職場体験編
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皆がホッと一息ついていると広場で見た翼を持った脳無がこちらに飛んでくる。
そして一瞬の内に緑谷の身体を足で掴んで行った。
「「緑谷!!」」
「緑谷くん!!」
私は無重力になっている緑谷の重力を慌てて解除する。
脳無が起こす翼の風のせいでみんな身動きが取れない。
ハルカさんもテレポートした先で風圧に飛ばされてしまうだろう。
私の個性も、風、炎、水、氷では風圧に押し戻されてしまう。
風の影響を受けないものといえば電気だが、接触している以上、緑谷まで感電してしまう。
ならば光しかない。
(ヒカルさんを思い出して……)
圧縮して放つレーザー光線。
やり方は体育祭で轟に放った風の弾丸とおおよそは同じ。
ただ、ひとつ違うことは圧縮は最後まで解除しないことだ。
できるはずだ。
やらなければ緑谷は連れ去られる。
一度深呼吸をして、光を圧縮する。
慎重に狙いを定めて、私は1本のレーザー光線を放つ。
その少し前に視界の端で何かが動いた。
それは拘束していたはずのヒーロー殺しだった。
彼が動いたのと同時に脳無の動きが硬直したように動かなくなった。
翼が動かなくなった脳無は徐々に減速、高度を落としていく。
それに対してヒーロー殺しは凄まじい速さで走っていく。
私の放ったレーザー光線は高度が落ちたことによって狙いがズレ、足を貫くことなく空に消えていった。
「偽物が蔓延るこの社会も……徒に力を振りまく犯罪者も……粛清対象だ……!!」
そう言って飛び上がったヒーロー殺しは脳無の頭に隠し持っていたであろうナイフを突き立てた。
脳無は悶絶を上げて地面に頭から着地。
数メートル引きずられた。
「あのヴィラン、動ける身体ではないはずなのに……!」
ピークさんはヒーロー殺しの身体の状態を覗き見していたのか彼が動いたことに驚きを隠さないでいた。
「……全ては正しき社会の為に!!」
はぁはぁ……と息を吐き、緑谷の頭を押さえつけてその場に佇んでいる。
人質を取られており、皆すぐに動けなかった。
「なぜ一塊りで突っ立っている!」
「こっちにヴィランが逃げて行ったはずなんだが……」
後ろから声が聞こえて振り向いて見ればそこにはNo.2のエンデヴァー、そしてヴィランを追っていたヒカルさんが走ってきていた。
ヒーロー殺しはエンデヴァー……と掠れた呟くとこちらを振り向いた。
振り向きざまに彼の目元を煽っていた布が取れる。
血走った目に眉間に寄ったシワ。
よだれが出ているのにも構わず、目を見開いてエンデヴァーを……こちらを見ていた。
その姿、威圧感にこの場にいる誰もが戦慄し、硬直してしまった。
「正せねば…… 誰かが血に染まらなねば……ヒーローを……取り戻さねば…!!」
一歩ずつゆっくりとやつはこちらに歩いてくる。
近づくたびに威圧感が強くなっているような気さえした。
目を逸らすことすら叶わない。
呼吸も忘れてしまいそうになる。
その姿はまるで修羅のようだ。
「来い……来てみろ偽物ども……。俺を殺していいのは……本物のヒーロー……オールマイトだけだ……!!」
言葉がビリビリと空気を振動させる。
その言葉は彼の魂の叫びのように思えた。
カランとナイフが落ちる音がして威圧感がフッと解ける。
やつは立ったまま、白目を剥き気絶していた。
エンデヴァーの気を失っているという言葉に安心したように何人かが尻餅をついた。
対する私もあの威圧感を吐き出すようにはぁっと息を吐く。
不足していた酸素を運ぶために心臓がドクドクと動き始め血液が急速に身体を巡る。
汗が一筋、首筋を伝った。
(……足が縫い付けられたように動かなかった。目が逸らせなかった……。威圧だけでここまで感じたのは初めてだ……。これを恐怖というんだろう……)
「ステラさん……」
『……どうした?』
「……少しですが、感情が分かった気がします」
『……そうか』
聞こえたステラさんの声は複雑な声色をしていた。
後日
ヒーロー殺しに関しては資格未取得者が保護管理者の指示なく個性で危害を加えたことにより、規約違反を犯した飯田、緑谷、轟だったが処罰を免れるためにエンデヴァーが確保をしたと言う形で世間に公表された。
当然現場に居合わせた私も口裏を合わせることとなった。
そして、後に保須事件と呼ばれるこの事件は幕を閉じた。
しかし、事件の影響は静かに波のように広がっていく。
私たちを取り巻く環境も、少しずつ変化を見せていく。