夏、高鳴る
dream
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6月。
じわじわくる暑さに気が遠くなりそうな今日この頃。
あれよあれよと期末テストまで1ヶ月を切った。
月島くんは、Patisserie Hoshinoに顔を出すことが無くなっていたけれど、元からケーキ屋さんでしか繋がりなんて無かったので、あまり気にしないようにしていた。
たまに日向くんと黒髪の子が2人で月島くんのところへやって来ては、怒られながら勉強を教えて貰っているところは何度か見かけたけど、教わっている内容を聞く限りでは、2人は多分一般クラスの生徒で、自分の試験範囲とは違うはずなのに器用になんでも教える月島くんに関心するばかりだった。
月島くんの机に集る3人の頭をぼんやり眺めているうちに昼休みが終わって、山口くんが隣の席へ戻ってきた。
「簗瀬さん、ちょっとお願いがあるんだけどさ……次の授業の教科書忘れちゃって、見せて貰えないかな?」
席に着くなりゴソゴソと机の中を漁っていた山口くんが申し訳なさげに顔の前に両手を合わせて私に頼んできた。
「勿論いいよ、山田くんが忘れものなんて珍しいね」
「……あはは、最近練習がキツくてさ、時間割忘れてたんだよね」
山口くんは何故か少し挙動不審に目を泳がせながら机をくっつけた。
「大変だね、次は春高だっけ?」
「ま、まあ、俺はツッキーみたいに絶対出られる保証は無いんだけどさ……」
インターハイは残念ながら3回戦で敗退だったと風の噂で聞いた。
少し落ち込んだような顔で山口くんが教科書に目を落とす。
月島くんも部活の話はあまり好きそうじゃないし、私もバレーは詳しくないから「そっか」と相槌を打ってまもなく入ってきた先生の授業へと耳を傾けた。
「ふー、ありがとう簗瀬さん。おかげで授業助かったよー……」
「どういたしまして!あんまり無理せず頑張ってね!」
「ありがとう!」
机を元に戻して、次の授業の準備を始める。
普段なら山口くんは休み時間の度に月島くんの席に行くのに、今日は思い詰めたような顔で自席にいた。
「山口くん……?どうかしたの?」
「……簗瀬さんはさ、部活についてどう思う?」
山口くんは本気で悩んでいるようで、真剣な眼差しを私に向ける。
「私は、部活に入ってないから分からないけど……、一生懸命頑張ってるみんなかっこいいなって思うよ」
瞬間、山口くんがハッとした顔になる。
「ありがとう簗瀬さん!やっぱりそうだよね、ツッキーはやっぱり試合でもかっこいいもんね!」
ちょっと後半は意味が分からなかったけど、山口くんには何かがしっくり来たみたいで、「ツッキー!」と月島くんの席へ駆けて行った。
部活、か……
月島くん達頑張って欲しいな、何か、できないかな……
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