林間合宿編
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PM 5:20
「あ、やぁーっと来たにゃん」
「随分遅かったね〜」
青い空は消え去り、夕暮れが辺りを赤く染める頃、A組は満身創痍になりながらも全員が施設に辿り着いた。
9:30から現在夕方約5:30。
本来到着予定の時間から5時間ほど遅い。
私も大自然にいたからかエネルギーが満ち足りていて個性はまだ使おうと思えば使える。
だが、体力的な面では疲れた。
職場体験のハルカさんをひたすら追いかけた時の疲労感と同じ感じだ。
あの時も風の個性はずっと使っていたが、ずっと使っていたため少し休みたいという感じだった。
あの3時間というのはプッシーキャッツの皆さんなら3時間だったということだった。
その言葉に改めてプロは凄いと感じた。
空腹を現すようにお腹が小さく鳴った。
「でも正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ君ら……特にそこ5人!躊躇の無さは経験値によるものかしら?」
ピクシーボブは飯田、緑谷、爆豪、轟、そして最後に私を指差した。
そしてピクシーボブは私以外の4人にペッペと唾を飛ばす。
マンダレイによると適齢期的なアレでツバをつけているらしい。
物理的につけても意味はない気がするが黙っておこう。
ツバをつけられながら緑谷がマンダレイの傍にいた少年のことを問う。
少年はマンダレイの従甥で名前は洸太くんというらしい。
緑谷は洸太くんのそばに行き、自己紹介をしたが当の洸太くんは緑谷の局部を思いっきり殴り、去っていく。
その光景にクラスメイトの男子勢の顔が青ざめていた。
余程痛いのだろう。
なんとも言えない空気を相澤先生がぶった斬り、今後のスケジュールを説明後、私たちはバスに戻り荷物を取った後、疲れた身体を引きずって施設内へと足を進めた。
夕食後、クラスの女子全員で浴場である露天風呂に向かう。
森の中にいたせいで汗と土で汚れてしまった制服を脱いで大きな扉を開ける。
外といえど夏だからか肌寒いなんてことはなく、風がちょうどいい。
複数の洗い場の先に岩に囲まれた露天風呂があった。
松の木も植えられておりとても風情がある。
森での汚れをしっかり落とすように髪も身体もいつもより丁寧に洗い、長い髪をゴムで上で纏める。
身体にタオルを巻きつけてつま先からお湯に入れれば外のお風呂だからかお湯はいつもより温度の高く、じんわりと熱が広がる。
温度に慣れるためにしばらくそのままでゆっくりと楽しむ。
「天野ってさ……」
「?」
「ヤオモモに並んでスタイルいいよね!」
「へ?」
「あ、それ私も思った」
「え、あ、あの……」
「胸もそうだけど、特にきれーな背中!それに足……!」
「触ってもいい?」
「い、いいけど……」
「肌もスベスベだ……」
「本当ね」
「髪もいつもサラサラですし、ヘアサロンのシャンプーとトリートメント使ってるんですの?何か特別なお手入れとか?」
「えっと、知り合いに進められたやつがあってそれを使ってるかな……。普通に薬局とかで買えるやつだけど……。手入れとかもドライヤーしてオイル少しつけているだけ……」
「う、羨ましいですわ……!」
「そのチョーカーずっとしているけどお風呂の時も外さないの?」
「……うん。これは外せないんだ」
芦戸の言葉と耳郎が話に乗ったのをきっかけにみんなが私の方に寄ってくる。
ちなみに私の肌をスベスベしているのは梅雨ちゃんと麗日だ。
人に肌を触られるのは初めてだ。
少しだけくすぐったい。
自分の髪も身体も特に意識したことは無かったから褒められるのはなんだか変な気分だ。
気持ちを紛らわすように足しか浸かっていなかったお湯にタオルをとって浸かればじんわりと身体中に熱が広がっていく。
