第三章 初めてのステージ
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その後、奏たちがリハーサルを終えると既に開演時間間近になっていた。
奏たちは一度控え室に戻り少し休んだ後、舞台袖で待機しながら既に始まっている他のバンドの演奏を見ていた。
「あ!奏s…じゃなかった。トキさんちょっといいですか?」
するとスタッフから不意に名前を呼ばれた名前はそちらに向かう。
「どうかしましたか?」
「リハではスタンドでしたがヘッドセットとかじゃなくて大丈夫ですか?オーナーからドラムをなら聞いておけと言われたもので…。一応レベルの方はハンドマイク参考にすれば今からなんとかなるんで」
その言葉に奏は少し考える。
確かにヘッドセットの方がマイクの定位置を気にしないで叩ける。
しかし、リハーサルで特に問題はなかったのときちんとマイクのレベル録りができてない現状ではスタンドの方が安全いい気がした。
(もう少し早く言ってよ…。兄さん…)
心の中で雅季に文句を言いながら奏は答えた。
「スタンドで問題ないですよ。リハも問題ありませんでしたし…。ただしっかりネジ締めだけはお願いしますね」
「それはもちろんです!任せてください!マイクは最初は自分で持っていますよね?」
「はい。紹介がありますから。自分でセットするので大丈夫ですよ」
「わかりました!では、スタンドだけセットしておきます」
「はい。よろしくお願いします」
奏が2人の元に戻ろうとすると2人は何か話していたらしいがライブハウスの轟音もありその声は奏の耳には届かなかった。
「ただいま」
「お帰り。スタッフさんなんだって?」
「ヘッドセットに変えなくても大丈夫かって聞かれただけ。兄さんが言い出したみたいでね。まあ、きちんとレベルも取れていないだろうからスタンドでって言ってきたけど」
「そう」
「Re:valeさん。そろそろ出番です。準備お願いします」
2人が話していると先程とは別のスタッフが声をかける。
気がつけば先程のバンドの演奏は終わり、ステージの転換が始まっていた。
奏は客席の熱気が先程よりも上がっているのを感じた。
まだ万理も千もステージに上がっていないのにも関わらず、どのバンドよりも強い熱気に奏はRe:valeの人気を改めて実感した。
「俺が紹介するから奏は後で来てね」
「うん。いってらっしゃい」
私は一旦待機して2人を見送った。
「こんばんは、Re:valeです」
万理の挨拶に歓声が上がり千と万理を呼ぶ声が四方から飛ぶ。
「今日は曲に入る前に皆さんにお知らせがあります」
万理の言葉に観客は何事かとザワザワし始める。
「この度、Re:valeに新メンバーが加入することになりました」
その言葉にざわめきは更に大きくなった。
メンバーって…
助っ人じゃないの?
いきなりなんで?
そんな観客の声が奏にも微かに聞こえてきた。
明らかに奏のことを歓迎している声ではない。
しかし、奏の心に不安が芽吹くことは無かった。
それは先程言われた万理と千の言葉が支えになったのか他人の目をあまり気にしない奏の性格からかは奏にも分からなかった。
「新メンバーのトキです。どうぞ!」
「ふぅ…」
万理の声が聞こえた奏は一度深呼吸をする。
そして、舞台袖から一歩踏み出した。
その瞬間、眩しい照明が奏を照らす。
まだあまり慣れない照明の暑さを感じながら奏はステージの中央へと足を進める。
背筋を伸ばして、客席からの視線を気にもしないその姿はとても凛々しく、綺麗だった。
奏が姿を表すと更に騒めき声は大きくなった。
あの子?
よりによって女?
でも、綺麗な人…。
様々な声が奏の耳に入ってくる。
しかし、やはり多いのはどうして?何で?という戸惑いと疑問の声だった。
そんな声が飛び交う中、奏はマイクのスイッチを入れて口元に持っていく。
「初めまして。本日からRe:valeのメンバーになったトキです。ドラムとハモリを主に担当させてもらいます。よろしくお願いします」
奏は精一杯の笑顔で客席に向かって挨拶をした後、深くお辞儀をする。
ざわめきが止まない中、 奏はドラムの椅子へと足を進め、座り、マイクをスタンドにセットする。
そして千と万理とアイコンタクトをした後、奏は勢いよくドラムを叩き始めた。
奏がドラムを叩き始めると空気は変わった。
徐々にライブを楽しむ観客の歓声が増え、会場は暑苦しいほどの熱気に包まれた。
奏がチラリと客席を見ればまだ不安そうな顔をした観客もいたが、それ以上に目に入ったのは笑顔でライブを楽しんでくれている観客だった。
もうヒソヒソとした不安や不満の言葉は黄色い歓声と音楽に混じって奏の耳には届かない。
自分の演奏する音楽を楽しんでくれている人がいる。
自身の演奏を認めて、受け入れて楽しんでくれている。
そのことに奏の胸は高鳴った。
それに影響されたように奏は夢中でドラムを叩き鳴らした。