グランヴェル城でのパーティ
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ゲルダが会場を後にした後、彼女が察知した通り、会場にはヴィンセントとニコラスがやってきていた。
アーサーはヴィンセントに礼儀正しく挨拶をし、その後にニコラスが口を開く。
「魔法科学省所属の特殊部隊。魔法科学兵団団長のニコラスも申します」
「知っている。元騎士団長で、西の国で魔法科学の技術を取得して、数ヶ月前に戻ってきたのだったな」
「お見知りおきいただいて光栄です。我々、魔法科学兵団がいれば、今後、賢者の魔法使いなど不要でしょう」
ニコラスの言葉に魔法使いの何人かが、不愉快そうに顔をしかめる。
「言うじゃないか、あの野郎」
「よせ、シノ」
「ニコラス隊長…。俺に負けて騎士団を辞めたくせに、魔法科学を手にして、調子にのりやがって」
「安酒に酔った者の大言壮語は、よくあることですよ」
晶ははらはらして、アーサーとニコラスを見やった。
「……どういう意味だ、ニコラス」
アーサーは怪訝な顔をしてニコラスに聞き返す。
「アーサー殿下や、騎士カイン、ブランシェットの貴公子を除けば、魔法使いたちはならず者の集まり。<大いなる厄災>から世界を守るために、真っ当に戦ったとは言い切れません」
「ヴィンセント様のおっしゃる通り、後日厳密な調査をした上で、今回の惨状の原因追及は必要でしょう。すなわち、<大いなる厄災>の脅威が上がったのか、賢者の魔法使いの怠慢が責任なのか」
「怠慢などと……。言葉が過ぎるぞ、ニコラス。犠牲になったのは、彼らの仲間だ」
「これは失礼致しました。アーサー殿下。しかし、我々は彼らの仲間がどのように石になったのか知りません。彼らが仲間割れをした可能性もあります」
「馬鹿な……。<大いなる厄災>との戦いの前に、彼らが仲間と殺し合ったとでもいうのか?」
「否定する材料はありません。<大いなる厄災>と賢者の魔法使いの戦いは、秘密に隠されています。先の戦いに参加した魔法使いたちは、英雄と同時に、多くの被害を出した戦犯でもあるのです」
ニコラスの冷たい声が響き渡る。
その様子にシャイロックは腕を組み直しながら、眉をあげて、ぽつりと告げた。
「……。ファウストとゲルダが席を外していて良かったですね」
「そうだね!呪い殺されていたね!ゲルダがいたら、もっと酷かったかも!」
「ゲルダが?」
予想外の人物の名前が出たことに晶は思わず聞き返す。
「ゲルダが今までの話を聞けばいれば間違いなく、あの人に身をもってあの日の体験をさせることでしょう。彼女は記憶に執着し、どんな記憶も鮮明に覚えています。嬉しい記憶、楽しい記憶、苦しい記憶、悲しい記憶、全て等しく、平等に。何百年経っても色褪せることはありません。それを再現させることはゲルダが一番得意なことです。賢者様も彼女の魔法はご覧になったでしょ?」
シャイロックの言葉に晶は食堂でゲルダに見せてもらった魔法を思い出す。
香りも音も景色も何もかもが鮮明で本当に帰ってきたのではないかと錯覚するようなあの空間。
ゲルダの凄さを晶は身をもって体験していた。
五感に働きかけ、完璧に再現された魔法。
彼女の魔法はただの投影ではなく、まさに記憶を経験すると言った方が正しいような気がした。