「というか、いつの間に麗日たちと仲良くなったの!?アタシらとも話そうよー!アタシずっと、天野のこと気になっていたんだから!」
「えっと、そう、なの?」
「そーそー!ね?」
「ええ。天野さん、最近少し雰囲気が柔らかくなった感じがしますわ」
「そうだね。前は一匹狼って感じだった」
「……まあ、それはそうかも。否定しない」
同年代の人と関わるのは初めてで、会話の必要性を感じなかった。
授業の時の連携とかはきちんとやる。
それ以外は不要だと思っていた。
だから飯田や麗日たちから話しかけられても一言二言で終わらせてすぐにどっかに行っていた。
変化があったのは体育祭からな気がする。
轟と緑谷の試合で緑谷から言葉の力と大切さを教わった。
そして、この前の保須事件で少しだけ感情というものが分かってきた気がした。
少し感情が分かったからこそ、この前の麗日の曇った顔に何か不快にさせてしまったんじゃないかと焦った。
梅雨ちゃんは口下手でも私と話すのが楽しみだと言ってくれた。
なら、少し頑張ってみようと最近は思ったのだ。
「いい機会ですし、これを機に是非私たちとも仲良くして下さいませ」
「改めて、よろしくね。天野」
「……うん。こんな私でよければ……」
これはなんていう感情なのだろうか……?
安心……とは少し違うと思う。
暖かくて、フワフワしていて嫌じゃない。
むしろとても心地いい気持ちだ。
「どうしたの?複雑そうな顔して?」
「えっと……。こんなこと言うの変かもしれないんだけど……3人に改めてそんな風に言われて胸があったかくなったっていうか……。最近よくなるんだけど、でも、この気持ちがなんていうのか知らなくて戸惑ってる……」
顔を覗き込んできた麗日に正直に今の気持ちを話した。
みんなが当たり前に感じる感情が私には分からない。
少し聞くか迷ったが私は答えを知りたかった。
「……奏ちゃん。それはたぶん嬉しいって気持ちだよ」
「嬉しい……?」
「うん。胸がホワってあったかくなって満たされる感じ。気分が少し高揚する感じ。それが嬉しいって気持ち」
「嬉しい……。これがそうなんだ……」
麗日が私の両手をギュッと包んで優しい声で答えを教えてくれた。
また、感情を1つ知ることができた。
その事実にまた心が暖かくなる。
これが嬉しいって気持ちなのだろう。
「!笑った」
「天野さん、今、笑いました!?」
「え、私、笑ってた……?」
みんなが口々に笑っていたと言うが自分では自分が笑っていたか分からない。
「笑ってた笑ってた!めっちゃ可愛いじゃん!もっと笑おう!」
「えっと……、ごめん。自分でもどうやったか分からない……」
「ゆっくり慣れていけばいいと思うわ」
「そうそう!嬉しくなった時に笑えばいいんだよ!」
「……ありがとう。みんな」
こんな感情も分からない私に温かい言葉をかけてくれる。
皆凄く良い子たちばかりだ。
その事実にまた嬉しくなった。
それからは他愛もない話をたくさんした。
これが梅雨ちゃんが言っていた女子会というものなのだろう。
すると、不意に塀の向こう側から飯田と峰田の声が聞こえてきた。
「峰田くん!やめたまえ!君のしていることは、己も女性陣もおとしめる恥ずべき行為だぞ!!」
「壁とは超える為にある!Plus Ultra !!」
「「………」」
「峰田ちゃん、サイテーね」
「ありがと洸太くーん!」
こちらを覗くために塀を登っていたらしい峰田が上で見張りをしてくれていた洸太くんに弾き落とされ、こちらを見た洸太くんも鼻血を吹き出して男風呂の方へ倒れていった。
頭など打ってないか心配だが、緑谷の声が聞こえたから恐らく無事な筈だ。
たくさん話したせいか少しのぼせ気味になってしまい、全員で露天風呂から上がった。
そして、部屋に帰ってからも女子会は夜遅くまで続くのであった。