第七章 春原百瀬
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「ふふっ」
(可愛かったな~)
ライブ後、奏は楽器をしまいながら真っ赤になったあの少年の顔を思い浮かべ、笑みが漏れた。
「何笑ってるんだ?奏」
「この前、万くんに話した子が今日、見に来ていてね。ファンサしたら顔真っ赤にしちゃって可愛かったな~って思っていただけ」
「ああ。お姉さんが俺のファンっていう?」
「そうそう。お姉さんが誰だかは分からなかったけどね」
観客は女性ばかり。
当然彼の周りにもたくさんの女性がいて誰がお姉さんかは奏には分からなかった。
もしかしたら自分と雅季のようにあまり似ていないのかもしれない。
「ファンサって何したの?」
「ウインクしただけだよ」
「僕にもファンサしてよ」
「嫌」
千の声に奏は即答する。
(あれはあの場の雰囲気があるからできるだけだし、千はファンサしたところで無反応そう… )
ファンサは反応が返ってこないと羞恥心に悶えることになるのは奏には容易に想像ができた。
千の反応に関しては奏の勝手な偏見ではあるが、千が音楽以外には淡白な性格なのを散々見ているため仕方のないことだ。
「……万もトキも客にはサービスするくせに僕には冷たい…」
少し拗ねたように千は言う。
たまに見るそんな姿は少し可愛いと思わなくもない奏であったが、先程の言葉を撤回する気は毛頭なかった。
「千に冷たかったらもっと色々言っているし、そもそも呆れて今まで付き合ってきてないよ。ほら、さっさと帰ろ」
「…もう少し優しくしてくれても」
「これ以上優しくしたら千がさらにダメ人間になるからダメ」
「違いないな」
「やっぱり冷たい…」
奏のバッサリとした物言いに、万理が同調。
そんな2人に不満そうにしながらも千もまた、帰り支度を始めた。
3周年ライブから数日後。
奏が2人より少し遅れて控室に入ると千が泣いていた。
「おはよ…って…。なんで千、泣いているの?」
「泣いてない」
千は恥ずかしいのか奏に背を向ける。
「嘘つき。目、真っ赤だったよ」
「手紙に感激したんだよ」
「へぇ~。あの千がね」
「Re:vale宛だから奏も読めよ。絶対お前も千と同じになると思うけど」
そうして、万理は奏にその手紙を手渡し、奏はその手紙を受け取った。
奏が手紙を読み進めて行くと、そこには拙い文章ではあったが、彼女にとって嬉しい言葉がたくさん綴られていた。
曲の感想や万理と千の歌のことだけでは無く、奏の演奏のことまでたくさんのことが綴られている。
こんなにも胸に響いてきたファンレターを受け取ったのは奏にとって初めての経験だった。
気づいた時には奏の頬にも千と同じように涙が伝っていた。
「ほらな?」
「うっさい…」
奏は先程の千のように万理から顔を背けると手で乱雑に涙を拭った。
「…これ誰からもらったの?」
「スタッフ経由だからよく分からないな…」
「じゃあ、聞いてみよう」
3人がスタッフ話を聞けばもらったのは男の子からだったということだけが分かったがそれ以上のことは分からなかった。