第二章 過去と今とこれからと
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奏たちはライブハウスを出て、暗い路地から大通りに出る。
近くにあるファミレスに入ると夕飯時だというのに運良く空いていた席に店員が案内をする。
万理の隣に千が隣に座り、奏は万理の向かいに腰を下ろし、その隣の椅子にヴァイオリンのケースを置いた。
各々好きなものを注文して料理が来るのを待っている間、3人は色々なことを話した。
話の内容は今日のライブの感想と好きな音楽の話が主だったがそれだけでも食事中の話は尽きなかった。
3人の音楽の好みは似ているようだった。
曲の感想を奏が伝えれば、千は少し分かりにくかったが、嬉しそうに顔を綻ばせ、そんな千を見て万理は優しく微笑んでいた。
食事を済ませた後、万理と千は奏に先導されて電車に乗り、降りた後も奏の後ろをついていく。
美形集団に振り向く人もいたが、そんなのを気にもせず3人は大通りから細い路地に入っていった。
あまり人通りのない暗い道。
電柱の灯りがポツポツと等間隔に並んでいる。
そんな道を少し行った先に一際明るい光があった。
そこにはStudio STARDUSTと書かれた切り文字の看板が白色の光でライトアップされていた。
その看板の横には地下への階段が伸びており、その先にはガラスの扉が見える。
転落防止のためか階段にも所々に暖かいオレンジ色の光が灯っていた。
「ここか?」
「うん、もう時間になるし行こう」
奏はスタスタと階段を降りていく。
そんな奏に万理と千も続いて階段を降りた。
ガラス扉を押して入るとそこは木の壁と床、そしてソファーが置かれたロビーだった。
入り口から少し進んだ先には1つの固定電話ある。
奏は躊躇なくその受話器を手に取り慣れた様子でボタンを押した。
そして一言二言話すと受話器を置いた。
「すぐ来ると思うから。あ、ちょっとこっち来なよ」
奏はロビーの奥の方にある写真の飾ってある場所に足を進める。
万理たちは言われるがままについていった。
「ここを利用した人たちの写真なんだ。まあ、許可を得た一部の人だけだけどね。それに全部は多すぎて飾れないし」
「あ、この人…」
「あ、千も知っているの?このグループはいい曲多いよね〜」
「ああ。特に3枚目のシングルの〜」
千と奏は楽しそうにもうファミレスで尽きたと思っていた好きな音楽の話に花を咲かせる。
そんな姿を見て万理は思うことがあった。
(それにしても、随分変わったな…)
それは奏のことだった。
たった5年、されど5年。
最後に会った小学生だった奏も今では高校2年生。
しばらく会っていないうちに見た目も纏う雰囲気も変わっていた。
小学生の頃、奏は甘えん坊だった。
父や母に会えなかったため甘えられなかった分が万理に出てきていたのだ。
なのに今ではその片鱗さえ見せないしっかりした性格にズバッとした物言いが目立つ。
初めて会った時、万理は一瞬誰だか分からなかった。
そして今、奏の知らない一面を見て、幼馴染の癖に今の奏をほとんど知らないに少し寂しさを覚えていた。
万理がそんなことを考えていると不意に2人以外の声がロビーに響いた。
「待たせてごめんね」
そこにいたのは見た目40代くらいの男性。
紫の瞳に奏と揃いの髪色。
少し生えている髭さえもおしゃれでダンディさを醸し出していた。
ワイシャツにズボンというシンプルな格好ではあったがそこそこ絵になる男性だった。
所謂イケおじというやつだ。
奏はその声に千から視線を外し、声の主へと視線を移して微笑んだ。
「大丈夫です。実さん。そんなに待ってませんから。今日は急なことだったのにすみません」
「ははっ!気にしないでいいよ!それでこの子達が今日音合わせしたいっていう?」
実の言葉に奏はコクンと頷き、万理たちに視線を移した。
「万くん、千。この人が私の伯父の億井実さん。昔は歌手としても活動していたここの管理者兼エンジニアだよ」
「初めまして。大神万理といいます。今日はスタジオを使わせて頂きありがとうございます。よろしくお願いします」
「……」
奏が実を紹介すると万理自身も自己紹介をして頭を下げた。
しかし、隣にいる千は実を見たまま黙って佇んでいた。
そんな千を見て万理は千の小脇をツンツンと肘で突いて挨拶を促した。
「…折笠千斗。…よろしく、お願いします」
そして千も渋々といった様子だったが頭を下げた。
「初めまして。億井実です。君たちが奏ちゃんのメンバーなんだね。奏ちゃんをメンバーに誘ってくれてありがとう」
そう言って実は頭を下げた。
「俺たちが我が儘言っただけです。たぶんこれから奏には苦労かけるかと思いますが…」
「あははっ!苦労しないアーティストなんていないよ。苦しいことがあっても支え合って、思考錯誤して最高の音楽を作っていくんだ。でも、そんな苦労して作った曲が誰かに真っ直ぐに届いて、感動してくれたり喜んでくれた時ほど嬉しいものはない。その喜びを一緒に分かち合える存在がいるってとってもいいことだよ」
「…そうですね」
「……」
答える万理とは違い、実の言葉に奏は頷き、千は黙って聞いていた。
「さて、箱に案内するね!ついてきて」
そうして先を歩いていく実の後を3人はついていった。