グランヴェル城でのパーティ
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「あの日、最も負傷したのは彼女です」
「え?そうなんですか?」
「ええ。彼女はあの傷を負っても自分で治せるだけの力がありますから、今も生きているのですよ。あの日の凄惨さを、激しさを、痛みを、魔法科学を手に入れただけのただの人間が耐えられるはずないでしょうからね。死ぬよりも、生きたまま、死に近い痛みや苦しみを味わい続ける方が嫌でしょう?」
シャイロックはそうして微笑んだ。
「そ、そうですね…」
その笑みに若干戸惑いながらも晶は同意した。
「アーサー様がいなかったら、俺も殴りかかっていたな」
「東の魔法使いも、西の魔法使いも、中央の魔法使いもおっかないのう……」
「ほんとうにのう。温厚なのは、我ら北の魔法使いくらい……」
シャイロックとカインの言葉にスノウとホワイトがやれやれと言った雰囲気で言うも、ヒースクリフがそれをまさか、と言いたげに否定する。
「北の魔法使いのどこが温厚ですか。温厚な魔法使いは、南の間違いでしょう。ルチルさんとか……」
ヒースクリフが言ったその瞬間、南の魔法使いのルチルが、ニコラスに詰め寄っていった。
「それはどういう意味ですか!?」
「……」
今まさに温厚な魔法使いの代表として話題に出ていたルチルが声を荒げている様子にヒースクリフは言葉を失った。
「温厚な魔法使いなんていませんでしたね」
「そうだね!東西南北中央好戦的だね!」
シャイロックとムルはその様子を見て楽しそうに、西の魔法使いらしい興味津々の目でことが起きている方を見つめる。
「弟の方は気が強そうだと思っていたが、兄貴の方も相当だな」
「大魔女チレッタの息子じゃからのう」
「チレッタも血の気の多い女じゃった。血は争えんもんじゃ」
スノウとホワイトは今は亡きチレッタを懐かしむように呟いた。
ルチルの登場にニコラスは不快そうに顔を歪める。
「無礼者。名前を言いなさい」
「南の魔法使いのルチルです。あなたがおっしゃった役立たずとは、戦いに倒れた南の魔法使いたちや、生き残ったみなさんのことですか?」
「その通りです。<大いなる厄災>の接近を防げず、今までにない、災禍を招いた。これを役立たずと言わずして、なんというのです?」
「では、<大いなる厄災>と戦いもしなかったあなたは一体なんなのでしょか?あなたこそ、役立たず以下ではないですか?」
ルチルの言葉に、穏やかだったニコラスの表情が一変した。
「無礼な魔法使いめ……。魔法が使えるというだけで、尊大な態度が許されると思うな!」
ルチルに向けて声を荒げるニコラスにアーサーは険しい顔で声をかける。
「待て、ニコラス!先の戦いで南の魔法使いは全滅した。その中には、この者たちの知り合いもいたのだ。このような祝宴の場にふさわしくない発言をしたのはおまえだ。おまえこそ、非礼を詫びるべきだろう!」
「アーサー殿下!古くから王家に仕えた武門の出である私よりも、魔法使いどもの肩を持つというのですか!」
しかし、アーサーの言葉により、古くから仕える自分ではなく、憎き魔法使いの方を肯定されたニコラスは謝罪をするどころか先程よりも激しく、声を荒げた。
「魔法使いの肩を持ってなどいない!私は公正に……」
アーサーが説得を試みようとするとそれを遮るように静かな声が響き渡った。