Tomorrow is another day
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「…どうしたもんかな」
オレは今、自分の手の中にある物をどうすればいいか分からずにいる。一体どうすりゃいいんだこれ。
「おっはよー!帝統〜!」
「うわっ!!んだよ、驚かすなよな乱数」
「えへっ♪昨日は遅く帰ってきてたけどまたギャンブルでもしてたの?」
「おいムシかよ!ったく…まぁな」
朝からテンションの高い声に若干押され気味になりながらそう答えると突然乱数が声を上げる。
「それ!!今人気のブランドの新作コートじゃん!しかもレディースの!どうして帝統が持ってるのぉ?」
「べ、別になんでもねぇよ」
「オネーさんに貰ったの?でもそういう系統の服着ないよね?」
「なんでもないっつーの。身ぐるみ全部剥がされたからそこらにあるの着ただけだ」
「…ふーん」
いまいち納得していない様子だが、なんとなく本当のことを言うのが嫌で適当なことを喋る。すると興味が逸れたように乱数はふいと部屋を出ていった。
「…貰ったところでオレは着ねぇし。かと言って返せる当てもねぇ」
そこまで考えたところで考えついた結論は売ることだった。あの女も勝手にオレに渡したんだしいいだろ。新品って言ってたしいい値段になんだろ。
* * *
「これ…こんな値段なのか」
古着屋に行き値段を聞いて驚いた。新品だからってのもあるが人気で売り切れが続いている商品だからってことでまぁまぁいい値段になった。あの女よく見ず知らずのオレに渡したな。そこまで考えて紙袋を差し出してきた女の顔を思い浮かべる。タメか歳下か。そんくらいの見た目にオレのことを確実に警戒してるだろう様子なのに買ったばかりのコートを押し付けてきた女。
「…くそ」
* * *
『やっぱりあのコートは惜しいことをした!!』
結局名もなきギャンブラーに渡したはいいがやはりあのコートが欲しくなってもう一度お店に行ったけどなんと売り切れていたのだ。まぁ渡したこと自体は人助けだと思えばいいんだけどまさか売り切れていたとは…。
『しょうがないか。なんか甘いものでも買って帰ろ』
どうせならちょっとだけ豪華なスイーツにでもしようかなと思い、辺りにそれらしきお店がないか見渡したときそこは見覚えのある場所だということに気付く。
『ここ…あの公園じゃん』
あのギャンブラーは大丈夫だったろうか。パンイチでいたんだから風邪くらいひいてるかもしれない。これに懲りて身ぐるみ全部賭けるなんて無茶をしなくなればいいけど…とお節介なことを考えていたその時。
「あー!!!!」
『っ!?』
「い、居た…!!」
『え…何…?』
いきなり大声が聞こえ何事かと思ったら目の前には見覚えのある人影。もしかしてひょっとしなくてもあの名もなきギャンブラーか?
「まさかホントに会えるとは…」
『あの…何か?』
「いやなんでもねぇ!それよりもだな…」
今日はちゃんと服を着ていることに安心する。体調もそんなに悪くは見えないしきっと大丈夫だったんだろう。多分人助けにはなったんじゃないかと考えていると目の前でモジモジしていたギャンブラーがずいと紙袋を差し出した。さながらト○ロのかんたろうが雨宿りしているサツキ達に傘を差し出したように。
『…くれるんですか?』
「くれるって程のモンじゃねぇよ。借りを返すだけだ」
そういうとまたずいっと紙袋を押し付けられるので一応頭を下げつつ受け取り、中身を確認したところでびっくりした。
『これ…!あのお店の…!』
「おんなじモンがなくてな。だからと言ってオレが着たモン返すわけにいかねぇし。だからなるべく似てるヤツを買いに行ったが…」
照れ臭そうにボリボリと頭をかきつつそう言う名もなきギャンブラー。きっとお店の中は女子ばかりで買い物するものましてや入るだって気まずかったろうにわざわざ買いに行ってくれたとは。
『ありがとうございます!本当に貰っていいんですか?』
「いいっつってんだろ!オレが着るわけにも行かねぇし…」
『それはそうですけど…』
「そういうこった。これで借りは返した。じゃあな」
そう言い残しヒラヒラと手を振って立ち去っていった…その時。ぐぅ〜と大きな音が聞こえた。
「……」
『……』
「……腹減った」
『……よかったらご飯食べにいきません?』
「………金がない」
『……奢りますよ』
「まじか!?」
* * *
「うっめぇー!!!ここめっちゃうめぇな!!」
『ふふっ、それは良かったです』
旨い旨いと言いながら豪快にかきこんで行く姿は見ているだけでお腹いっぱいにさせてくれるようで思わず笑ってしまう。きっとよっぽどお腹が空いていたんだろう。どこにでもあるファミレスのご飯をそこまで感動して食べる人初めて見たよ。
「そういえば…アンタ名前は?」
『あ、言ってませんでしたっけ?ミョウジナマエです』
「ナマエか!オレは有栖川帝統だ。よろしくな」
「有栖川さん…なんというか凄い名前ですね」
「さん付けとかいらねぇよ。あと敬語も」
『じゃあ…帝統くんで。こちらこそよろしくね』
「おう!」
そこから取り留めのない話をする内にあっという間に時間は過ぎ最初に出会った公園まで結局歩いてきてしまった。
「今日はありがとな!メシ、美味かった!」
『私こそありがとう。楽しかった!もう身ぐるみ全部剥がされないようにね』
「うるせぇよ!次は負けねぇ!じゃあ気ぃつけてな!」
『アハハ!うん、じゃあね!』
最初は警戒心の塊のような人だったけれどご飯に釣られてしまったのか人懐っこい笑みを見せてくれるその人はまるで猫のようで。なんとなくまた何処かで会えるような気がした。
I feel that I will meet again. surely
-また逢う予感がするんだ。きっとね-