断片

「ねぇ、コアって何で生きてるの?」
 ふとした疑問である。
 コアはいつも、茶の間の座布団の上で長い脚を投げ出しながら、虚空を眺めてることがよくある。
 ココアにしてみれば、何もせずぼーっとでくの坊をやられてるわけで、ぼんやりしてる暇があれば掃除機でも掛けて欲しいのである。
 しかし、コアはココアの質問に、ぐわっと首を回し、目を見開いてココアを見た。
「え? え?」
 こ、殺される? ココアは後ずさりした。
 そこからのコアは、ココアがコアと会って一番素早かった。いつも大儀そうに動作してるくせに、座布団を後ろに蹴飛ばしてココアのもとに駆け寄り、ココアの両手を自分の両手で包んだ。
「な、なんと言った?」
「は、はぁ?」
「何で生きてる、って聞いたか?」
「あぁ、はぁ、まぁ」
 コアは鼻息を吐いた。コアって鼻息してたんだ、とココアは的外れなことを思った。コアはココアの両手を、自分に近く引き寄せた。
「非常に語りたい。俺が何で生きてるか」
 いやごめん、聞いといてなんだけど、本当は一ミリも興味なかったわ、あはは。
 ココアは口の端を引きつらせながら笑った。
「俺はおまえの食パンの耳である。それだけのつまらない存在なのだ」
「いや、言いすぎだろ。いくら自分のことだからってそこまで卑下しなくても」
「おまえ、中一のくせに『卑下』って知ってるのか」
「コアが前に言ったんだよ。私に。卑下しなくていいって。それで辞書で調べたんだよ『卑下』を。『髭』じゃないんでしょ」
「全然記憶にない。おまえはもうちょっと卑下した方がいいと思う。偉そうだから」
「いや、めっちゃ殺したい」
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