第五章 新しい可能性
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日は流れて学園祭の日。
奏は検診を終え、薬を受け取るためにロビーの椅子に座っていた。
すると、不意にピロンと通知を知らせる音が鳴る。
奏が携帯を開いてみてみれば相手は雅季だった。
内容は画像が1枚のみだったがそれを見て奏は顔を綻ばせた。
そこにあったのは綺麗な衣装に身を包んだ2人の姿。
万理は笑顔で千は少し不服そうだ。
奏は自分が行けない代わりに昼間は用事のない雅季にRe:valeのステージを撮ってもらうために学園祭に行って欲しいと事前に頼んでいたのだった。
「かっこいい…」
思わず声が漏れた。
普段もかっこいい2人だが衣装も相まって奏には2人が更に輝いて見えた。
(こう見ると本当にアイドルみたい…。まあ、今回はそう見えないと困るんだけど… )
奏がそんなことを思っていれば続いて動画も送られてくる。
イヤホンをつけて再生してみれば2人の歌声が鼓膜を振わす。
青空と太陽の下で歌を歌いステップを踏む2人。
しかし、奏にその姿がいつもと少し違って見えた。
千の表情がいつもより柔らかく見えるのだ。
千はいつも演奏中はピリピリしていることが多い。
歓声を鬱陶しがり、ギターを弾くことに集中しても、満足する演奏ができないと顔を歪める千。
そんな彼が楽しそうに歌い、ステップを踏む姿に奏の目は奪われた。
声の伸びもいつもより良いような気がする。
万理もそんな千を見て心なしか顔が緩んでいるように見えた。
アイコンタクトを交わしながら歌って踊る。
ステージの上は2人だけの世界のように奏には映った。
歌い、踊りきった2人を包んだのは割れるような喝采だった。
「いいな…」
出ないと決めたのは自分自身だったが奏は万理と千が少し羨ましかった。
このステージを生で見れなかったことが、あのステージに自分が居られなかったことがとても残念だった。
(万くんはこれを機にアイドルの方向へシフトチェンジするかな?)
こんな楽しそうな千の様子を見た万理は恐らく今後バンドではなくアイドル方面に舵を切るだろうと奏は踏んでいた。
万理が千のことをとても気にかけていたことを奏は知っていたし、奏自身、万理が提案をしなければ自分から提案をしてもいいかもとさえ思っていた。
千の変化は奏にとってそれほどの衝撃だった。
アイドル路線に変更したことでメンバーを外されるかもしれない、なんて不安は奏の中には無かった。
(だって2人は私を必要だって言ってくれた)
この学園祭の話を辞退した時の会話を思い出す。
万理ははっきりと口に出して奏に伝えてくれた。
千もそうねとしか言わなかったが同意はした。
何より、奏を強引に引き入れようとしたのは千なのだ。
千はアイドルとしてより、Re:valeの音楽そのものを評価されたがっている。
それは今でも変わらない。
ならばそう簡単に奏を手放すことはないことは容易に想像できた。
奏自身が抜けると言い出さない限り、2人が奏を切り捨てるようなことはないだろう。
奏が色々と考えていると窓口の薬剤師から名前が呼ばれる。
奏は携帯をしまって、ギターを背負うと薬の受け取り窓口へ向かった。