インターン編
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事務所に着くとそこにいたのはステラさんとアジャストさん、メイさんだけだった。
なんでも朝早くから大きい捕物があるらしく、リキッドさん、ヒカルさん、ハルカさんはそちらに出払っているらしい。
恐らく、緑谷と同じ案件だろう。
アンロックさんは今日は休暇のようだ。
夕方ごろには出払っていた3人とも戻ってきたが、かなり対応などで疲れているのかステラさんに報告を済ませると早めに帰っていった。
そして夜。
ステラさんとアジャストさんと一緒に私は例の事務所の近くに来ていた。
ヘアピンを取り出し、ピッキングをしてドアを開ける。
そこにはまだ後処理をしていたと思われる事務所の構成員が1人残らず揃っていた。
構成員は全部で10人くらいの事務所だ。
物音に気がついたのか、全員が一斉にこちらを振り向いた。
「誰だ?」
「鍵閉めたはずだよな?」
「子供?とステラにアジャスト?何のようだ?」
「あなたたちが裏でヴィランと繋がっていることは把握済みです。公安委員会より抹殺命令が出たので実行しに参りました」
「というわけだ。悪いな」
「恨むなら過去の自分たちを恨むんだな」
「公安委員会!?」
「待ってくれ!俺たちはただ……」
「……言い訳は無用です。全て調べはついています」
最初は余裕気だった顔が私の言葉にさあっと血の気が引いていく。
腰から素早く銃を取り出し、引き金を引く。
早撃ちと呼ばれるその技術は公安で叩き込まれたものだ。
発射された水の弾丸が1人の心臓を貫き、悶絶と共にドサリと倒れる音がいやによく響いた。
「くそっ!」
出入口はここのみで逃げ場など存在しない。
個性を使って反撃しようとしてくるが、反撃よりも早く弾丸が心臓を貫く。
「このっ!」
遠距離だと勝ち目がないと思ったのか、増強型の個性を持つ構成員が2人ほどこちらに走ってくる。
繰り出された拳をそれぞれサッと避けて軽くトンと触れると同時に身体が弾け飛び肉片と共に血飛沫が飛び散る。
身体が増加された重力に耐えきれなかったのだ。
瞬間ムワッと漂う血の匂いと自身の顔についた血が不快で、腕で頬についた血を拭った。
「う、嘘だろ……」
「化け物……!」
他の構成員の顔は恐怖に染まっており、信じられないものを見るように私を見ていた。
「一斉にかかれ!数だ数!」
その声に弾き出されたかのように残りの全員が個性を使いながら私に向かってくる。
炎を纏う者、武器を作り出す者、蔦を操る者など多種多様だ。
「……さようなら」
攻撃を避けながら私は風の刃を作り出し、横に薙ぐ。
それだけで全員の身体が上半身と下半身に真っ二つに割れ、絶叫が響き渡り、バタバタと全員が地に倒れ伏した。
もう立っている人は私とステラさんとアジャストさんしかいなかった。
充満する血の匂いに眉を顰める。
嫌な匂いだ。
「……一瞬……すごいな。道理で上が欲しがるわけだ」
「……長居は無用だ。帰るぞ」
「……」
死体を一瞥し、地獄絵図なその部屋を私たちは後にした。
その後、血濡れたコスチュームを持って帰るわけにもいかず、ステラさんのところで洗い、乾燥機までかけてもらった。
頬などに付いた血はタオルで拭った。
「初めての任務はどうだった?」
乾燥機をかけている間、ステラさんがこちらに問いかけてくる。
夜の事務所には私とステラさんしかいない。
他の人は帰っていった。
「?別にどうも」
「怖くなどは無かったか?」
「……特には」
「!……すまないな」
「なんで謝るんですか?」
私の問いかけにステラさんは少し迷うようにしてから口を開いた。
「……自由にしたかったのに結局私が縛り付けてしまっている。首輪をつけられ、強制させている。自由とは程遠い仕打ちだ。自由になる権利があるとか言っておきながらあいつとやっていることは一緒だ」
「……謝らなくていいですよ。きっと、ステラさんが私を確保したあの日からここまで決まっていたんですよ。ステラさんがこの組織をまとめている以上、私が上に目をつけられることは必然。私の生まれからして貴方たちが動くのも必然。ステラさんたちに見つからなければ私は何の疑問も抱かないまま、人形のように生きていたでしょう。私、ステラさんを恨んでなんていないですよ。むしろ感謝してます」
小さな世界しか知らなかった私にいろいろな世界を見せてくれた。
私を大切にしてくれた。
そんなステラさんに感謝をすることはあれど、恨むなんてあり得ない。
もってのほかだ。
「私、最近自分の意思ができたんです。他人に自分の意思を肯定してもらえたんです。それは貴方が私を見つけてくれたからです。あの場所から連れ出してくれたから私は変われたんです」
脳裏に思い浮かぶのはあの夜、私を意思を肯定してくれた轟だ。
私が私の存在を認められた日。
自分の意思を確認できた日。
忘れられない、大切な日だ。
「この役目を誰かがやらなければならないなら既に汚れている私ほどの適任はいないです。この首輪がなくても頼まれれば引き受けていたと思います。私の意思です。ステラさんが謝る必要はありません」
「……ありがとう」
ステラさんは私の言葉に複雑そうな顔をしながらゆっくりと髪を撫でた。