Tomorrow is another day
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「……」
『……』
チンピラに絡まれ警察に囲まれ、と思えば助けてくれた…ということになるんだろうか、今私の目の前を歩いているこの碧棺左馬刻という男は名乗ったあと顔貸せと言い、まさか断れる筈がなくその男の後をついていっているわけだが…。
(これ…大丈夫かな。臓器売られたりしない?)
やっぱりさっきの眼鏡の人についていけばよかった。でもあの人も警察なのにやけに碧棺左馬刻と仲が良さそうに見えたし、私達のことを止めなかった。もしかして危ない人なのかな。
『っ…!』
悶々としてたら急にズキリと頭が痛んだ。多分さっき頭突きしたときの痛みが今更きたのだろう。意識した途端、心なしか首元もヒリヒリしてきた。ぎゅうぎゅう締められたせいか赤くなっているのかもしれない。
「…?どうした?」
『あ、いえ。なんでもないです』
立ち止まっている私を不審に思ったのだろう。振り向きざまにそう声をかけられる。だけど流石に頭をさすっていたことで思い当たったのだろう。あー、と低い声を出してからその人は何故か小さく笑った。
「テメェは一体何者だ?どう見てもカタギにしか見えねぇが…経験者か?」
『経験者、というと?』
「合気道とか空手とか」
『いえ、全く何にも。それに私は一般人ですよ。仕事が早く終わったので少し寄り道しようかなって考えながら歩いていたら…みたいな感じです』
皮がめくれてるんだろうか。頭の痛みは少し引いた気がするけど今度は首のヒリつきが気になってきた。無意識に手をやっていると突然首に少し冷たい何かが触れた。
「さっきやられたとこか。相当締められたな」
『っ…あ、はい』
ヒリヒリとしたところが余計に熱を持つ。だって今その場所を碧棺左馬刻という人に触れられているから。初対面とは言え男の人に急に触られれば耐性のない私は簡単に身体を硬くする。というかこれどうしたらいいの?
「…痛むか?」
『いえ…血が出てるならまだしも皮が剥けた程度でしょうし…唾つけとけばへっちゃらですよ』
「そうかよ」
そういうと何を思ったか彼は私の首元まで顔を近づけぺろりと舐めた。
『…え』
「あ?」
『え、えぇ!?あ、貴方一体何して…!!な、舐めましたっ!?』
「チッ…五月蝿ぇな。テメェが舐めときゃ治るとか言うからだろ」
『それは比喩であって!!!舐めて下さいなんて言ってませんよ!!!』
「騒ぐな。他に消毒液とか何も持ってねぇんだから我慢しやがれクソ女」
『クソとはなんですか。貴方こそ初対面の女の首をいきなり舐めるとか頭どうかしてるんじゃないですか。この変態』
しまった。動揺していたせいか余計なことを言ってしまった。けど時は既に遅し。向こうもピキとこめかみに皺を寄せているし、私としてもさっきから訳が分からなさ過ぎて口が止まらない。もうこの際殴られようが臓器売られようが知ったこっちゃない!!
「あ"ぁ?んだとコラ。こっちゃテメェのためにやったんだろうが」
『そういうのを余計なお世話って言うんです。そんなこともわかりませんか?』
「余計、だと?オレ様に向かってよくそんなこと吐けるなドブス」
『ホント何様のつもりですか?あぁ左馬刻様だ、とか言わないで下さいね。イタイです』
「テメ、良い度胸してんじゃねぇか。気に入った。オラこれ持て」
ヒートアップしていく言い合いの末私が握らされたのは一本のマイク。それもただのマイクじゃない。“ヒプノシスマイク”だ。
『えっと…どうしろと?』
「テメェのラップ聴かせてみろやコラ」
『………私、女ですけど』
もちろんこんなの渡されたところで私には歌えない。すると相手もそれに気がついたようでハッとしてマイクを手元に戻した。
「チッ…テメェは女か」
『さっきご自分でクソ女って言ってましたよ』
「減らず口が。ホント面白ぇ奴だな」
そう言ってこちらへ近づいてくる碧棺左馬刻に私はいよいよ殴られるのかと思いぎゅっと身を硬くする。あぁお母さんお父さんそして妹よ。さようなら。
「スマホ出せ」
『…は?』
「いいから早くしろや」
『は、はい』
言われるがままスマホを出せばあれよあれよと言う間に何故か連絡先を交換していた。
「連絡したら必ず出ろよ。出なきゃ殺す」
『なんて横暴な…』
「あぁ?」
『いえなんでも』
そうして満足したのかくるりと背を向けてアロハシャツを翻しながらさっさっと何処かへ行ってしまった。
『な、なんだったの…』
私が巻き込まれてからここまでで約一時間。それしか経っていない。だけど私の人生の中で一番濃い寄り道となったのは確かだ。
This is what happened!
-こんなことになっちゃった!-