第七章 春原百瀬
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「えっと、君、よく来てくれる子だよね。女の子と一緒に」
「なっ…、なんで知ってるんですか?!」
万理の認知されていると知ったキャプテンはその言葉に更にアワアワし始めた。
「男の子のお客さんって珍しいしね。それにトキがお世話になったって言っていたし」
「お、覚えてくれていたんですか?!」
更にキャプテンに驚きの追い討ちがかかった。
彼は、驚きながらも万理から奏に視線を移した。
「うん。自分から困っている人に声をかけてくれる親切な子は中々いないからね」
「うわー…」
キャプテンは恥ずかしいのか、感極まったのか顔を手で覆って唸ってた。
「リア充かと思ったら、お姉ちゃんなんだって?」
「そ、そ、そんなことまで…」
「可愛い人だね」
「あ!姉ちゃん、トキさんからのプレゼント凄い喜んでました!家宝にするって言ってました!」
「あはは!家宝って大袈裟な」
「大袈裟じゃ無いです!」
さっきの、うわー…と唸っていた姿はどこにあったのか強気にキャプテンは話してくる。
「えっと、怪我とかしてない?病院のお世話になった時のために連絡先渡しておくよ」
「え…?!とんでもないです!いらないです!帰ります!失礼しました…!」
「待って、待って!」
速攻で逃げようとする彼を万理は慌てて腕を引いて引き留めた。
その瞬間……
「ぎゃーっ…!」
キャプテンの大きな悲鳴が上がった。
(びっくりした……)
突然の大声に奏だけではなく、引き留めた万理も少し驚いていた。
「ご、ごめん。掴んだ所、怪我してた?」
「…っいえ!触られてびっくりして!バンさん、超イケメンです…!」
どこをどうしたら万理がイケメンというところに繋がるのか全くもって奏には謎だったがパニックになっているのだけは理解できた。
「あはは。ありがとう。腕痛くなかったら、ここに名前と連絡先書いてくれる?」
キャプテンの言葉に笑いながら万理は手帳とボールペンを彼に差し出した。
「うっ…。手帳もイケメン…」
「…本屋で千円で買ったやつだよ?」
「ふふっ」
やりとりが面白くて奏はつい笑いが漏れてしまった。
そんなことをしている間にキャプテンは緊張しているのか震える手で名前と連絡先を書いていく。
千はその手帳をそっと覗き込んでいる。
そして、キャプテンに万理に開いたまま、ボールペンを添えて手帳を返した。
「ごめんね、本当に。改めてお礼するから…」
「お礼なんていらないです!Re:valeさんのライブには、いつも、ハッピーを貰ってますから!」
キャプテンはとびきりの笑顔で言った。
すると、ふと千がキャプテンに近づき、声をかけた。
「…ねぇ」
「…っ、ひ…!イケメンが近づいてきた…!」
「ふふっ」
キャプテンの反応が一々面白く、奏は再び笑ってしまった。
「手紙くれたことある?」
千は彼のテンパり具合とは真逆の落ち着いたような、でもどこか期待のこもった声色で問いかけた。
「え?」
「この字…。この名前、なんて読むの?」
そう言って千は万理の手帳に書かれた名前を指さした。
「…っ、…春原百瀬です…」
「春原百瀬…」
緊張で声が震えながらもキャプテン…いや、百瀬は名乗った。
千は一言一言を噛み締めるように反復する。
「…そう…。ありがとうモモくん」
千はそう言って微笑んだ。
「手紙…」
千の言葉に奏も万理の手帳をチラッと見てみる。
そこには3人揃って感激した手紙の主と同じ筆跡があった。
「きみだったんだね…」
「へ?」
手紙の主がこの子だったことと手紙の主に会えた嬉しさが奏の胸に押し寄せてくる。
「手紙ありがとう、百瀬くん。私も、万くんも、千も、きみからの想いが詰まった手紙、とっても嬉しかった。心に刺さったし、感動した」
「え?!お礼を言われることじゃ無いです!本当のことを書いただけですから!それだけRe:valeが凄いだけです!」
百瀬は首をブンブン振りながらも強い言葉で言い切った。
「そうだとしても、お礼を言わせて。あの手紙を書いてくれて、Re:valeのファンになってくれて、……私たちに出会ってくれてありがとう」
奏は手紙の主に会えたら言おうと思っていた感謝の言葉を素直に伝えた。
「「!」」
奏の言葉と嬉しさが全面に現れた微笑みに百瀬の顔は真っ赤になり、千は奏のその微笑みに目を見開いた。
千がずっと見たいと願っていた微笑み。
正月に再び見た時は心は満たされたが、今日の微笑みには心は満たされない。
代わりにモヤモヤとした黒い感情が心を締めていく。
(なにこれ……)
今まで感じたことのないそのモヤモヤはとても不快なもので、例えるなら千が思うように曲を作れない際の苦しみや苛立ちに似ていた。
その際と違うのは何が原因でこの感情が湧き上がるのかが千には分からないことだった。
曲を作る際は曲作りが上手くいかない、思い描いていたものが上手く表現ができないから、と理由ははっきりしている。
しかし、今回は違う。
見たいと思っていたものは見れたが心は満たされない。
今までと違うのは千に向けられた微笑みではないということだ。
千の心の中は手紙の主に出会えた嬉しさと苛立ちと苦しみが混ざり合い、ごちゃごちゃだった。
「…………」
千が何も言えないでいると…
「百くん。俺も君が俺たちのファンで嬉しいよ。これからもRe:valeの応援をよろしくね」
「!っもちろんです!今日はありがとうございました!」
万理の言葉に百瀬は我に帰ったように慌ててスタジオを出ていった。