賢者の魔法使い
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「あいつ、誰ですか……?フィガロ先生に失礼じゃないですか?」
ミチルはシノの背中を睨みつける。
「東の国の森番だよ。東の国の森は、深く広大だからね。案内人がいないと移動できないんだ。シノは腕のいい案内人らしい。将来有望な魔法使いだな」
「へえ、すごいな……。でも、ボクだって道案内は得意です。地図もちゃんと読めますよ」
「そうだね。ミチルも将来有望だ」
「えへへ」
フィガロが褒めればミチルは頬を染めて嬉しそうに笑った。
「よいしょ。お片付け、お手伝いしますよ。こちらの椅子はどこへ運べばいいですか?」
「あ、あそこに運べ」
ルチルに話しかけられた兵士は怯えながらもなんとか言葉を発した。
「わかりました。レノックスさん、こっちですって」
「わかった。ルチル、ポケット」
「ポケット?」
「から、ペンが落ち……」
レノックスの言葉の途中でルチルのポケットからペンが落ちた。
「わっ……。あはは。レノさん、言葉がのんびり」
「はは。すまん」
「……あの、落ちましたよ」
兵士は落ちたペンを拾い、ルチルに恐る恐る差し出した。
「まあ、ご親切に。どうもありがとうございます」
ルチルはお礼を言いながらペンを受け取った。
ルチルの様子に兵士は目を見開いた。
「魔法使いが礼を言ったぞ……」
「ひ、皮肉じゃないのか?もしくは、呪いの言葉とか……」
「あっ!」
するとルチルは何かに気が付いたかのように声をあげる。
突然の声に兵士の身体はビクッと跳ねた。
「………………!な、なんだ!?」
「かわいそう。お怪我をなさってますね」
ルチルの言う通り兵士には至る所にまだ新しい傷があった。
「これはおまえらの仲間が……!」
「《オルトニクス・セトマオージェ》」
「………………」
兵士の言葉を遮ってルチルが呪文を唱える。
すると兵士の傷はみるみるうちに消えていった。
その様子を兵士は毒気が抜かれたようにポカンとした様子で見ていた。
「はい、これでもう大丈夫。お大事になさってくださいね」
「………あ、ありがとう……」
ルチルの言葉に兵士は戸惑いながらも礼を言う。
その時、先に行っていたレノックスが着いてこないルチルを心配してかこちらに戻ってきた。
「どうした」
「怪我をなさっておいでだったので、治してあげたんです。みなさん傷だらけですね」
ルチルは心配そうに食堂を見回す。
そこにいる兵士たちは生きてはいるものの大なり小なり多数の傷があった。
「兵士は怪我をするのが仕事だからな」
「立派ですねえ。うちの生徒だったら大変。さっきは大乱闘に驚きましたけど、ありがとうと言ってくれる方たちとなら、きっと、仲良く出来ますね」
そう言ってルチルは微笑んだ。
「ラスティカさん」
ゲルダが1人でいるラスティカに声をかければ彼はその声に反応してゲルダの方を向いた。
「ゲルダ。君も賢者の魔法使いだったんだね。一昨日、久々に君の紅茶が飲みたくて店に行ったんだけどちょうど閉まっていたんだよ」
「一昨日は随分前から恒例の定休日ですよ?」
「そうだっけ?」
ゲルダの言葉にラスティカは首を傾げた。
「ラスティカさん、ここ数年はいらっしゃいませんでしたからね。忘れてしまっても無理はないです」
そう言いながらゲルダは微笑んだ。
「折角店まで来ていただいていたのに申し訳ありませんでした。今日はここに泊まっていってもらうことになるでしょうからお詫びといってはなんですがこの後、ご希望の紅茶を淹れますね」
「それは嬉しいね。楽しみにしているよ」
ゲルダの言葉にラスティカは嬉しそうに笑った。
「…………。店もあるっていうのに参ったな……。いや、あの場所ではもう営業出来ないか。魔法使いだって、勘付かれちまったし……」
「あの……」
隅の方で周りの様子を見ながら独り言を呟くネロはリケに声をかけられ、そちらを向いた。
「……なに?」
「責任者の方とお話したいのですけど」
リケは淡々と要件を話していく。
「はあ……」
「額のような顔の目立つ場所に、妙な模様が出て困っているのです。あなたは関係者ですか?」
「あ、俺も巻き込まれた方なんで。苦情なら別の人に……」
「わかりました。ありがとうございます」
ネロの言葉にリケはお礼を言ってさっさとネロの元を去った。
「どういたしまして。はあ……。……帰りたい……」
ネロは面倒だと言いたげにため息をついた。
「あの、すみません」
次にリケが声をかけたのはクロエだった。
「はいはい!」
「申し訳ありませんが、この額の模様消してもらえませんか?そうしたら、すぐに帰ります」
「え?これ、消せるやつなの?消えないってラスティカから聞いたよ」
「え!?そのようなこと、困ります……」
クロエの言葉にリケは驚き呟いた。
「わかる。たまには違う柄がいいよね。その日の服にも合わせたいしさ」
「着飾るのは贅沢者がすることです。神の使徒である魔法使いは、清貧であるべき……」
リケの言葉にクロエは困惑しながらも口を開いた。
「神の使徒って何……?オシャレするの嫌い……?」
「市井の欲に汚れてしまったのですね。悲しいことです」
「ご、ごめんなさい……」
リケの悲しそうな表情にクロエは何が悪いのか分からないが謝罪の言葉を口にしていた。
「責任者のラスティカさんはどこですか?」
「責任者?」
責任者という言葉に思い当たる節がないクロエは言葉を聞き返す。
「ラスティカさんから聞いたのでしょう。額の模様のことを……」
「ああ。ラスティカは知ってただけで、責任者じゃ……」
「呼んだかい?」
クロエが間違いを説明しようとしたところでゲルダと別れたラスティカがこちらに来た。