第六章 新たな出会い
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「じゃあ、力を借りようかな?」
「お安い御用です!」
奏が申し訳無さそうに言えば、それとは反対に少年は太陽のような笑顔で笑った。
奏が事情を話して、ビルがどれだか分からないのだと言えば、少年は、ああ、と呟くと道を見た。
「そのビルでしたらここからすぐですよ。こっちです!」
そう言い、少年は奏の先を歩く。
奏はそれに追いつくように少し駆けて隣に並んでから口を開いた。
「お姉さんとは仲良いの?」
「はい!一緒に出かけたりもします!姉ちゃん、バンっていう人のファンらしいんですけどいつもRe:valeのこと話してますよ!」
ファンでもない少年からの小さな知らせに、奏は顔を綻ばせた。
「そっか、万くんのファンなんだね!嬉しいな〜!君はライブに来てくれないの?」
「今度の3周年ライブは姉ちゃんと一緒に行きます。約束していた友達が来れなくなった代わりに…」
「そっか!当日は楽しんでいってね」
「はい!あ、このビルです」
少し話をしていると少年はひとつのビルを指差す。
それはやはり、近くにあるビルとそう変わらないのだが、この少年が言うからにはそうなのだろう。
「あ、本当にすぐ近く…。ありがとう。助かっちゃった」
「いえいえ!」
「お礼したいからちょっと待ってて。すぐ返してくるから」
「え?!大丈夫です!」
「でも…」
「ただ道案内しただけですし、本当に大丈夫ですから!」
少年は首が抜けて飛んでいきそうな勢いで横にブンブン振る。
「うーん…」
どうしても何かお礼はしたい私はあることを思いついた
「そしたらお姉さんの名前教えてくれる?」
「え?瑠璃ですけど…」
「瑠璃さんね…」
そう呟くと奏は鞄から1枚のCDを取り出す。
しかし、それは普通のCDと違い、万理に千、そしてトキのサインが書かれていた。
つい最近、サインを考えて試しにCDに書いてみたものを偶々そのまま奏は鞄に入れっぱなしだったのだ。
そして、そのCDに持っていたマジックペンで「瑠璃さんへ」と「いつも応援ありがとうございます」と奏はスラスラと書き足した。
そして、はい。とそれを少年に差し出した。
「これって…」
少年は信じられないものを見るよな目で目の前に差し出されたCDをこれでもかという程、じっと見つめている。
「君はお姉さんと仲がいいみたいだから、お姉さんを笑顔にさせることが1番のお礼になるかなって。だから、これはお姉さんに渡して?まあ、万くんからのCDじゃないから喜んでくれるかは分からないけど…」
「う、受け取れません!」
少年は先程よりも激しく首をブンブン振る。
「もう名前も書いちゃったから逆に受け取って貰わないと困るんだけどな?」
奏が笑顔で言うと、少年は少し困ったように、迷ったように視線を彷徨わせ、沈黙した後、口を開いた。
「っ…!じゃあ、いただきます…」
「はい。どうぞ」
奏がCDを再度差し出せば、少年は震える手で、強ばった顔でCDを受け取ってくれた
「…ありがとうございます!姉ちゃん絶対喜びます!」
「ライブ楽しみにしててね」
「はい!じゃあ、失礼します!」
そうして案内人の少年はぺこりと奏に向かってお辞儀をして去っていく。
「あ、あの子の名前聞きそびれちゃった…」
その姿を見送ってしばらく歩いた後、奏はあの少年の名前を聞き忘れたことに気づく。
(でも、近いうちに会えるもんね)
3周年ライブに来ると言っていた彼。
その日が楽しみになりながら奏はCDショップの中に入って行った。