初夏、予感。
dream
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キーンコーン…………
「はい、試験終わりー、後から答案用紙まわしてこーい」
中間テスト、3日目。
昨日は途中まで月島くんとふたりで勉強していたけど、途中から涙目の山口くんが合流して、3人での勉強会を行った。
山口くんは、私がいることに随分と驚いていて、2人が仲良しなことを思うと少し申し訳なくなった。
昨日も遅くなっちゃって、ふたりはバス停まで送ってくれた。
「ふー……。これで全教科終わったね、簗瀬さんは全部解けた?」
隣の席の山口くんはうっすら目の下にクマを作っている。
「あはは、分かんないけど、昨日教わった引っ掛け問題には引っかかんなかったよ」
「あ、俺も!さすがツッキーだよね」
暫く山口くんと談笑していると、月島くんがこちらへ歩いてきた。
「山口、行くよ」
定期テストが終わったから、今日から部活なんだっけ。
「あ、月島くん。世界史では色々とお世話になりました」
「解答ひとつずつズレてたとか辞めてよね、ま、その様子じゃ大丈夫そうだけど」
「ツッキーどうしよう、不安になってきた……」
「君が落ち込んでどうすんの、部活行くよ。あ、そうだ……」
何か企んでいるような含み笑いを浮かべて月島くんが私を見る。
「お礼は高くつくからね、簗瀬サン」
「ひぃっ」
不敵な笑みを浮かべ、月島くんが教室を去る。
慌てて山口くんも追いかけて教室を出ていった。
「美子ー、帰るよー」
遠くから詩織ちゃんの声がする。
……お礼……高くつく……お礼……
お互い同じスケジュールで試験を実施している中で勉強を直前に、それも2日間も教わるなんて本当に申し訳ないことをしてしまったなって思っているし、なにかお礼はするつもりだった。
なのに私、月島くんの喜ぶもの知らないよ……
はぁ、とため息をつきながら下駄箱へ向かう。
曲がり角、少しボーッとしていたからか、緑髪で柑橘系の香りがする女子生徒とぶつかってしまった。
慌てて謝ったけど、向こうは急いでいたみたいでそのまま走り去ってしまった。
髪、長くて綺麗だったなあと思いながら靴を取りだし……
「……いたっ」
「えっ、美子!?ちょっと大丈夫?」
靴を触った手がチクリと痛む。
慌てて確認すると指先は赤く、靴の中には大量に画鋲が敷き詰められており、靴の下には一通の手紙が置かれていた。
その時、痛みに耐えながら、いつの日か詩織ちゃんに言われた言葉が頭を反芻していた。