仕事とワイン
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ゲルダが無事に配達を終え、魔法舎に帰る頃には夜はすっかり更けていた。
「あら?ファウスト。こんなところで晩酌?」
中庭の噴水近くには酒を持ったファウストがおり、ゲルダは声をかけた。
「…ゲルダ。今、帰ってきたのか」
ゲルダの声にファウストは彼女の方を向く。
「ええ。南の端と西の端まで行ってきたから遅くなってしまって…。みんなはもう寝ているかしら?」
「僕に聞くな」
「…それもそうね。明日もあるんだから程々にしておいた方がいいわよ。じゃあ、おやすみ」
そうしてゲルダはファウストの言葉を聞く前に去っていった。
ゲルダが魔法舎の扉を開ければそこは昼間と変わってシーンと静かだ。
ゲルダが部屋に行く階段を登ろうとすると、少し駆け足な足音が聞こえる。
その音にゲルダは階段への足を止めた。
少しすると晶が少し早足で階段を降りて、ゲルダの方にきた。
「ゲルダ、おかえりなさい。ファウストと話している姿が見えたので今こっちにくれば会えるかなと思って…」
「ふふっ、見かけたからと、わざわざ私に会いにきてくださったんですね。可愛らしい方ですね」
「っ…!」
ゲルダの言葉に晶は少し恥ずかしそうに頬を染めた。
「それはさておき。ただいま帰りました。遅くなってしまい申し訳ありません。出迎えもありがとうございます」
「い、いえ。事情はシャイロックから聞いていましたから。それと厄災の傷のことも聞きました。本当に何も感じないのですか?」
先程とは変わった真剣な表情で晶はゲルダに問いかける。
「そうですね。試しに賢者様の手を握ってみてもいいですか?」
「はい」
そうして晶はゲルダに手を差し出した。
「!」
ゲルダが手を重ねると驚いたことにそこからは温もりが伝わってきた。
「……温かい…」
「!感じるんですか?!」
ゲルダの言葉に驚き、晶は声を上げる。
「ええ。賢者様の手の暖かさも形もはっきり分かります。この状態で他のところも触ってみてもいいですか?」
「ええ。構いませんよ」
晶から了承の言葉を得て、ゲルダは手を繋いだまま、すぐ近くにある階段の手すりに触れる。
すると手のひらにはその冷たさと形がはっきりと伝わってきた。
「冷たい…。ちゃんと感じます…」
「これも賢者の不思議の力なのでしょうか?」
「恐らくそうなのではないでしょうか?厄災による傷を負ったのは今回が初めてなので確信的なことは言えませんが…」
そう言葉を濁すとそういえば、とゲルダは話を切り替えた。
「賢者様はもうおやすみに?よろしければ部屋まで送りますよ。私のせいで来させてしまいましたし」
「ありがとうございます。明日はパレードに叙任式がありますからもう寝るつもりです。その…オズは説得できなかったんですけど…」
晶は少し落ち込んだように言った。
晶とゲルダは話しながら2人で階段を登り、廊下を歩く。
「そうでしたか。人群れることが嫌いなオズがそう簡単に承諾はしないでしょうし、賢者様が気に止むことはありません。オズと北の3人はいませんがとりあえず今は目の前にあることを頑張りましょう」
「…そうですね。ありがとうございます。ゲルダ」
そう晶がお礼を述べたところでちょうど晶の部屋に到着する。
「いえ。では、おやすみなさい。賢者様。良い夢を」
「はい。ゲルダも良い夢を」
晶を見届けた後、ゲルダは自分の部屋へと戻ったのだった。