Tomorrow is another day
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『うわぁ…どうしよう…』
ミョウジナマエ。ただ今人生最大のピンチ。
『財布………落とした……』
頭真っ白顔も真っ白。いっそのことこのまま塵となり消えてしまいたい。ああどうしよう!!
* * *
怒涛の日々が過ぎ、左馬刻さんや理鶯さんのところに行ってから一週間は経っているがあれから連絡等何も来ないことに若干安心していると思えばこれだ。今日は休日で特に予定もないし、久しぶりにアニマイトでも行こうかと思っていた矢先にだ。これが家の近所だったりするならばまた救いはあるけど、あろうことかイケブクロのアニマイトに来ていた為、一体どこで落として、どこに行ったのか全く検討がつかない。
あの財布にはカードも保険証も何もかも入っている。もう終わりだ。グッズも何も買えずカード悪用されて多額の請求がきて、個人情報流出されて…何もかも終わりだ。あゝ目眩がする。気持ち悪くなってきた気がする。
『せっかく限定のグッズを買いに来たのに…せめて買った後に落としたかった…おえっ』
本当に貧血を起こしたのか、えづいていると足元がぐらつく。そしてバランスを崩し地面が目前に迫る。もうこのまま地面とキッスだ。そしてそのまま気を失いたい…。
ドテッ…
『痛い…』
きっとラノベかなんかだったらここで支えてくれるイケメンがいる筈だけど残念ながら普通に転んだ。まだ手が出たから顔は打ち付けなかったけど膝や手のひらは痛い。あああもう最悪だ。
「…あの、大丈夫っすか?」
『おえっ…え?』
再度えづいてたら頭上から少し低い声がして反射的に顔を上げて秒速で後悔した。あろうことか、おえってした後のみっともない顔を見られた。しかも一瞬しか見てないからわかんないけど絶対イケメンだ。これは放っといて欲しかった…。いやイケメンじゃなかったとしてもだけど。
「もしかして貧血、とか?とりあえずそこに座れますか?」
私の胸中なんていざ知らず。その人はそっと私の隣に屈み込むと慣れた様子で肩に手を回し、近くのベンチに座らせてくれた。
* * *
『あの…ありがとうございました。もう大丈夫です』
「いや気にしないで下さい!たまたま通りかかっただけなんで」
あの後その男の子というには大人だけどお茶を買ってきてくれ、落ち着くまで少し離れたところに座りながら気遣ってくれた。そして礼を言うとニカッと人の良い笑みを浮かべさも当然というように言った。いやしかし…よく見ると本当に整った顔立ちしてる。少し癖のある黒髪に綺麗なオッドアイの瞳。ハーフ、なのかな。
『あ、そうだ。お茶代今お返しします…ってダメだ。財布落としたんだった…』
鞄をガサゴソとしながら思い出した。そうじゃん。落としたんじゃん私。これは本当に最悪すぎる。するとオッドアイの男の子は驚いたように目を見開く。
「そんなお茶くらいなら別にいいっすけど…財布落としたんすか?」
『はい…なので連絡先だけ聞いてもいいですか?必ずお返しするので…あ、新手のナンパ法とかじゃないから!!何だったら私の連絡先を教えるので!』
初対面の人、それも多分年下の子に奢って貰うのもどうかと思うし変な誤解はされないよう弁明しながらそういうと小さな笑い声が聞こえた。
「ククッ…アンタ面白いな…っとすいません。サイフ、探しますよ?」
『え…いやいやいや!そこまでしてもらうのは!!ただでさえ迷惑かけてるんで!』
どんだけ人が良いんだこの人。感動しつつも流石に探してもらうのは気が引けるから謹んで遠慮しようと思ったら何かを思いついた様子でポンと手を打った。
「どうしても借りを作るのが嫌だってんなら…仕事の依頼、ってことにしちゃダメですかね?」
『仕事…依頼?』
そっくりそのまま繰り返せばまたニカっと笑みを浮かべ大きく頷かれる。
「そうっす!オレ、山田一郎っつーんすけど“萬屋山田”って何でも屋やってて。だから仕事依頼して貰えればと」
『萬屋山田…』
山田一郎くん。まるで偽名みたいな名前だけどきっと本名なんだろう。一度聞いたら忘れられない名前の彼はきっと私が遠慮しないようにとそう言ってくれたんだろう。本当になんて出来た子なんだろう。正直なところ途方に暮れていた私はありがたく依頼させてもらうことにした。
「じゃあ引き受けさせて貰います!…と、その前に。アンタの名前聞いていいすか?」
『あ、そう言えば…申し遅れました。ミョウジナマエです。あと…敬語とか大丈夫ですよ?普通に話して、ね?』
『ミョウジさん、すね。っと…じゃあ遠慮なくたタメでいかせて貰います」
「うん。その方がいいかな」
改めてよろしくの意味を込めて頭を下げると早速財布の特徴を聞かれる。見た目や、大きさ、それから今日何処を歩いてどこで落としたのを気づいたのか。覚えている限りのことを伝えると山田くんはふむと頷きちょっと待っててと告げると電話をかけ始めた。
「…おお、悪りぃな。サンキュ!助かったわ」
どこにかけているのか何度目かの電話のやりとりしたあと山田くんはふうと一息ついてこちらを向いた。
「見つかったぜ。今この近くまで届けてもらう予定」
『え…見つかった?何が?』
「いやアンタの財布だよ。にしても思いのほか早く見つかったな。多分アンタが事細かに教えてくれたお陰だな」
『いやいやいや早くない!?え、嘘…本当に?』
だって電話を何本かかけただけで依頼してから数十分ってところだと思う。何この人。凄くない?一体どういうこと?どんなからくりなのか頭をひねっていると髪の色が真っ赤な男の子が駆け寄ってきて、ポンと山田くんの手に見覚えのあるものを渡すとまた何処かへと走り去って行ってしまった。
「ほら、これだろ?サイフ」
『わ、私の財布…!!!!ありがとうございます!!!!本当にありがとうございます!!!!』
手渡されたものは確かに私の財布だった。中身も特に変わらずそのまま戻ってきた。もうこれは奇跡としか言えない。
『ありがとう、山田くん。でもどうやって…?』
心の底から感謝をしつつそう聞けば山田くんは何てことはないと答える。
「オレのダチを頼って、アンタが歩いた場所を順々に確認してもらっただけ。後は情報屋の奴にサツのとこに落し物として届いてないか確認したりとかだな。結局誰かが分かりやすい場所に置いてくれたのか目につくとこにあったらしいぜ」
見つかって良かったな、と笑う山田くんに私は再度頭を下げて礼を言う。
『凄いね山田くん!そしてありがとう。さっきの赤い髪のお友達にも、ほかのお友達にもよろしくお伝え下さい。ってそうだ…依頼していたわけだからお支払いするね。どのくらいかな?』
蹲っていたところから助けてもらっているから言われた金額がどんな値段でも上乗せして渡そうと思っていたら山田くんはガシガシと頭を掻きながら少し言いづらそうにした。
「あ〜…金っつーか…今度はオレが頼んでいいか?」
『うん!私にできることなら!あ、でもお支払いは別にちゃんとするから!』
お財布のお礼は絶対させて貰おうとそう意気込んでいたら尚も言いにくそうに山田くんは口を開く…。
There’s always next time
-いつだって次があるさ-