賢者の魔法使い
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「魔法使いどもめ……!炎の魔法まで使いおったのか!?兵隊たちを焼き尽くすつもりか!?」
中庭ではドラモンドが愚痴を漏らしていた。
どうやら中庭に火をつけたのは人間の方ではないらしい。
そこに1人の焦ったように兵士がやってくる。
「ドラモンド様!停戦命令です!」
「停戦命令!?私の他に誰が命令できるというのだ!?」
「それが…」
兵士はドラモンドに耳打ちをする。
するとドラモンドの表情が変わった。
「なに!?魔法舎の魔法使いに、アーサー殿下が召喚されただと!?」
「大臣!何故、魔法舎を攻撃した!?」
そこにアーサーがやってくる。
「あ、アーサー殿下……!魔法使いどもが部下たちを攻撃して……」
「攻撃したのは、おまえたちだろう!私は休息を与えて、城にお招きするようにと、そう伝えたはずだ!人と魔法使いが手を取り合って、<大いなる厄災>に立ち向かわなければならない時に、なんということを……」
「アーサー殿下のためを思ってです!アーサー殿下が魔法使いどもに、たぶらかされぬよう……」
ドラモンドの言葉にアーサーは悲しそうに顔を歪めた。
「魔法使いどもというのは止めろ。私も魔法使いだ。私がおまえをたぶらかしたことが、一度でもあったか。そのような気持ちで、私と話していたのか?」
「あ…………」
アーサー傷ついた表情に、言葉にドラモンドは失言だったとばかりに声を漏らした。
「………非礼を詫びて、魔法舎の修復に尽力してくれ。住処を荒らされれば、誰だって怒る。私たちだって、<大いなる厄災>に街や城壁を破壊されて、悲しい思いをしたばかりではないか」
「……………。……申し訳ありませんでした……」
ドラモンドがアーサーの言葉に返事をした直後パチンと音が鳴り響く。
それと同時にアーサーやドラモンドをはじめとする中庭にいた人たちが透明な球体に包まれた。
「な、なんだ!?」
「あ、あそこだ!」
兵士が指す先にいたのは箒に乗ったゲルダがいた。
火の粉が飛び散る空を暑さなんてもろともせずに空に浮かんでいる。
その瞳は彼女の近くを揺らめく炎に向けられていた。
「本当に何も感じない…」
ゲルダはぽつりと呟く。
炎の暑さも、今乗っている箒の感触も、煙混じりの風も、今手の中にある香水瓶の冷たさも彼女は何1つ感じていなかった。
「虚しいものね…」
小さな声でそう呟くとゲルダは存在を確かめるように香水瓶を握りしめた。
「《ルクス・ディールクルム!》」
ゲルダが呪文と共に空中に香水を吹き付ける。
その瞬間、中庭の噴水の水が一気に巻き上げられ彼女が香水を吹き付けた場所に収束し、空の月を覆い隠すほどの大きな水球になる。
そして再びゲルダがパチンと指を鳴らした瞬間パンッと弾け飛んだ。
それは雨のように中庭に魔法舎に降り注いであっという間に炎を消していった。
透明な球体に包まれた彼らは濡れることなく、その様子を呆然と見つめていた。
そして水が止んだ後、兵士たちを包んでいた透明な球体は消えていた。
「濡れてない…」
「あの魔法使いがやったのか?」
そんな言葉がゲルダの耳に届く。
人間たちは驚いた様子でゲルダを見ていた。
その様子に気分をよくしたゲルダは微笑みながらサッと魔法舎の中へ戻っていく。
彼女の綺麗な微笑みに見惚れた者は少なくなかった。
ゲルダが魔法舎に戻れば次々に人が入って来て食堂は人と魔法使いであっという間にいっぱいになった。
「シャイロック、大丈夫?」
「もう平気?」
「やっと収まりました……。心配してくれたのですね、ムル、ゲルダ」
「当たり前でしょ」
「ドキドキした?泣いちゃった?泣いたなら見たかった!」
「ムル。また、あなたは…」
純粋な興味なのだろうがムルの言葉にゲルダは呆れたようにはぁ…とため息をついた。
「ふふふ。いつか同じ痛みを与えて、あなたの悲鳴を楽しみながらワインを空けます。覚えてらっしゃい」
「…シャイロック、怒っているわよね?」
「何のことです?」
「…何でもないわ」
答える気のないシャイロックにこれ以上は問い詰めまいとゲルダは話を切り上げた。
「……はあ……。とんだ騒ぎだったな……。しかし、一気に人数が増えたな……」
そうしてカインは辺りを見回した。
「レノックスさん、強いんですね!格好良かったです!」
「ああ、どうも。……あの方はどこに……」
ミチルはレノックスに興奮したように話しかける。
しかし、レノックスはファウストを探しているようでミチルの言葉を軽く流して再び視線を彷徨わせる。
「すごいですねえ。もう一回、さっきのやってみてください!」
「そんなたいしたものじゃ……」
「「やって、やって!」」
ミチルとルチルにせがまれてレノックスは少し悩んだ後、あの回し蹴りを披露する。
「………………。は……!」
「「わー……!」」
ミチルとルチルは感嘆の声を漏らした。
「テンション高いな……。南の奴らか?」
「きみはさっきの血気盛んな子だね。もしかして、東の魔法使いのシノじゃない?」
3人の様子を見ていたシノにフィガロが声をかけた。
「そうだ。何故知ってる」
「知り合いに聞いたんだ。東に若くて強い魔法使いがいるって。特徴が似ていたから」
「特徴?」
シノはキョトンとした顔で聞き返した。
「小柄で……」
「おまえの名前は?」
しかし、フィガロが特徴を言った瞬間、シノは威圧するようにフィガロに尋ねる。
そんなシノを気にすること無くフィガロは口を開いた。
「南の魔法使い、フィガロだ」
「フィガロ。来年は大柄になって、あんたの頭を見下ろしてやる」
そうしてフィガロを睨みつけた。
どうやらシノは自身の身長のことを気にしているようだ。
「あははは。それは悪かった。よろしくね、シノ」
「ふん……」
笑うフィガロとは対照的にシノは不機嫌そうに顔をそらし、フィガロの元から去っていった。