春、新生活。
dream
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「やっっっと式典終わった……」
入学式。
やっと体育館での式典が終わり、担任に連れられ教室へと向かう。
みんな欠伸をしたり眠そうな目をこすったり、教頭先生の長い話に付き合わされた後遺症をそれぞれ回復させようとしていた。
勿論私も例外ではない。
欠伸をしながら前を歩く人達について行く。
「ふぁ〜ぁ……っ!」
目を瞑って欠伸をしたせいで壁にぶつかってしまった。
「わ、ツッキー大丈夫?」
いたたたた、と思いつつ壁から離れようとしたところで気づく。
この壁、温かい……?
壁、もといぶつかった相手から飛ぶように離れる。
「ごめん……!?」
ゆっくり振り返った彼は、私をちらりと見下ろした。
「キミ、色々大丈夫?」
見上げた先に居たのは、先程式典中に見つけた金髪の彼だった。
低身長な私を見下ろして、「気をつけなよ」と一言付け足し、「山口うるさい」と隣にいる黒髪の彼に話しかけ、また先を歩いていった。
「ごめん…」
あまりの身長の高さと端正な容姿に入学早々度肝を抜かれ、口から零れた再度の謝罪は行き場をなくし廊下に消えた。
壁かと思った。
金髪の彼は高身長だけど細身で、下手したら私より細いんじゃないかと思うくらいだったのに。
存在感というか、彼独特のオーラに驚いた。
あっけに取られてぼんやりしていた私の肩を誰かが叩く。
「美子?どした?」
健康診断で仲良くなったクラスメイトの詩織ちゃん。
口数があまり多くない私とは対照的に、楽しそうに色んな話をしてくれる。
「さっき美子がぶつかった男子、めちゃくちゃ背高かったね、びっくりしちゃった。美子もぼーっと歩いてちゃだめだよ〜」
「あはは、ほんとにね」
そうこうしているうちに、教室へと辿り着いた。
『キミ、色々大丈夫?』
ふと、金髪の彼の言葉が蘇る。
色々…………?
色々って、なんだろう。
寝ぼけてたこと?
あくびしながら歩いたこと?
歩いてるのに目を瞑ってしまったこと?
……心当たりがありすぎて分からない。
後に、彼の言う"色々"の意味が、このどれでもなかったことを知る事になるけれど、それはまた別のお話。
桜舞う学校で
斜め前に座る彼を眺めながら、入学式は終わった。