Tomorrow is another day
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「いやぁ〜助かったぜ!マジサンキューな!!」
『いや…寧ろこれでいいの?』
財布を落としてなんやかんやあった私は現在買い物袋を持った男の子、山田一郎くんの隣を歩いているわけだがはたしてどうしてこうなったのか。それは彼が一言、セール中のお一人様一個の卵を一緒に買ってくれという頼みごとをしたから。
「一人一個だけじゃあ足んねぇし、だからと言って弟達は用があって来れねぇからどうしたもんかと思ってたんだが…これで二つゲット出来て良かったぜ!」
『確かにあれは破格の値段でお得だった…!だけどこんなのでいいの?』
「こんなのって…結局それ以外の食材とか色々買って貰っちまったし、寧ろワリィな」
『いやいや当たり前だよ!弟さんの分まで足りるといいんだけど…』
「あぁ!これだけあれば十分だ!荷物も半分持って貰ってるし逆に助けられちまった」
そうは言うが実際重たいものは山田くんが持ってくれているし、私は軽いものばかり。見た目は背も高いし、不良っぽいからちょっと怖かったけどこの短時間で紳士的な人だということがよく分かった。イケブクロにこういう人がいるとは思わなかったなぁ。
* * *
「あ〜…良かったら茶でも飲んできます?ここまで荷物持って貰ってはいさよならってのもあんまりだし」
「…じゃあお言葉に甘えて。ありがとう」
なんだかんだ話していたら山田くんの家まで来てしまった。ここで断るのもと思って有り難く家に上がらせて貰う。
「汚くてワリィな。男ばっかだから」
『ううん。全然そんなことないから大丈夫だよ』
どうやら山田くんは二人の弟がいるそうで、兄弟三人暮らしらしい。ご両親は、なんて聞けないけどきっと弟さんのことを本当に大事に思って、見守っているんだろうってことがちょっと話を聞いただけで分かる。山田くんの弟さんなのだから、きっといい子達なんだろうな。
「ただいま…っとまだアイツら居ねぇのか。あ、テキトーに座っててくれ。今、茶出すから」
『いや、手伝うよ!なんでも言って…ってこれ…』
台所に向かう山田くんを追いかけ立ち上がったその目線の先に気になるものを見つける。
『これ…あのラノベのアクキー…しかも会場限定モン!?いいなぁ!!』
「え…アンタそれ知ってんの?』
しまった。オタクもろだしじゃんとちょっと後悔した時山田くんがそう返してくる。ひょっとしてこれ…。
『もしかして…山田くんの?』
「おう!いやー!知ってる奴と会えたの初めてだ!マイナーだから知ってる奴少ねぇし、弟達もあんま好きじゃねぇジャンルみたいだし」
『面白いよね!これ!シュールな場面も多いけどなんていうか…奥が深そうであんまり内容ないとことか!』
「そう!そうなんだよ!!すっげえ分かる!」
そうして思わぬ同志を見つけお茶を入れることより熱く語り合ってしまったその時ガタンと音がした。
「ただいま〜!」
「ただいま戻りました」
「もう帰ってきたのか。って意外と時間経ってんな」
山田くんより少し高い二つの声が聞こえたと思ったら足音を鳴らしながらガチャリと扉が開かれた。山田くんの弟さんか。きっといい子達なんだろうし、失礼のないようにしなきゃ。
「ただいま兄ちゃん!腹減った…ってあ"ぁ!?誰だテメェ!!」
『ひっ!?』
「一兄、今日は…ってなんですか貴方?もしかして一兄目当てで家まで上がりこんだんですか?非常識にも程があるしとっとと出てけ」
『…す、すみません?』
「テメ、すみませんで済んだらサツはいらねぇんだよ!!いいからとっとと出てけ!!!」
一体何に対して謝っているのか分からないけどここまでまくしたてられると自然とチキンハートな私は謝るしかない。と思ったらスパンと小気味良い音がして弟さん達はその瞬間頭を抑えた。
「いっ…!!なんでだよ兄ちゃん…?」
「いたっ!!どうしてですか一兄…?」
どうやら鉄拳制裁が入ったらしい二人は今までの剣幕はどこに行ったのかしゅんとしおらしい姿で山田くんを見つめてる。
「はぁ…ったくお前らは気持ちは分かるがいきなり突っかかっていくんじゃねぇよ。この人は俺の知り合いで、客だ」
「…ごめん、兄ちゃん」
「…すみません一兄」
「わかったんならいい…と、悪りぃな、弟達が」
すっかり大人しくなった二人を尻目に山田くんは少し気まずそうにそう言うから私は慌てて首を振る。
『ううん!家に知らない人がいたらびっくりするよね。気にしないで!…それより挨拶が遅れてごめんなさい。山田くんには財布を落としたところを助けて貰って…初めまして。ミョウジナマエって言います』
軽く自己紹介とでもと思うと、山田くんの後ろからぼそりと二郎、三郎と名前を教えてくれた。まだまだ警戒心は解けていないみたいだけど山田くんがお前らもと言ったから渋々教えてくれたみたいだ。なんというか…さっきは驚いたけど可愛いく感じるのはきっと私にも妹がいて下の子の可愛さを見に染みてわかっているからかもしれない。
『えっと…お騒がせしちゃってごめんね。弟さんも帰ってこられたみたいだからお暇します』
「いや、今茶出してくるから…」
『ありがとう。でも大丈夫だよ。今日はたくさん助けて貰って最後に楽しい話が出来てよかった。それにもうご飯の時間だもんね。ここで失礼するよ』
「うーん…そうか。分かった。じゃあまた…」
そう山田くんが頷きかけたときスマホの着信音がした。
「あ、俺だ。悪りぃ、ちょっと待ってろ」
そう言うと扉の奥に消えて行き話し声は消えていく。残された私と弟さんは山田くんの消えて行った方向を見つめ少しの沈黙のうち耐えられなくなった私はなるべく自然に咳払いをする。
『えっと…二人とも驚かせてしまってごめんね。山田くん、ってみんな山田くんか。一郎くんにはとってもお世話になりました。本当にありがとう。それじゃあ失礼します』
そう言って玄関先へと行くと何故か二人が着いてくる。私が何かやってしまったかと不思議に思っていると三郎くんが少し言いづらそうに視線を逸らす。
「一兄のお客さんですから。一応見送りはします。それに玄関に行く途中で何かされても困りますし」
その言葉にうんうんと頷く二郎くん。なるほど。山田くんの言っていることをちゃんと気にしているから嫌だけどお見送りしてくれているんだろうな。やっぱりあの山田くんの弟さん達だ。そうほっこりした時に山田くんが電話を片手に玄関まで来てくれた。
「見送れなくてごめんな。まだかかりそうだからここで!また何かあったら来いよ!」
そういうとまた奥へと行ってしまった。どうやら仕事の電話らしく長くかかりそうな感じがしたのでそのまま靴を履いていると、突然グゥと音が鳴り後ろを振り返る。
「…は、腹減った…おい、なんか作れ」
「はぁ?こないだは僕が作っただろ!今度は二郎、お前の番だ」
どうやら二人のお腹の音らしく空腹の苛立ちからかそのまま言い合いが続くがその最中にもお腹の音は聞こえてくる。その中をじゃあさようならなんて出来る筈もなく私は思い切って二人の方を向いた。
『あ、あの…ご飯だけ作っていこうか?…なんて』
「「…は?」」
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-プラス思考でいきましょう-