第五章 新しい可能性
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千の気持ちを奏が知って数十日が経ったある日
数日前にRe:valeの曲を好きだと言って入ってきたベーシストの助っ人が千の注文の細かさに耐えきれられなくて啖呵を切って辞めた。
その日を境に万理は奏が思った通りアイドル方面に舵を切り始めた。
それによりメンバーの問題も解決した。
万理も自分たちのやり方を理解してくれる人は奏以外はもう見つからないと心のどこかで思っていたのかもしれない。
千は曲に思い入れすぎる
だから曲とは距離を置こう
それが万理の言い分だった。
千と万理は演奏しない代わりに歌い、踊ることになった。
奏は踊らない代わりに曲の演奏を全て任された。
皆で合わせることが無くなり奏は少し残念だったがRe:valeのためだと思えば気にならなかった。
こうして新しいアイドルのRe:valeが誕生した。
アイドルのRe:valeになっても奏の役割はさほど変わらなかった。
増えたのはCDの作成をすることとライブ時に弾く楽器がドラム固定ではなく、その曲に合ったものに臨機応変に変えていくということだけだ。
そして、新しいRe:valeの一発目の曲として万理は「未完成な僕ら」を選んだ。
しかし、学園祭で一度は完成させた「未完成な僕ら」は奏の予想通り千がこの数週間の間でかなり弄ってしまっていた。
今回は千がもう絶対に弄らないと決心する出来に仕上げなければならない。
何度も何度も悩んで、議論して、ぶつかって、喧嘩して試行錯誤を重ね、ついに満足する曲に仕上がった。
「トキ、よろしく」
「任せて。最高の出来にしてみせる」
千から上がったデモを元に奏は今後使うCDの作成を行う。
その間、万理と千はダンスの練習に勤しんだ。
アイドル用の衣装は前に学園祭で使ったものを万理たちが貰ってきていたようでそれをそのまま使うことになった。
そしてその衣装の中には本番出ることは無かった奏の衣装まで何故か用意されていた。
「どうして私の分もあるの?」
「話を貰った時にはもう出るって返事していたし、向こうは奏も来るつもりで衣装作りに取り掛かっていたらしくて、俺が奏は欠席って伝える時にはほぼ出来上がっていたらしいんだ。中途半端にするのもあれだから仕上げたんだって。お金はいいから貰ってくれって言われたよ」
衣装のサイズ確認のために万理が持ってきた衣装は綺麗に装飾された白と水色と青を基調としたスカートの衣装だった。
白と水色だけではふんわり可愛い感じだが青が加わることでそれは軽減され、綺麗に落ち着いた感じにまとまっている。
しかし、その衣装に奏の表情は少し強張った。
「…これを着るの?」
「まあ、奏、あまり私服でスカート履かないもんな?」
奏の顔が強張ったのはそこだった。
奏は学校の制服など、指定されているもの以外はスカートを履かない。
つまり私服は大体はパンツスタイルだった。
「だって、楽器を演奏するなら動きやすい服装の方がいいし。ピアノの発表会で昔はドレスとかなら着たことあるけどシンプルなのばっかりだったから、こういうのは派手なのはまた違う感じがして…」
「だいぶ落ち着いている方だとは思うけどな。まあ、衣装を新調する予算はまだないから我慢してくれ」
「…仕方ないね。着替えてくる」
「ああ」
奏は観念したようにパーテーションとカーテンで仕切られた簡易的な更衣室に衣装と一緒に渡されたブーツを持って入る。
今着ている服をサッと脱いで用意された衣装を着る。
幸い、変に凝った作りではなくするりと着ることができた。
着てみるとどこでサイズの情報を手に入れたんだと聞きたくなるほどピッタリと奏の体にフィットした。
生憎、鏡は無いため自分では似合っているかの確認はできない。
最後にブーツを履いて、奏は更衣室を出た。
「変じゃ、無いかな?」
緊張した面持ちで奏は恐る恐る外で待っていた2人に聞いてみる。
「おお!似合ってる似合ってる!な?千」
「ん?…うん。似合ってる」
「!ありがとう」
(千から音楽以外のことで褒められるなんて…)
奏は似合っていると言われたことに安堵しながらも、褒められたことに照れ臭そうに笑った。
「!」