Tomorrow is another day
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「あ、ミョウジさんそのブランドの服好きなんですか?」
『は、はい。最近気に入ってて…』
会社の更衣室で同じ部署の人にそう言われる。顔見知りではあったけど普段からあまり話したことのない人だったから小心者の私はちょっとドキドキする。
「私もそのブランド好きなんです!あ、そういえば今渋谷店限定のデザイン出てるの知ってます?」
『あ、そうなんですか?知りませんでした』
「じゃあ今日行きません?仕事終わりにサクッと!一人で行くのもなんかなぁって思ってたので是非!」
『いいですよ!私でよければ』
「やった!ありがとうございます!それではまた」
『はーい!』
限定デザインは特に気にしていなかったけどこうして話しかけてくれて、誘ってくれたのは素直に嬉しくて。だから一つ返事でうんと頷いてからいつもよりご機嫌で仕事に取り掛かった。
* * *
「はぁ〜…大ショック…」
『…残念でしたね』
ため息と共に店内から出てきた私達はそう開口一番に口にする。どうやら行った時間が良くなかったのかお目当ての商品は売り切れていた。私はそのデザインが見れればいいかなと思っていたくらいだが、同僚は相当気に入っていたらしくショックを受けていた。
「買えるの楽しみにしてた分尚更ガッカリですよ…次の入荷は未定だし」
『期待した分ヘコミますよね…でもまた入荷あるみたいですし!また来ましょ!その時はお伴しますから』
「ありがとうございます。そうですよね、楽しみが伸びたと思えばいいですよね!」
『そうです!せっかくだからちょっと飲んで行きませんか?』
「はい!ぜひ!」
顔見知り程度だったけれど共通の何かがあると親しくなるのは一瞬で。同じ部署なのもあって愚痴やら何やら話しながらあっという間に終電の時間になりそのまま駅で別れた。
『はぁ…楽しかったなぁ。でも売り切れだったのは残念だった』
少しアルコールが入り熱くなった顔をパタパタと扇いでいると公園が目に入る。ちょっとしたアスレチックとベンチに自販機のどこにでもある公園だ。
『お水でも買ってちょっと酔いを醒まそうかな』
なんとなくまだ帰りたくなくて、そう言い訳めいたことを口にしながら自販機から水を買い、ベンチに腰掛けようと思ったところで固まった。
「う〜…さみぃ」
『……』
「ぶえっくし!!!」
ベンチには先客がいた。それもパンイチの。おかしいな…そんなに飲んだ記憶はないんだけど思った以上に酔いがまわっているんだろうか。
「チックショー…あともうひと勝負出来たら倍に出来たのに…ってあ?何見てんだ?」
『…あ、いえ…大丈夫ですか?』
もしかしたら不審者かもしれないのに何故声を掛けたんだ、私。それともお酒か入ってるから気が大きくなっているんだろうか。だけど不本意そうな顔をしてるところを見ると露出魔とかではなさそうだ。もしかして追い剥ぎにでもあったのかもしれない。
「別に。なんでもねーよ」
『いやパンイチでなんでもないことはないかと…』
「賭けに負けて持ってかれただけだ」
『え、賭けですか…』
まさか身ぐるみ全部を賭けてしまうとは誰も思わないだろう。どうやって帰るつもりだったんだろう。というかよくここまで来れたな。
「テメェには関係ねぇだろ。さっさと行け」
そう冷たくあしらわれるけど震えてる体を丸めて言われても説得力はない。
『…これ。新品なので綺麗です。どうぞ』
「え…」
今日行ったお店で買った大きめのコートを渡す。これなら下もある程度隠れる長さだから前を閉めればなんとかなるだろう。本当は嫌だけどこんな姿を見せられてしまえばもうどうしようもない。
『女物ですけど男性が着てもそこまで変じゃないと思うので…では』
「え…ちょ…」
まだ戸惑っているようだけどそのままコートをぽいと投げて逃げるように公園から立ち去る。自分で偽善的かもしれないと思ったけど寒そうな姿を見たらもうそうするしか考えられなかったんだからしょうがない。そのコートは古着屋に売るなりなんなりしてお金でも作るんだ名もなきギャンブラーよ!!
I know it’s not much
-これくらいしか出来ないけど-