仕事とワイン
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翌日
ゲルダの部屋には朝早くから色々な音が響いていた。
昨夜は無かった大量の花と葉が部屋の作業台の上にいくつも置かれている。
赤にオレンジに黄色に紫に水色に青に緑に白。
見た目はとてもカラフルだ。
ゲルダの髪飾りにもなっている透明な花もそこにはあった。
ゲルダは次々に花を取り、形を崩さないように優しく触れ、合わせ、纏めていく。
花の鮮度を保つためか部屋の空気はひんやりと冷たく、様々な花の甘い香りが部屋の中を包み込んでいた。
別の場所ではシュルッとリボンが切られ、色によっては飾りが作られる。
また別の場所ではロールのビニールシートとラッピング用紙がたわむ音が響き、スパンッとどれも同じ大きさでカットされる。
これだけの作業を並行してできるのは彼女の膨大な魔法力と長年の経験があってのことだろう。
そんな中、コンコンと部屋がノックされる。
ゲルダが作業を止めること無く、指を一振りさせればドアがゆっくりと開いた。
「うわ?!って、え?!」
急に開いたドアにかそのドアの奥に広がっていた光景にか、はたまたそのどちら共か。
ゲルダがドアの方をチラッと見ればそこにいたのは驚いた様子のクロエだった。
「おはようございます、クロエ。ゆっくりもてなせなくてすいません。今、仕事中でして…」
「おはよう、ゲルダ。うんん。気にしないで。…今は花束を作っているの?」
ゲルダはクロエの言葉に甘えることにして作業を続けながら口を開いた。
「そうですよ。各国に空間移動の魔法をかけた依頼用のポストを何個か置いてあるんですが、そこに入っていた依頼です。店を開けている時はキャスケードブーケなどの依頼以外はその場で作ってしまうので」
「……そ、その花はなんていう花?見たことない…」
クロエはそっと近づいてゲルダの手元にある透明な花を見つめる。
「この花は氷花という花です。氷のような花であることからこの名前がつきました。私が北の国で自家栽培をしていて、結婚式のブーケによく使われます」
「結婚式!そんな特別なブーケをゲルダは作ってるんだね!自家栽培もだけどすごいな〜」
ゲルダの説明にクロエは感心したように言った。
「いつの間にか各国に噂が広まってしまっただけですよ。この花は魔法で処理をしないと数日経てば水になるんです。結婚式を終え、ブーケトスをし、花束を受け取った人がこの花を溶かしてその水を飲む。お裾分けされた祝福を体内に取り込むことで受け取るだけよりも早く幸福にあやかれると噂が立ってこうなってしまったんですよ」
「そうだったんだ。じゃあ、結婚式があるたびにゲルダは仕事が来るんだね…。それって大変じゃない?」
「仕事は好きなので全然苦でもありませんし、大変とはあまり感じませんね。それにこの花でなくても普通の花を結婚式のブーケに選ぶ人もいますから毎回ってことはないですしね。そしてクロエ、何か私に用があったのではないんですか?」
ゲルダの質問にクロエは思い出したようにハッとした。
「あ、その…、ラ、ラスティカからゲルダの本職はフラワーデザイナーって聞いたから相談したいことがあって…」
ゲルダに話しかける声は緊張しているのか少しだけ強張っていた。
「なんですか?」
「服につける花飾りとかのことで相談に乗ってもらえないかなって…」
その言葉にゲルダは手を止め、クロエを見て微笑んだ。
「なるほど。私で良ければいつでも力になりますよ。生花でも造花でもなんでもお作りしますし、使う花の相談にものりますよ。その代わりに素晴らしい服を作ってくださいね」
「やった!それはもちろん!できたらゲルダにもプレゼントするね!」
ゲルダの言葉にクロエはさっきの緊張などどこかに飛んで行ったかのように興奮した様子で言った。
「ふふっ。楽しみにしています」
「クロエ?クロエはいる?」
廊下の方からラスティカの声が小さく響いている。
その声にクロエは笑った。
「ふふっ、ラスティカが呼んでる。俺、行ってくるね。お仕事頑張ってゲルダ」
「ありがとうございます、クロエ。また後で」
そうしてクロエはパタパタと出て行った。
そんなクロエを優しい眼差しで見送ってからゲルダはパタンとドアを閉め、手元にあるブーケを見つめる。
氷花をメインに作られたクラッチブーケ。
既にそれはまとめ終わり形は綺麗に整っていた。
茎の長さを揃え、下の部分を少し残して持ち手にフローラルテープを巻いた後、同時進行でカットしていたリボンをその上からしっかりと綺麗に巻き、更にリボンの飾りつける。
そして給水処理としてと茎に水を纏わせると満足そうにゲルダは微笑んだ。