第五章 新しい可能性
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あれから時は過ぎて今は秋。
この数ヶ月で奏は千とも大分仲良く慣れたと思っていた。
2人を自身の家に招いたこともあったし、好きな音楽について色々語ったりもした。
バイト以外は音楽漬けだった奏を万理は多少強引だったがたまに街に連れ出したりしてくれた。
ライブハウスではRe:valeの1周年ライブも行い、大いに盛り上がった。
そんな充実した毎日を過ごしていたある日。
「アイドルコンテスト?」
奏は首を傾げた。
万理が持ってきた話は学園祭の催し物に参加することだった。
「そう。昔のバンド仲間から参加者が少ないからって頼まれちゃってさ。Re:valeの宣伝にもなるしいいかなって」
「万が勝手に引き受けてきたんだ…。アイドルなんて一番言われたくないのに…」
万理の説明に千は不機嫌そうに顔を歪めた。
奏は万理から手渡されたチラシを見る。
そこには開催日時の他に学園内外問わず、参加者募集!優勝商品は超豪華商品を用意!と書かれている。
「でも、私、踊れないよ?」
「俺たちの後ろでドラムやギター弾いても大丈夫だと思うぞ?一応、未完成な僕らを歌おうと思っている」
「未完成な僕らを?」
「ああ。どうする?」
未完成な僕ら。
それは千がはじめて作った曲であり、頑なに完成させようとしない曲だった。
奏も何回か聞いたことがあるが、聞くたびにどこかしらメロディーが変わっていた。
あの曲を完成させるつもりなのだろうか?と奏は疑問に思った。
しかし、万理が千の前でこう言うのだから千の了承は既に得ているのだろうと納得して奏は首を降った。
「…アイドルは歌って踊ってこそ。踊れない私はお荷物だもん。ステージには2人で出て?それにこの学園祭の日、私は定期検診だもん」
「そういえば定期検診だったか。でも、奏がお荷物なんてことはない。奏はRe:valeに必要な存在だ。だよな?千」
「そうね」
「…ありがとう。2人とも」
2人の言葉が奏には純粋に嬉しかった。
その日からいつにも増して実のスタジオに3人で集まることが多くなった。
その理由は言わずもがな曲を完成させるためだ。
「ここはあげた方がいいんじゃないか?」
「このままでいいだろ」
「ここはもう少しメロディに厚みが欲しいよな」
「だったら、もう1本ストリングス増やす?」
「それか、ギターを入れるか…」
毎日毎日試行錯誤しながら奏たちは学園祭1週間前にやっと曲を完成させた。
しかし、これは一時的な完成であって完全な完成ではないと奏は思っていた。
千はまた物足りなさを感じてまた弄ってしまうだろう。
そして、曲ができてからも3人は忙しかった。
万理と千はダンスに歌の練習。
そして、奏は生音のCD作成をはじめたからだった。
ステージには立てない分きちんとした生音のCDを作ろうと奏は考えたのだ。
全ての楽譜を手に様々な楽器の練習に一日中励む日々が過ぎていく。
楽器は全て奏が弾き、録音とミックスは実が担当した。
そうして超特急で作ったCDができたのは学園祭の2日前だった。
できたCDを奏は千と万理に確認してもらう。
聞いてもらっている間、奏は珍しく落ち着かないようにそわそわしていた。
そして、2人がイヤホンを置くと奏は少し不安そうな眼差しで2人に話しかけた。
「どう、だった?」
「うん。やっぱり、奏の演奏はいいな。な?千」
「そうね」
「…ありがとう!」
満足げに言った2人の様子に奏の不安はサッとどこかに飛んでいき、安心したように微笑んだ。