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第二章 過去と今とこれからと

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千は真っ先に棚に近づき、1枚のCDを取り出し、上のミニコンポに入れる。
そして読み込んでいる間にの作業スペースにあった椅子を引き寄せた。
万理は外に積み上げられていた椅子の中から1つの椅子を取ってきた。

千は万理も帰ってきたのを確認から椅子に座ったままでは届かない再生のボタンを押してから椅子に座る。
間も無くしてスピーカーから流れ出たのは軽快なイントロだった。
万理と千、2人が好きそうな入りだ。

聞いて少し経ち、万理が驚いたのはこれは恐らく打ち込みではなく、大体の音が生音だということだ。
音の若干の強弱に拍とコンマ何秒単位の少しずれることもある音の入り。
それは打ち込みで完璧に表現するにはかなりこだわる必要があるし時間がかかる。
生音ではなかったのはが病気の関係で吹かことができない管楽器とまだ練習中であろうストリングスだけだった。
他は自身が様々な楽器を弾き、それを後から重ねて曲として成立させているのだろう。

そしてこれだけの曲を1人で演奏するのにはかなりの時間がかかる。
は膨大な時間と技術を使ってこの曲を完成させていた。

(凄いやつだな…)

万理は素直に感心し、驚き、自分の幼馴染が誇らしくなった。

(…ちょっと見ない間に成長しすぎだろ)

万理がチラッと千を見ると彼は聞き入るように目を閉じていた。
そして1曲目が終わるとサッとCDを取り出して再び棚から取り出した2枚目のCDをまたコンポに入れる。
その顔はうっすら微笑んでいて次の曲がどんな曲なのか楽しみなのだろうということが嫌でも伝わった。
それ程までにの曲は良かった。

万理はふと楽譜が気になって棚のファイルに手を伸ばした。
それぞれのCDの隣にあるファイルはかなりの紙が入っており厚みもそれなりにあった。
中を見ていけば入っていたのはスコアに各パート個別の楽譜、そしてこの曲が完成するまでの修正を示す赤文字が至る所に書かれた大量の楽譜だった。
あるところには音符が足され、ある所は二重線で消され、メロディそのものがガラリと変わってある箇所や強弱の記号も変わっている箇所も多々ある。
大量の修正された楽譜はスコアのものもあればパート譜のものもあった。

修正されている楽譜と違い、丁寧に書かれた音符達と演奏記号が並んでいる清書されたスコアと見比べてみると最初の曲からは随分と修正され変わっているところが多かった。
修正に修正を重ねることもあるようで先程見た楽譜で修正されていたメロディとは違うメロディが書き込まれていることもあった。
しかし、大元のフレーズは部分的にでも残っていることが多く、あくまで修正であり、全く別の曲に作り替えてしまったことは無いようだった。

万理は赤文字で修正された読みにくい楽譜を眺める。
この楽譜達はこの曲の軌跡だ。
この曲の元が生まれ、完成に至るまでにが何を感じ、何を思いこの曲を変え、最終的に完成させた。
自分の知らない当時のがそこから見える気がして万理は千が次々と入れ替える音楽を聴きながら楽譜を見つめていた。



「ごめん!!遅くなった!」

何曲か曲を聞いた後、2人で曲について話していたら30分という時間はとっくに超えていて追加で30分くらいの時間が経っていた。
万理が謝罪の言葉を伝えればは気にした様子もなく答えた。

「大丈夫。私もきっちり練習できたし。そんなに面白かった?」

「曲についてつい話し込んじゃったよ」

「……いい曲すぎてちょっとムカついた…」

「ありがとう。最高の褒め言葉だね。そう言ってもらえて嬉しいよ」

千の言葉には目を細め、嬉しそうに笑った。

「さて、じゃあ、始める?」

「ああ」

の問いかけに万理と千はそれぞれケースからギターを取り出す。

「あ、2人はそこのマイクの前でよろしくね。高さ合わなかったら調節するから言って」

が行った通り2人が出て行く時には無かったマイクが2本セットされていた。

そして千がの方を見てみれば彼女は有線のヘッドホンをつけていた。
その線はつまみのついた小さな台に繋がっていた。

「それはなに?」

「ああ、2人ともレコーディングスタジオで録るのは初めてなのかな?」

じゃあ、教えるねと言っては説明を始める。

「これはキューボックスって言ってね、2人の前にあるマイクで録った音をこのヘッドホンに返してもらってるんだよ。ライブハウスではモニタースピーカーがあるでしょ?それと同じ」

ライブをする場合アイドル達のような移動距離がある場合はイヤホンのようなイヤモニ、バンドマンなどのあまり移動がない時はステージ側に置かれているモニタースピーカーと呼ばれるスピーカーで自分の音を聞いて演奏する。
ではないと反射した音できちんとした音が聞こえないからだ。

「こうでもしないとドラムを叩いている間はドラムの音が大きくて2人の音が聞こえないからね。っと、2人ともマイクの高さは大丈夫?」

は説明を終え、2人のマイクの高さを尋ねる。

「ああ。大丈夫だ」

「僕も大丈夫」

「オッケー。じゃあ、いくよ」

1小節分、がスティックを鳴らす。
その後、千たちはギターを掻き鳴らした。

のドラムは自分から練習時間は30分でいいと言っていただけあってリズムなどの間違いはほぼ無かった。
ただ、強弱などの表現の解釈の違いはやはりあるものだ。

1回合わせた後、は2人に意見を求める前に楽譜にペンを走らせる。
そして意見を求める前にすぐにもう1回合わせたいと言い出した。

2回目はの表現は所々変わっており、2人との解釈違いはかなり減っていた。
1回目はギターの譜面を見ていないにとっては確認作業だったのだろう。
そして、2回目にして初めては2人に意見を求めた。

は2人の意見を真剣に聞いて、譜面にまた色々なことを書き込んでいく。
そして彼らの要求に臨機応変に対応していった。
しかし、一旦弾いてみた後、前の方が良かった場合は構わず意見してきた。

曲に真摯なその姿が千には少し新鮮だった。
万理とはいつも曲のことで口論になるが他の人と同じようになったのははじめてだった。
一時期助っ人に来ていた奴は曲を良くするための細かい指示に嫌気が差して辞めた。
挙げ句の果てに曲自体に文句を言って抜けていくような奴を2人は何人も見てきた。

しかし、は違った。
この曲が最高のものになるように自分以外の意見も取り入れるが違う気がしたものはズバッと言う。
お陰で何度も口論になる。
しかし、意見を重ねた曲は最高の曲になった。

(万と作る時と似てる…)

千の口元が少し緩んでいたのには誰も気が付かなかった。
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