初夏、予感。
dream
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手を怪我してから1週間。
あれから、月島くんとは特に会話をしていない。
6月に入り、インターハイが近いそうで(山口くんが教えてくれた)、あまりバイト先にも二人は来なくなっていた。
試験結果は月島くんのおかげで無事に赤点ゼロで、山口くんとふたりで「生きながらえたね……」と握手を交わしたのが記憶に新しい。
月島くんにはメールでお礼は伝えたけど、いつも通りの短文で、「どういたしまして」とだけ。
『お礼は高くつくからね』
『月島くんに近付くな』
『ツッキーじゃなくてごめんね』
頭の中に色んな言葉が浮かんでは消える。
元々、月島くんとは教室で話すことがほとんど無かったためか、ここ1週間は嫌がらせも特に無い。
変わったことといえば、山口くんがやたらと休み時間にキョロキョロしてることと、月島くんが放課後すぐに山口くんを置いて部活へ行ってしまうことくらいか。
「……山口くん、ずっとキョロキョロしてるけど、どうしたの?」
「ああ、簗瀬さんに危害を加える子が居ないか見張ってるんだ。けど、ツッキーのこと見てる女子多すぎて……さすがツッキーって感じだよ……」
『俺達が守るからね』
山口くんが先週、手当してくれた時に言ってくれたこと。
「ありがとう山口くん、でも、私普段学校では話す事ないからもう大丈夫だと思うよ?」
「ダメだよ簗瀬さん、そんな事言ってまた危ない目にあったら俺もツッキーも心配じゃん。って、そろそろ部活始まる!」
「美子ー、帰るよー」
「それじゃあ気を付けて帰ってね簗瀬さん!またあした!」
山口くんはバタバタと支度をして部活へと駆け出していったのと入れ替わりに詩織ちゃんが席まで迎えに来てくれた。
詩織ちゃんと談笑しながら下駄箱へと続く曲がり角を曲がると、部活へ向かう月島くんの背中が見えた。
あれ、山口くんより先に教室を出てたはずじゃ……
少し気にはなったけれど、この間の山口くんみたいにテーピングを忘れて保健室に行ったのかもしれないと思い、あまり気にせずそのまま下駄箱へ向かった。
「また……?」
靴の下には、先週同様手紙が挟まっていた。
恐る恐る靴の中や靴の周りを確認したところ、刃物などは無く、とりあえず痛くないことに安堵し、手紙を取り、カバンに入れた。
例の柑橘系の香りは、以前より薄く感じた。