賢者の魔法使い
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「《パルノクタン・ニクスジオ》」
アーサーが呪文を唱えると魔法舎から続く、暗い夜の道に、ポツポツと優しい光が灯っていく。
アーサーを見上げながら、クックロビンが静かに呟いた。
「お優しい方だ……。子供の頃に、母であるお妃様に、北の山に捨てられたというのに……」
「え……?」
クックロビンの言葉を聞いた晶は母に捨てられたという穏やかでない言葉に思わず聞き返していた。
声に出してしまったのは無意識だったのかクックロビンはしまった、という風に、慌てて目をそらす。
それ以上、晶が尋ねる前に、アーサーが地上に舞い降りてきた。
「ほら、これでもう大丈夫だ」
「ありがとうございます、アーサー殿下」
「気をつけて帰れ」
「はい」
するとクックロビンは去り際に、ぎこちなく、晶にぺこりと頭を下げた。
「先ほどはすみませんでした、賢者様。魔法使いさんたちにも、その……。すみませんでしたと伝えてください。それでは……」
クックロビンは晶にだけに言っているつもりなのだろうがその言葉はゲルダの耳にもしっかり届いていた。
兵隊たちと一緒に、立ち去るクックロビンを見送って、アーサーは微笑んだ。
「彼のように、魔法使いたちに、理解を示してくれる者もいる……。こんな風に、すこしずつ、変わっていけばいいと、願っています」
「そうですね……」
「賢者様、今夜はまだ、お疲れではありませんか?」
「ええ、大丈夫です」
「それでは、合コンをしませんか?」
アーサーはキラキラした笑顔で晶に尋ねる。
「ご、合コン……?」
アーサーの様子とは反対に晶は彼の言葉を戸惑ったように復唱する。
それもそのはずだろう。
晶の世界での合コンとは男と女が新たな出会いを求めて開くコンパ…飲み会のようなものだ。
しかし、アーサーの認識はそうでは無いようだった。
「ええ。人と魔法使いの交流の前に、魔法使い同士の交流が必要だと思うのです。正式な歓迎の場は、改めて、ご用意いたしますが、その前に、今夜ぜひとも、みなで、合コンをしたいのです」
「あの、お伺いしてもいいですか?」
「はい」
「合コンとはどのような……」
晶はアーサーが合コンをどのように認識しているのか、確認のために問う。
「これは失礼いたしました。前の賢者様から伺っていたので、賢者様もご存知かと」
驚いたように言うとそのまま続けた。
「合コンとは出会いを祝福する宴です。今夜にとてもふさわしいと思いませんか?」
その言葉に晶は苦笑いを浮かべた。
言っていることは間違っていない。
これを訂正するのは難しいと判断した晶は訂正を諦め、そのまま話に乗ることにした。
「……そ、そうですね。そう思います」
「良かった!では、早速、合コンをしましょう。賢者様は合コンはお好きですか?」
「ええと、その、どうでしょう……」
アーサーと晶の認識が若干ずれながら話は進む。
「前の賢者様はお好きだったようです。この世界で合コンをする時は、必ず私を招くと言ってくださいました。人と魔法使いの輪を深めること……。それ自体、人と魔法使いの合コンと言えるかもしれません」
アーサーの真剣な顔に晶は冷や汗をかいた。
そして、訂正しなかったことを酷く後悔した。
「いずれは国を上げて、合コンの日を定めて、民の祝日にすることも考えています」
「こ、国民の祝日は別の名前がいいんじゃないでしょうか?」
男女の出会いのコンパが国民の祝日になるなんてあってはならないと焦った晶はなんとかアーサーに提案をする。
「そうですか?」
アーサーはキョトンとした顔で聞き返してくる。
「は、はい」
「では、ひとまず、目の前の合コンをみなで楽しみましょう」
晶の同意により、合コンが国民の祝日になることは回避された。
そのことに晶はホッと息をついた。