賢者の魔法使い
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「あ、この人がラスティカ。俺はクロエ。きみは?」
「リケです。ラスティカさん。あなたが責任者でないなら、あなたの上の方はどなたですか?」
「僕の上?歳が上?背丈が上?」
「あなたより立場が上の人です」
「それなら、僕の花嫁かな?彼女の命令になら、どんなことでも、従おうと思っているんだ。僕は命をかけて戦う戦士にもなるし、敬虔で忠実な使徒のようにもなる。ねえ、とても素敵だろう」
「わかります。神の使徒たる我々の使命ですね」
「良かった。僕らは気が合いそうだね」
「ふふ……。はい」
話が全く噛み合っていないのにも関わらず微笑み合う彼らを見てクロエは困惑と驚きが混ざったような複雑な表情をしていた。
「全然会話が噛み合ってないのに、よく仲良くなったね。俺にもやり方教えてくれない?」
晶が賑やかな風景を眺めていると、そちらに向かって、誰かが近づいてきた。
それはアーサー王子だった。
「賢者様」
アーサーは晶を見るなり、膝をついて深く頭を下げた。
その様子に周りの兵隊達がどよめく。
「中央の国の王子、アーサーと申します。この度のこと、大変に申し訳ありませんでした。すべて、私の至らなさが招いたことです。どうか、お許しください」
「あ、アーサー様がお膝をつかれているぞ」
「俺たちが立っているわけにもいくまい。お、おい。跪け」
兵隊たちも、アーサーに習い膝をつく。
その様子を見た晶も慌ててしゃがみこんだ。
「そ、そんな……。顔を上げてください」
その様子に今度は魔法使いたちが慌てる番だった。
「!」
「……賢者様が膝をついた。俺たちもしゃがんだ方がいいの?」
「そうだな……。取り敢えず、スノウ様とホワイト様の絵を下向きに伏せておこう」
「うん」
「こら!カインよ!」
「我らを伏せさせるでない!立てかけておくのじゃ!」
カインの言葉に双子が反論する。
そんな会話を聞きながら晶は口を開いた。
「アーサー王子。あなたのお話はよく伺っています。伺っていると言うか……。前の賢者様の、賢者の書に書いてあったんです」
晶の言葉にアーサーは顔を上げる。
晶とアーサーの視線が交差する。
吸い込まれそうなほど、きれいに澄み渡った、真っ直ぐな瞳。
複雑な立場にいるだろうに、ひねくれたり、すれたりしていない純真な人柄が晶には伝わってきた。
「賢者の書に……。前の賢者様の文字が読めるということは、同じ国、日本からいらっしゃったのですね」
「!」
アーサーの言葉にゲルダは日本という単語は前の賢者に教えてもらったことだったことを思い出す。
着物という服に和菓子というお菓子、中央の城とは外観の違う日本の城。
様々なことを教えてもらい、それを全て水晶に記録した挙句、魔力不足で倒れた。
意識が朦朧としていたため、恐らくその日のことが薄れていたのだろうとゲルダは妙に納得した。
そしてゲルダは意識を再び現実に向ける。
「はい、たぶん……。賢者様はアーサーのことを、優しくて、弟みたいだって書いていました」
「……前の賢者様がそのようなことを……」
晶の言葉にアーサーが寂しげに笑う。
「お別れの挨拶が出来なかったことは、残念ですが、とても嬉しく思います。賢者様、あなたにお会い出来たことも」