第四章 生活の変化
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あの初ライブから時は過ぎて今は7月末。
梅雨は過ぎ、夏の猛暑がやってきた。
「あっつ…」
起きたばかりの奏の瞳は虚で視線は空を彷徨っていた。
病気のことを考えると乾燥する冬より夏の方がいいのだが、個人的には暑いのより寒いのが得意だった奏にとって夏は地獄だった。
そして暑さの他にももうひとつ奏には夏が嫌いな理由があった。
「……うるさい」
それはセミだ。
奏は大のセミ嫌い。
そんなセミは奏の心中などつゆ知らずミーンミーンと元気に鳴き続けている。
奏はよろよろと立ち上がり、風を入れるために開けていた窓をピシッと閉め、クーラーの電源を入れる。
寝る際にはクーラーの風で喉に影響があると大変なため付けずに窓を開けて寝る。
そのため夏の朝は毎回、暑さと嫌いなセミの鳴き声が目覚まし代わりだ。
「…はぁ」
奏は最悪な目覚めにため息をついた。
あの日、奏がRe:valeに入ったことで奏の生活は大きく変化した。
まずはライブの収入が入るようになっため新聞配達のバイトは止めることとなった。
それにより、前よりも無理のない生活が送れていた。
学校を終えて、夕方にはライブをして、そしてライブのない日には万理か奏の家、または実のスタジオに集まって反省会や新曲の話などをした。
奏が万理の家に泊まることも少なく無かった。
また、葵にRe:valeのメンバーになったことを初ライブの後に伝えれば彼女は驚きながらも奏の夢が叶ったことを自分のように喜び、激励の言葉をくれた。
そして、忙しい合間を縫って既に何回かライブを見にきてくれていた。
奏のメンバー入りは影口を叩かれることも少なくは無かった。
しかし、影口を普段から叩かれ、慣れている奏はそのことを特に気にしなかった。
今は週に2~3回のペースでライブをしている。
助っ人の方は相変わらず千がバッサリ言って切ってしまうが、内心奏も同じことを思っていることが多かったためなんだかんだ咎めないでいた。
現在は奏の学校は夏休みに入り、カフェで夏休みだけの短期のバイトをしていた。
そこは葵が前からバイトをしているカフェであり、夏休みの空いた時間に少しでもお金を稼ぎたかった奏は去年、葵にそこを紹介してもらったのだ。
そのカフェは人の目につきにくいところにあるからか客はいつもまばらで静かな落ち着いた空間を提供できることが売りだ。
店内はゆったりとしたBGMがスピーカーから流れている。
壁や床は木でできており、所々に植物が置かれ、景観的にもリラックスできる。
風がよく通る2つのテラス席は晴れの日はいつも争奪戦だ。
食事もガッツリとした食事からデザートまで様々なレパートリーがあり、コーヒーも美味しい。
そんな知る人ぞ知る隠れ家のようなカフェを奏は気に入っていた。
そんなある日
「トキ〜。コーヒー豆がもう少しで無くなりそうだから取ってくるね」
「ん。分かった」
奏の返事を聞いて葵は倉庫の方に姿を消した。
そんな風にいつも通りにバイトをしているとカランカランと来客を告げるベルが鳴る。
奏は客を席に案内するために入り口に向かった。
「いらっしゃいま…せ…」
「やっほー。奏」
「…」
そこにいたのは万理と千。
バイト先に2人が客としてやってきたのだ。
奏はとりあえず2人を開いている席へと案内する。
「万くんはともかく、なんで千まで来たの?」
「僕が来たらまずい?」
「いや、まずくないけど。インドア派の千が外に出てくることが珍しいなって」
「万に引きずられて来た」
「たまには外に出さないとな。それに千も奏が何しているか気になるって言うからなら一緒に行くかって連れてきた」
「なるほど…、じゃあご注文をどうぞ」
「飲み物はアイスコーヒーで。あとは奏オススメのものをお願いしようかな」
「僕も万と同じでいい」
冷やかしに来たわけではないようできちんと2人は注文をする。
「じゃあ、ちゃんとした食事と軽めの食事、デザートの3つからお選びください」
「そしたら俺は軽めの食事を貰おうかな?」
「じゃあ、僕はデザートでいい」
「千はアレルギーとか何か食べれないのある?」
「肉と魚。デザートなら使わないと思うけど」
「好きなものは?」
「野菜とか果物かな?」
話を聞く限りでは千はどうやらベジタリアンのようだ。
「ん。分かった。万くんは嫌いなものとかアレルギー増えてないよね?」
「うん。大丈夫」
「ん。では、少々お待ちください」
そう言うと奏は2人に背を向けて厨房に下がった。