第八章 冬のデート
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その日、千は奏が暇な時は話しかけてきて、奏が忙しい時は静かに彼女を見ていた。
「私を見ていて面白い?」と奏が聞いたら「うん」と千は即答だった。
奏的には視線が気になって仕方なかったが、仕事の邪魔になっているわけではないので、そこは特に何も言わなかった。
そしてバイトが終わり、千と奏は店を出る。
もうすっかり辺りは暗かった。
「じゃあ、行こ?」
そう言って千は歩き出す。
奏も慌てて千について行った。
(千と2人だけで道を歩くのは初めてかもしれない……)
万理も含めた3人で歩くことはあっても千と2人で出かけるなんて初めてのことだ。
(あれ?千、私に歩幅を合わせてくれている?)
無意識なのか意識しているのかは分からないが千は歩く速度を奏に合わせてくれていた。
そのおかげで歩幅の大きい千に奏が走って追いつくなんてことは起きずにいた。
小さな気遣いだが、奏にはそれが少し嬉しかった。
「ふふっ」
「どうしたの?いきなり笑い出して」
「いや、ありがと。千」
「?どういたしまして?」
千は何に感謝されているのかも分からないような顔でお礼を言った。
2人で色々駄弁りながら歩いているとしばらくして青い光が見えてきた。
「千、もしかして……」
目の前に広がるのは一面青い電飾で彩られた並木道。
夜の暗さの中でも輝く青い光はとても綺麗で幻想的だ。
「トキ、行きたいって言っていたよね?」
「!覚えてないかと思った…」
(私も忘れかけていたし……)
千が言っていた会話は約2、3ヶ月ほど前に遡る。
いつも通りのライブの日、控室で奏はスマホを見ていた。
そこで偶然イルミネーションの記事を見つけたのだ。
「綺麗……」
「何が?」
「ん?イルミネーション」
「こういうの好きなの?」
とことこと近づいてきた千に奏はスマホを見せる。
千は隣の椅子に腰掛けて差し出されたスマホを見ながら奏に問いかけた。
「好きだけど最近は行ってないかな……」
「なんで?」
「1人で行くのもなんか寂しいね……。それにそんなに暇じゃ無いし。まあ、時間と相手が出来たらいつか行きたいな」
「じゃあ、僕と行く?」
千はスマホから目を離してサラッと言った。
奏はその言葉に驚いて目をぱちくりさせた。
「え?千と?」
「うん」
「2人で?」
「うん」
「……」
奏は返事に困っていた。
千と行くのが嫌ってわけではない。
ただ、千が本気で誘っているのかは分からないのだ。
彼は音楽以外に興味がない+超絶インドアなのに寒い冬にイルミネーション見に行こうなんて本気なのかどうか分からなかった。
それに、イルミネーションが始まるのはまだ先である。
間も開くため、いざ開催期間になったら覚えていないかもしれない。
なら……
「…時間が空いて、千が開催期間中に改めて私を誘ってくれたらいいよ」
千が改めて誘う。
それは、音楽ばかりの千が、このイルミネーションのことを覚えていること。
千が寒い中、外を出ること確約付けること。
その2つを満たすことになる。
もう一度誘ってきたら、千の本気度が分かるというわけだ。
「!本当?」
「うん」
試されていることも知らず、奏の返事に千は嬉しそうに微笑んだ。
「トキの僕に対する認識酷くない?」
「だって、千は覚えていないことの方が多いでしょ?」
「まあ、そうね」
(否定しないんだ……)
「でも、最終的に今回は覚えていたから誘った。それだけだよ」
そうして千はなんて事のないように言った。
言われてみれば万理と喧嘩したことは覚えていたりするため、今回も偶々頭に残っていたのだろうと奏は自己完結した。