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幼馴染は人気者

 直樹は、その日が来るのを恐怖していた。

 直樹は男である。しかし、つい最近まで女として生きていた。自分自身、性別について意識したこともなかった為、それで良いと思っていた。が、遂に皆に性別がバレてしまった。そして受けた罵倒に、直樹は傷ついた。その日から男として生き、人を信じるのを止めた。
 とは言え、直樹もまだ子供なので、大好きなおともだち・・・・・・・・・と言うのは存在する。名前は相原琴子。父親・重樹の親友、重雄の娘だ。赤ん坊の時から遊びに来ては直樹と共に遊び、おそろいの服を着たり、おままごとをしたりした。母・紀子も琴子を溺愛している影響か、直樹も琴子を気に入っていた。


 そんな彼女が、今の自分を見たら・・・。

 男の自分を見てしまったら・・・。


 もしも「気持ち悪い」だの「変態」だの言われてしまえば、直樹はいよいよ人間不信が加速する。部屋に閉じこもりたい気持ちと、僅かな期待を持って、リビングでソワソワと待っていた。
 そんな直樹の様子に、この頃少々ひねくれていたのもあって、紀子は安堵を覚える。そもそもの原因は自分だとわかってはいたけど。



 ピンポーン。



 チャイムの音。直樹の動きが止まる。

 「直樹。一緒にお出迎えしましょうか。」


 一瞬、間を置いて、直樹が黙って頷いた。それににこりと笑って紀子は玄関に向かった。

 直樹は緊張しつつも紀子がドアを開けるのを黙って見ていた。ドアの前には、満面の笑みの琴子と、その母の悦子が立っていた。


 「いらっしゃい琴子ちゃん、悦子さん。」

 「おじゃまします。」


 琴子が礼儀正しくお辞儀する。それから目の前にいる直樹をじっと見つめた。ばっくんばっくん音が響く。無論自分の胸から。







 ポッ///







 「おうじさま・・・。」

 「は?」



 「あらあら。」

 悦子の暖かい声が聞こえる。母親は何か含んだ様な笑みを、琴子に向けていた。

 「じつはね、琴子ちゃん。この子、ナオちゃんなのよ。」

 「・・・え?!」

 早くも紀子にバラされて、直樹は逃げ出したくなった。後退りしそうな足を叱咤して、琴子の視線を受け止める。


 「ナオちゃんが・・・おうじさま?」


 ぱーっと琴子の顔が花開いた。そんな反応は初めてで、直樹は戸惑う。

 「ナオちゃんが、あたしのおうじさまだったのね!!」

 いつもみたいに、ぎゅーっと抱きしめられて、胸が暖かくなるのを感じる。


 「・・・直樹。」

 琴子が直樹を抱きしめたまま疑問符を浮かべる。

 「ナオちゃんじゃなくて、直樹だから。」

 「そっか、そうだよね!なおきくん!!」

 その後も「なおきくん」と「おうじさま」を連呼する琴子に、何とも言えないむず痒さを感じた。
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