寮生活編
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No.1ヒーロー、オールマイトは引退を発表。
それに伴うヴィランの活性化の可能性を考え、雄英は全寮制を導入することが通達された。
そして、そのための各家庭に家庭訪問が行われることになった。
雄英高校から徒歩圏内の高層マンション。
警備員のいるエントランスを抜け、受付にいるコンシェルジュに用件を伝えれば、「話は聞いております。お通りください」とすんなりと中へ倒された。
目的の階へ向かうエレベーターに乗り込み、階数を押す。
少ししてポーンと柔らかい音と共に扉が開いた。
一番端の角部屋。
そこのインターホンを押せば、「すいません。今開けます」と声がしてガチャンと音がする。
少しして重厚な扉がガチャリと開かれ、さらりとした銀髪が見えたのち、目的の少女……天野奏が顔を覗かせた。
「相澤先生。忙しいところありがとうございます。どうぞ」
「……ああ、失礼する」
高校1年生が住むのには少し広い2LDKのマンションの一室。
家の中は温かみを感じる白やアイボリーを基調としたナチュラルインテリアが多い。
また、様々なところに観葉植物がある。
造花ではなく本物のようだ。
机の上には小さな花瓶があり、色とりどりの桔梗の花が生けられていた。
天野はキッチンへ向かうと冷蔵庫から麦茶のピッチャーを取り出す。
それをグラスについでコースターと合わせて俺の前においた。
「どうぞ」
「ああ、ありがとう。……にしても、凄い家に住んでるな、お前」
「……ステラさんが女の子の一人暮らしなんだからお金は気にしなくていいからある程度セキュリティの高いところにしなさいと」
「なるほどな。大切にされているな」
「……はい」
分かりにくかったがその声は少し柔らかく、嬉しさが滲んでいるような気がした。
入学当初とは随分変わったようだ。
そのことに驚きながらも出された麦茶に口をつけた。
入学当初、俺は彼女に人形のような少女だという印象を抱いた。
何をしても変わらない表情、淡々と物事をこなすその姿。
どこか遠くを見ているような空虚な瞳が印象的だった。
担任になって数日後、手配に時間がかかってしまったと校長より目を通すようにと言われた厳重書類。
その中に入っていた彼女の個人情報。
その内容に目を通せば、彼女の状態についても納得がいった。
とある公共機関からの公式文書。
それぞれの書類に押された秘密厳守の判。
緊急時の連絡先にはステラさんの名前と連絡先があった。
それを見て昔、ステラさんと飲みに行った際の話を思い出した。
ミッドナイトとマイクも一緒だった気がする。
『ステラさん!最近あんまり活躍聞かないですけど何かあったんですか?』
『あはは、ちょっとね。ちょっと子供を引き取ってね。1人にしておけないから、少しヒーロー活動はゆっくり目なの』
『え!?どんな子なんですか?』
『ちょっと家の事情で普通を知らない子だよ。まだ小学生くらいだからできるだけそばにいてあげたいんだけどね』
『じゃあ、今日も帰ってあげた方がいいんじゃないですか?』
『いいのいいの!あまり干渉しすぎても休まらないだろうし。それに、私少し嫌われているみたいだから』
『え!?そうなんですか?』
『まあ、いいんだけどね。私がどう思われていようが。あの子が幸せになってくれるなら』
『ステラさん……』
『さあ!この話は終わり終わり!飲も飲も!』
ステラさんは明るい姉御肌でかなりの人に好かれる性格をしている。
だからこそ、そんな彼女を嫌っている少女はどんなやつなんだろうと少し興味を持ったことを覚えている。
あの時、ステラさんは、「嫌われている。」そう言っていた。
でも、目の前にいる少女からはそんな雰囲気は感じられない。
どうやら何か変化があったということなのだろう。
喜ばしいことだ。
そんなことを思いながら足元に置いた鞄から1枚の書類を取り出し、天野の前に置いた。
「さて、事前に通達があった通り、雄英の全寮制についてだ」
「はい」
「お前の家庭事情に配慮し、既にお偉いさんに話は通してある。もちろん、ステラさんにもな」
「はい」
「双方、特に問題なし。あとは当人の判断に委ねると連絡があった。あとはお前の意思確認だけだがどうだ?」
「私自身も特に問題ありません」
「そうか。分かった。寮に入れる荷物を用意しておけ。荷物は入寮3日前に業者が取りに来る」
「分かりました」
「他に何か質問あるか?」
「いえ、特には」
「よし、それじゃあ、また学校でな」
「はい。ありがとうございました」
「あ、あと」
お辞儀をする天野にふと思い出して玄関に向かう足を止めて振り返る。
まだ何かあっただろうか?と不思議そうな顔を浮かべる天野に俺はニヤリと笑った。
「目の腫れは冷やすとよくなるぞ。直しておけよ」
「!は、はい……」
俺の言葉に天野は気まずそうに目を逸らしながらも返事をした。