いつもの余裕のある彼女ではなく、このような少女のような反応を見せる彼女が見れるのは間違いなく、シャイロックだけだろう。