インターン編
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ステラさんから洗濯物を受け取り、新幹線に乗り込む。
大分遅くなってしまい、泊まっていけばいいと言われたが、ただでさえ、授業を休んでしまっている。
明日は休日とはいえ、勉強する時間を確保するためにできれば今夜のうちに帰りたかった。
事情を話せばステラさんはそれを尊重してくれた。
寮に帰ってきたのはかなり遅い時間になってしまい、皆寝静まった後だった。
音を立てないようにカタンと扉を閉める。
女子寮のエレベーターに歩みを進めると同時にチーンと音が鳴った。
男子寮の方のエレベーターから降りてきた人影。
それは轟だった。
「!天野」
「!轟……」
「帰り、今か?ずいぶん遅かったな」
「……まあね。今日は夜が忙しかったから」
「そうか。……?天野、どこか怪我したか?」
「?特に。どうして?」
「いや、なんか鉄の匂いというか血の匂いが天野からした気がして」
「!」
轟の言葉に心臓が嫌な音を立てる。
血の匂い。
拭き取ったというのにこびりついているのだろうか。
大量に血を被ったから移ってしまったのだろうか。
どちらにせよ隠し通さなければならない。
私は平静を装って極めて冷静に答えた。
「……気のせいだと思うよ。……じゃあ、おやすみ」
「ああ……」
轟に背を向けて歩き出す。
エレベーターの上行きのボタンを押す。
その手が一瞬、血塗れになった気がしたがすぐに普通の手に戻る。
この前のような恐怖感は無かった。
私の手は汚れている。
どれだけ洗い流そうと殺した事実は消えない。
チーンと音がしてエレベーターが到着し、扉が開くと共に光が差す。
エレベーター内に足を進めたその時、
「!待て、天野!」
「え?」
パシッと轟が私の腕を掴み引き戻す。
驚くと同時に、触れられた場所に視線を移した。
それと同時に私の腕とそこに触れている轟の手も血塗れになっていた。
汚れた私に触れたから轟の手が血に塗れた。
汚れが移ってしまった。
それだけが頭を駆け巡り、パッと轟の手を振り解いた。
「!わりぃ、嫌だったか?」
私の反応に轟は少し傷ついた表情をした。
その顔にズキンと心が痛む。
どうしてそんな顔をするのか。
そんな顔をして欲しいわけじゃなかったのに。
罪悪感で胸が痛んだ。
来たエレベーターが誰も乗せずに扉が閉まる。
再び真っ暗な静寂に包まれた。
「……今後、私に触らないで……」
「!なんでだ?」
「……轟に汚れが移っちゃう」
「?天野は汚れてなんかいない。ほら、俺の手、綺麗なままだ」
そうして轟は自身の手をサッと見せてくる。
先程の様に血塗れではなかった。
でも、確かに見た。
轟の血塗れになった手が。
私が血に塗れるのはいい。
既に汚れた身。
どれだけ重ねようがそれが濃くなるだけで一緒だ。
でも、轟たちは違うのだ。
彼らには綺麗なままでいて欲しい。
轟の言葉に私は首を振って否定する。
「……私は汚れている。血の匂いがするのもそのせいだよ」
「それ、どういう……」
「おやすみ、轟」
轟の言葉を遮ってエレベーターのボタンを押す。
そして再び開いたドアに素早く飛び乗って閉のボタンを押してから3のボタンを押した。
エレベーター閉じる扉の隙間から見えた轟の顔は酷く悲しげに見えた。
3階に到着して、私はそのまま部屋にしばらくこもっていた。
手を見つめてみればそこにあるのはただの自分の手。
だが、再び血塗れの幻覚が見えた。
「……」
以前のような恐怖心はない。
事実なのだから。
でも、私には誰も触れないで。
その人まで汚れてしまう。
汚れた私のことなんて放っておいて……。
お風呂で麗日たちに身体を触られたあの日、轟に抱きしめられたあの日。
あの時は平和ボケをして忘れてしまっていた。
どれだけ自身が汚れているかを。
汚れは触れた箇所から移ってしまうことを。
もう誰にも触らせない。
もうこれ以上、汚させない。
大切だからこそ、近づかないで。
そう心に決めると共に轟に抱きしめられたことを思い出す。
暖かい温もり、彼の香り、とても安心できる場所だった。
でも、もうその場所には戻れない。
私に許された場所じゃない。
その事実に心が軋む。
痛む心に見て見ぬフリをして必死に押し殺した。