神野事件編
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あのNo.4がまるで子供をあしらうように倒されてしまった。
圧倒的力。
何が起きたのか分からず、震えが止まらない。
「さて、奏くん。きみの個性。弔の意に背いたのなら危険な個性だ。ならもらっておかないとね」
「……!」
私に手が伸びる。
そんな時、かさりと何かが動く音がした。
音をした方を見れば頭から血を流しながらも震える足で立つステラさんがいた。
「待ち、なさい……」
「!ステラさん!」
先生は私へ手を伸ばすのをやめるとステラさんの方に視線を移した。
「プロヒーローステラ……。僕は怒っているんだよ。きみが奏くんを連れ出さなければ彼女は順調に成長して弔の優秀な右腕になっていただろう。彼女程の実力があればもっと計画もスムーズに行くことができた。更に、彼女もオールマイトを殺すという本来の生きる意味を全うできたんだ」
オールマイトを殺す。
それは両親から与えられた過去の私の生きる意味。
私の全てだった言葉だ。
「……その生きる意味はあんたたちが勝手に奏に押し付けた夢だ。この子が望んだものじゃない!」
「と言っても、奏くんには何もないだろう。意思も感情も欲望もね。自分のために生きることを知らない。求められる通りに生きることしか教わってこなかった。だからこそ、弔の駒として相応しかった。主人の言うことを忠実に聞く駒としてね」
先生の言う通りだ。
私の価値は個性しかない。
私自身の感情や欲望はいらない。
私たちの言うとおりにしなさい。
ずっとそう言われていた。
それが当たり前だと受け入れていた。
先生の言葉にステラさんはギリィと歯を噛み締める。
音がここまで響いてくるようだ。
「っ!あんたたちがそう仕向けたんだろ!幼い頃からオールマイトは悪だと、死は救済だと教え込み、殺すための道具としてこの子を育てた。人の温もりも愛情も与えずにただただ苦しい、辛い思いをさせて鍛え続けた。小さな願いすら抱かせないように外界と隔絶した。全てあんたたちの欲望のために……!他人のために生きなきゃいけない人間なんていない!願いを抱く権利も、愛される権利も、夢を持つ権利も誰にでもある!奏は自分のために自分の意思で生きていいの!!それを踏み躙った、取り上げたあなたたちを私は許さない!」
「ステラさん……っ……」
ステラさんの叫びに胸がじわっと熱くなって目頭が熱くなる。
ポロポロと雫がこぼれた。
悲しいわけじゃないのになぜ涙が流れるのだろう。
分からないけど止められなかった。
そんなことを思っていたのか。
一緒にお互いを抱きしめ合いながら寝て両親からもらったことのない温もりをくれた。
一緒に暖かいご飯を食べて好きと嫌いがあることを教えてくれた。
よくステラさんは自分がやりたいことをやっていいんだよと言ってくれた。
でも、私は願いを抱いたことが無くて、どうしたらいいか分からなかった。
そんな時にも、「今日のご飯はオムライスがいいとかそういうのでもいいんだよ?」と願いを抱くと言うのがどういうものなのかを教えてくれた。
少しずつ、少しずつ、私をロボットじゃなくて普通の人間にしようとしてくれた。
でも、それはステラさん自身が私を思ってやっていたことじゃなくて上からの指示で私に常識を教えていただけだと思っていた。
しかし、今日はっきりと分かった。
彼女は大切にしてくれていたのだ。
こんな私のことを。
その事実がどうしようもなく嬉しかった。