魔法使いのいる世界
まほやく夢小説設定
本棚全体の夢小説設定魔法使いの約束以外の夢小説は一括で変更可能です。
魔法使いの約束は魔法使いの約束の名前変換場所からどうぞ。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「んっ…、ん…」
翌朝、ゲルダの目が覚める。
「ふぁ…、ぁふ…」
大きな伸びをするとゲルダはベッドを降りた。
窓を開ければ鳥の鳴き声に朝露の匂いに聞こえる水のせせらぎ。
時折入ってくる風は花の匂いも連れてくる。
ゲルダの大好きな自然の匂いだ。
深呼吸をして目を移すとそこにあるのは昨日の水晶。
外は朝だというのにその水晶はきれいな夜を映し出していた。
それを見た後、ゲルダは身支度を整えるために中に戻る。
ネグリジェからいつもの服に着替えて髪をいつも通りに結んで緩く巻く。
そして髪飾りをつけ、水晶を持って部屋を出た。
「ゲルダ、おはようございます」
「あ、おはよう。シャイロック」
部屋の前でゲルダはシャイロックとばったりと鉢合わせる。
「ムルはもう食堂に?」
ゲルダはいつも騒がしい隣の部屋が静かなのに気がつく。
「たぶんそうだと思いますよ。私たちも行きましょうか」
「ええ」
階段を降りて、食堂に着くと2人の予想通り食堂には既にムルがいた。
「2人ともおはよう!」
「おはよう、ムル」
「おはようございます」
「ちょっと私、外でてくるわね」
「こんな朝早くからどこに行くんです?」
「ん?内緒」
そうしてゲルダは意味ありげに微笑んだ。
ゲルダが答えた直後、扉が開き、カインと晶が食堂にやってきた。
「みんな、聞いてくれ。賢者様が新しい魔法使いの召喚を引き受けてくれたぞ。あれ?まだ誰もいないのか?」
「いるよ!おはよう、カイン、賢者様!」
「おはようございます。賢者様、カイン」
ゲルダとムルは入ってきた2人にそれぞれ朝の挨拶をする。
しかしカインは困ったように視線を彷徨わせた。
「ムル?ゲルダ?どこにいる?」
「ポケットの中!」
「え、普通にここにいるけれど…」
「またムルはくだらないことを言って。今日はゲルダも一緒なのか?2人とも姿を消してないで出てこいよ」
「出てるよ?これ以上出れないくらい出てる」
「そうね。これ以上は出れないわね」
「あはは。馬鹿」
どうも噛み合わない会話にゲルダは首をかしげる。
「カイン……。やっぱり、目がおかしくないですか?」
「何かの病気?」
ゲルダがそう呟いた時、再び食堂の扉が開かれ、スノウとホワイトがやってきた。
「おはよう」
「おはよう。皆の衆」
「おはようございます。スノウ様、ホワイト様」
「おはようございます。ファウストの容態はど……いたっ」
ファウストの容態を聞こうと双子に話しかけたシャイロックにカインが正面から突っ込んだ。
「シャイロック。いきなり、目の前に現れるな」
「ぶつかってきたのはそちらでしょう。しかも、正面から」
「え?」
シャイロックの言葉にカインは戸惑ったように声を漏らした。
「二日酔いですか?」
「いや、目の調子が悪くてな……。そう言えば、双子先生の姿も見えない」
「もしかして…」
ゲルダは触れたことによって相手を認識したのではないかと仮説を立てた。
「…ねえ、カイン。ちょっと手を借りてもいい?」
「ん?ああ、いいぞ」
カインの許可を取り、ゲルダはカインの手に触れる。
するとその瞬間、カインは目を見開いた。
「ゲルダ、やっとでてきたのか!ん?でも、なんで俺の前にいるんだ?」
カインのその反応を見てゲルダは自分の中の仮説があっていたことを確信した。
「ほほほ。おかしなこともあるものじゃ」
「我らも昨日は壁の絵から出られんようになってのう」
「絵から出られない?」
カインの目の状況に続き、双子の不思議な現象にもゲルダは首を傾げた。
そんな現象、 ゲルダは聞いたこともなかった。
「冗談にしないでくれよ。俺の話は本当だ。それより、聞いてくれ。賢者様が新しい魔法使いの召喚を引き受けてくださったんだ」
カインの言葉に魔法使いたちの顔は少し明るくなった。
「それは助かりますね。賢者様、ありがとうございます」
「ありがとうございます。賢者様」
「やった!新しい仲間!」
「上手く出来るか分かりませんが、少しでも、みなさんの力になれるなら」
そう言った晶は少し緊張しているようだった。
「感謝するぞ、賢者よ。それでは、昼過ぎに召喚の儀式を行うことにしよう」
「<大いなる厄災>の姿が、見えなくなってからの方が良いからのう」
薄っすらと白く浮かんでいる月を見上げながら、スノウとホワイトは言った。
そして、シャイロックは晶に微笑みかける。
「それまではごゆっくりなさって。まずは朝食にしましょう。カイン、ヒースクリフを起こしてきてください。魔女たちや南の魔法使いたちが石になってしまったので、朝食を作るものがいないんです」
「あいつ、作れるのか?貴族の坊っちゃんだぞ」
「手先の器用な子だったでしょう。彼じゃなきゃ、誰が作るんです?」
シャイロックの言葉にカインはシャイロックとゲルダを見る。
「あんたかゲルダは?あんたは酒場をやってるだろ?前に作ってくれた軽食をうまかった。ゲルダも何回か色々作ってくれただろ?」
「朝から他人に奉仕したくありません」
「私は少し用事があって外に出てこようかなって思っていたんだけれど…」
「なら、俺が作るよ。ぶっこんで煮ればいいんだろ」
「…すぐに帰ってくるからカインはお願いだから大人しくしていてちょうだい」
カインの発言に危ない雰囲気を感じたゲルダはため息をついた後、静かに言った。
「あ……。私で良ければ作りますよ」
「本当?おじやは作れる?」
ムルの言葉に晶は驚き、嬉しそうな顔で口を開いた。
「おじや知ってるんですか!?おじや作れます!この世界でおじや食べれるんですね!」
「すごい感激してるな」
「そう言えば、前の賢者様も、人が環境に順応するためには美味しいご飯が絶対必要だと言ってましたね」
「前の賢者様、料理色々と苦労していたものね。おじやができた時今の賢者様と同じように感激していたし」
「そうでしたね。なら、お任せします。キッチンにご案内しますよ」
そして、シャイロックは晶をキッチンへ案内する。
「じゃあ、私は少し出かけてくるわね。多分おじやが出来上がる頃には戻ってくるから」
「分かった!いってらっしゃーい」
「いってきます。《ルクス・ディールクルム》!」
ムルに見守られながらゲルダが呪文を唱えるとそこに彼女の姿はなかった。