第五章 新しい可能性
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学園祭が終わって数日後
今日はライブの日のため奏は雅季のライブハウスを訪れていた。
「失礼しまーす。あ、2人ともおはよう」
奏が控室を開ければ千と万理は既に来ていた。
「おはよう、奏」
「トキが分身できればいいのに…」
「まだ言ってる…」
千の言葉に万理は呆れたように呟いた。
「また助っ人いなくなったんだ」
奏は控室を見回す。
そこに前回までいた助っ人はいなかった。
「奏が来る数分前に辞めるって出て行った…」
「まあ、1週間ももてばいい方だよ。3週間もったし今回は頑張ったんじゃ無い?」
「容赦ないな。お前も」
「本当のことだし」
千は音楽に対してはストイックで彼の要望は曲を良くする上でかなり的確だ。
それに答える技量がないものは千自身が切る。
ついてこられるが自分の色を、自分の思い通りに弾きたいプライドの高い人物は千の要望が頭にきて辞めていく。
千の要望に的確にでき、自分のプライドより曲のことを考えられるような人物では無ければ助っ人は長くは続かないだろうと奏は思っていた。
「はぁ…。トキが数人いれば全部の楽器パートは理想通りなのに」
「そしたら、千は奏にだったら今自分がやっているギターも含めて演奏を全部を任せられる?」
「…まあ、そうね」
「え?」
奏は千から出た言葉に驚いた。
自分の演奏にも強い拘りがあって、上手くできないと顔を歪めていた千が任せられると言ったことが奏には衝撃だった。
「じゃないと学園祭の時にあのCD使わない。僕たちのギターを録って無理矢理にでも入れさせた」
「まあ、それもそうか」
万理は千の言葉に同意する。
「…そこまで評価されているとは思わなかった」
「千は奏が思うよりずっと高く奏のことを評価しているし、信用しているよ。その証拠に最近ずっと指示しなくなっただろ?」
「…言われてみれば」
万理にそう言われれば奏には思い当たる節があった。
最初の頃はここをこういう風に弾いて欲しい、ああして欲しいと言われていたが今は全く言われなくなっていた。
「だって、僕が言いたいこと以上のことをして曲にぴったりのアレンジや表現をしてくるのがトキだから。僕の言葉は曲を退化させる。ならトキに任せた方がいいだろ?今はトキ無しじゃRe:valeの曲は成立しない」
千はサラッとなんでもないように言った。
いつもは万理に同意しかしない千にからその言葉を聞けたのが奏は嬉しかった。
そこまで信用されていたことが嬉しかった。
千にとって無くてはならない物は音楽と万理だ。
そう奏は思っていた。
しかし、その中にいつの間にか自分自身も入っていたことが奏は嬉しかった。
「…ありがとう。千」
そう言った奏の頬は緩んでふわりとした微笑みを浮かべていた。
「何が?」
千はなぜお礼を言われたのか分からないとでも言いたげに呟く。
「奏は千にそれだけ信用して貰えていた事が嬉しかったんだよ」
「そうなの?」
万理の言葉を確かめるように千は奏の方を向いて尋ねた。
「…そうね。凄く嬉しいよ」
改めて言うのは少し照れくさいのか、奏は頬を染めて少し恥ずかしそうに、そして心底嬉しそうに千を見て笑った。