雄英体育祭編
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定魔法使いの約束以外の夢小説は一括で変更可能です。
魔法使いの約束は魔法使いの約束の名前変換場所からどうぞ。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…………」
彼は無言でこちらを見上げている。
「……とりあえず、そのままだと首痛いだろうし。こっち来なよ」
「!」
私は指を上にクイっとあげて風を発生させる。
そして轟をゆっくりと浮かして木の上に招待した。
彼は戸惑いながらも少し距離を空けて隣に座った。
「あまり先の方には行かない方がいいよ。丈夫な木とはいえ折れるかもしれないからね」
「……ああ」
それだけ言うと轟は黙り込んでしまった。
私はそんな彼を気にせずに食べかけのサンドウィッチを頬張り続けた。
しばらくして轟は覚悟を決めたように深く深呼吸をするとこちらを見つめた。
「………お前に聞きたいことがある」
「なに?」
「お前、俺と同じ複数個性持ちだろ」
「……今日は風しか使ってないはずだけど」
今日は予選と騎馬戦。
どちらも目に見えて使ったのは風の個性だけだ。
重力操作も使ったがあのロボットが潰れたのは轟は見てないだろう。
「尾白から聞いた。お前USJの時、火災ゾーンにいたそうだな。それでお前は天空に放った雨の矢で敵を次々に仕留めて行ったと尾白が言ってた。それに体力テストの時のハンドボール投げ∞の記録。あれは麗日と同じ無重力にする個性じゃねぇとできない。重力、水、風。応用とか派生だと説明厳しいだろ」
「……まあ、そうね。お察しの通り私は複数個性持ちよ」
よく見ている。
視線を感じたとは思っていたが尾白から話まで聞いていたとは驚きだ。
「他にどんな個性持ってるんだ?あれだけか?」
「……あくまで、これから戦うかもしれない相手なのに教えないよ」
「……それもそうだな」
そう言うと轟はまた黙ってしまった。
お互いあまり話が続くタイプではないから仕方ないのかもしれないが、あんだけ気分を落ち着かせて話してきたのが私の個性の話とは拍子抜けだ。
「……あんなに深呼吸しておいて私に聞きたいことはそれだけ?」
「……いや……。……お前ん家。……個性婚なのか?」
「……………そうだ。と言ったら?」
「!」
轟は驚いたように目を見開いた。
自分から聞いてきたくせに確信がなかったのだろうか。
個性婚。
自身の個性をより一層強化して子供に継承するために配偶者を選び、結婚すること。
個性は両親の遺伝によることが多いことから、その子供は強力な個性が発現する確率が高い。
第2~第3世代で頻発し、非人道的かつ人権否定にもつながることから、世界的な問題になった事案だ。
複数個性所持なのであれば個性婚が疑われるのは至極当然のことだろう。
「……それを私に聞いて、あなたに何が関係あるの?」
私の問いに彼は話しを始めた。
彼の父親がNO.2ヒーローのエンデヴァーだということ。
エンデヴァーは長年NO.1ヒーローであるオールマイトに尋常ではない程の敵対心を抱いており、彼を超える子供を造るために個性目当てに妻を娶ったこと。
そして、子供を産ませ続け、そうして生まれたのが自分だということ。
家庭で何があったのかは知らないが彼の話す言葉の節々から父親への異常なまでの憎悪を感じた。
彼は自分の左側を、父親の力を使わずに一番になることで父親を全否定するのだと言った。
「時間取らせて悪かったな。お前が俺と同じなんじゃないかって思って確かめたかったんだ」
「……うんん。大丈夫」
「……俺は、誰にも負けねぇ。お前にも、緑谷にも」
どうして緑谷くんの名前が出てくるのかは分からないが、彼は木から飛び降り会場の方へ向かっていった。
彼が飛び降りた衝撃が枝から伝わってくる。
その振動を感じながら考えた。
「……憎むのが普通なのかな…。……分かんないや」
遠くで、最終種目の招集を呼びかける声が聞こえ、私も木を降り会場に向かった。