雄英体育祭編
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一回戦の試合が全て終了した。
残念ながら麗日は爆豪に負けてしまった。
次の試合は轟と緑谷。
私はその次には塩崎さんとの対戦だ。
(緑谷はどう轟を攻略するのか……)
私と同じなのであれば轟の弱点は分かってる。
それは両側を使えばカバーできる範囲だ。
しかし、彼は片側しか使わない。
なのであればいつかは限界が来る。
緑谷が勝つのであれば短期決戦は難しいだろう。
持久戦に持ち込み、弱点に気がつき、そこをつくしか無い。
そんなことを考えているとフィールド内に、轟と緑谷が入場した。
『今回の体育祭!両者トップクラスの成績!緑谷!バーサス!轟!まさに両雄並び立ち!今、スタート!』
ほぼ同時に動き出す。
先手を打ったのはやはり轟。
開始瞬間からいつも通り氷結を繰り出す。
対する緑谷は指を弾き、目の前に迫っていた轟の氷結を打ち消す。
確かに現時点で緑谷にできるのはそれだけだ。
腕全体での攻撃の方が威力は上がるだろうが、轟の背後には氷の壁がある。
あれでは衝撃や風圧で押し出したとしても簡単に場外にはいかないだろう。
指は両手合わせて10本。
そのうち弾くのに使用できるのは8本だ。
それまでに轟の弱点を探り、突けなければ緑谷は負ける。
代わりに轟は8本使い終わるまでの持久力を見せるか可能な限り早めに終わらせなければ勝ち筋はない。
右手の指を使い切った緑谷に轟は近接攻撃を仕掛ける。
緑谷は跳躍して回避したが逃げきれなかったようで、轟の氷結に右足が捕らえられた。
そして、それを緑谷は砕いだ。
しかし、今度は指だけでなく、腕全体を使ったようで負傷していた。
この短時間でほぼ無傷な轟に対して既に満身創痍の緑谷。
しかし、よく見ると轟の右半身が少しずつ霜に覆われている。
緑谷の劣勢には変わりないが、轟の身体にも霜が降り始め、少しずつ異変が起きている。
(やっぱりそうか。冷気の耐久限界……。左の炎を使えば解決できる弱点……)
しかし、それでも彼は止まらない。
とどめと言わんばかりに緑谷に氷結を再度繰り出した。
『圧倒的に責め続けた轟!とどめの氷結を……!』
「……どこ、見てるんだ!」
「!」
決着がつくと思われたが、突如会場全体に襲いかかるほどの暴風な吹き荒れる。
この風は緑谷の個性によるものだ。
(でも、腕も指ももう使えないはず……。どうやって……)
フィールドを見れば負傷した指で再び氷結を打ち消していた。
「震えているよ……轟くん……。個性だって身体機能の一つだ。きみ自身冷気に耐えられる限度があるんだろう。でも、それって左側の熱を使えば解決できるもんなんじゃないのか……」
どうやら緑谷も轟の弱点に気がついたようだ。
両方を使えば轟に弱点は無くなる。
しかし、今の状態なのであれば持久戦こそ轟の弱点だ。
「皆…本気でやってる!勝って…目標に近づくために…!一番になるために!『半分』の力で勝つ!?まだ僕は……君に傷一つつけられちゃいないぞ!全力で!かかって来い!!」
(いつもは弱気なあの緑谷が、怒っている……)
ボロボロになりながらも、強い意志を宿した爛々とした瞳で轟を見据えていた。
激情がここにまで伝わってくるようだ。
轟がまた攻撃を仕掛けるが、最初と比べて動きが鈍い。
恐らく霜のせいだろう。
そして、そんな隙を緑谷が見逃すはずもなく、轟が飛び上がったと同時に体勢を低くし、懐に入り込む。
そして、轟の腹部に一撃を入れた。
その衝撃で轟が吹っ飛ばされる。
しかし、緑谷は左腕に氷結を食らったと同時に壊れた指に更にダメージが入り悶絶した。
ただの体育祭の試合。
命のやり取りをする現場ではない。
(なのに……どうして……)
誰でも痛いのは嫌だ。
苦しいのは嫌だろう。
でも、彼は何度も何度も激痛の中立ち向かう。
瞳から光は消えることなく、ギラギラと光っている。
どうして、そこまでやれるのか。
彼の行動の原動力はなんなのか。
「期待に応えたいんだ…!」
緑谷がよろよろと走り出す。
「笑って、応えられるような……カッコイイヒーローに……なりたいんだ!だから全力でやってんだ、みんな!」
緑谷の頭突きが轟のお腹に入る。
「きみの境遇も、きみの決心も、僕なんかに計り知れるもんじゃない。でも、全力も出さないで1番になって完全否定なんてふざるなって今は思ってる!だから僕が勝つ!きみを超えて!」
「俺は、親父の力を……」
「きみのッ!!力じゃないか!!」
緑谷のその言葉の直後、激しい炎が舞い上がった。
(熱い……。彼の内に秘めた情熱を具現化したような炎……)
その後、どこか表情が明るい轟と緑谷は正面衝突し、セメントス先生が出したコンクリートすらも破壊する衝撃が起こった。
そして激しい爆風と霧が発生。
勝敗の行方を見守る観客たち。
霧が晴れ、そこで見えたのは場外へと弾き飛ばされ、壁に背を預ける形で気を失っている緑谷。
そして場内で炎のせいで体操着の半分が燃えた轟だった。
轟が肩で息をしているところから轟も全力を出し切ったのだろう。
『緑谷くん場外!轟くん!3回戦進出!!』
次は私の試合だが、二人の戦いによって破壊されたフィールドの修繕に時間が掛かるらしい。
(それにしても……あの言葉、轟には刺さっただろうな……)
「
きみのッ!!力じゃないか!!」
(受け継いだとしても使いこなすのは自分自身……。自分自身の力か……)
恐らく、あの口ぶり、緑谷は轟の過去を知っている。
そして、その上で自身が感じたことを真っ直ぐ轟にぶつけた。
あの激情は、あの怒りは、あのギラついた瞳は全て轟のことを思っての結果だ。
(……凄いな……。私にはないものだ……)
私は轟の身の上話を聞いても彼の気持ちを理解できなかった。
なんの感情も湧き上がってこなかった。
向かってくるなら倒すまで。
それしか思わなかった。
「分かる時がくるのかな……」
そんな私の小さな呟きは誰にも聞かれることなく消えていった。